第3話 流れ始める時
いつも通りの帰り道。君はいつもと変わらない様子でそこに佇む。
夕暮れに照らされながら君は、僕に優しく微笑む。僕もまた微笑み返す。
それが最近の日常だった。
「やぁ、今日は少し遅かったんだね。」
「まぁ、一応受験生なんでね。やることがたくさんあるんだよ。」
「そうか。」
ボソっと一言呟いた彼女は、何も言わずに空を見上げる。
「ねぇ、聞いてもいい?」
不意に僕は言ってみた。
「何をだい?」
「君は、何してる人なの?どうしていつもここで、空ばかり見上げているの?」
そう問いかけると、彼女は深く息を吐いてから答えた。
「それは君にも言えることじゃないのかい?」
「僕?」
「そうだよ。君も毎日ここへ来て私と話をするじゃないか。私みたいなのにわざわざ話し掛けて来るのは君くらいだよ。なぁどうしてだい?」
まさか質問に質問で返されると思っていなかったので僕は、少し戸惑った。
「どうしてと言われてもなぁ、君と話をしたいから。かな。君に興味があるから。話してみたいと思ったから。君のこと知りたいって思ったから。君のことが気になって仕方がないから?かな。これ以上に理由いる?」
僕は、平然にさも当然かの様に答えた。
けれど、彼女は耳を赤くして困った顔をしていた。
「よくそんなこと真顔で言えるな。強メンタルすぎだろ。」
「いや、そんなにメンタルは強い方じゃないと思うけど・・・?」
困った様に髪を掻き上げると、言いにくそうに彼女がボソボソ答え始めた。
「仕事・・・なんだ。」
「え!?仕事?そんな楽な仕事がこの世に存在するの?」
「あぁ、まぁ正確には潜入調査だ。私は、ナビゲーターだから。」
「ナビゲーターって?え?何言ってんだか本当に分からないんだけど?」
う〜ん。と唸りながら彼女は、ポケットから一枚の紙を取り出した。
「それは、何?」
そう聞くと彼女は苦笑いをしながらまぁ、見てて。と言うので僕はその紙をじっと見つめた。
「導きの光よ。我の元に来たれ。」
彼女がそう唱えるとその紙が、蒼く光り始めた。
「これで、分かったかい?私は、この世界の人間ではないんだ。」
僕は、その場に立つ尽くした。だが彼女が言ったこと理解することに5秒と掛からなかった。
「つまり。君は異世界の人間だって、そう言いたいのかい?」
彼女は、何も言わずにコクリと頷いた。
「私が名前を教えられないのもそれが理由だ。国の規則だから。そして空を見上げるのは、このことを君に知られたく無かったからだ。」
色々な話が混濁して、頭が2秒ほどショートしたが復旧作業がすぐに行われた。
「なんで、僕に知られたく無かったんだ?」
「それはだな。君を向こうの世界に連れて行くのが私の主題名目だからだ。私たちの国を救う救世主になってくれないか?そのために私は、禁を犯して少年。君に会いに来たんだ。その頭脳で想像力で私たちを救ってくれ。」
僕が救世主だなんて彼女はどういうつもりで言っているのだろうと困惑した。
僕なんかに一体どうしろって言うんだよ。
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