第3話 ボーイフレンド

「あじゅく、ウーチェ、ちゅき?」

「うん、あずくん、ウーチェ、ちゅき」


 リビングのソファーに2人並んで座って、伸ばした足の上に瑠璃子が置いていった文机が渡せられていた。

 少々蹴り飛ばしても、がっしりと2人の足の上を橋渡ししている。

 1人がけのソファには年配の婦人が座っている。

 扉が開きレイが顔を覗かせた。


「あら、お客様?」

「そこの公園で一緒に遊んでもろてたんやけど、あんまり暑いもんやから家に来てもろたの。あずくんとお祖母様。里帰りでお祖母様のご実家にいてるんやて」


「こんにちは」

「こんにちは、お邪魔しております」

「ルナちゃんの初めてのお客様です」


 レイが微笑んだ。


「レイちゃ、あじゅくだよ」


 あずはペコリとお辞儀した。


「まあ、何と可愛らしい。ルナが可愛いと思ってたけど、あずくん可愛い。レナ、ときめいちゃう」


「レイちゃん、冷たいうちにフルーチェ上に持って行って。フルーツも飾り付けてね」

「ナオさん、ありがとう」


 レイはワゴンを押してエレベーターに乗り込んだ。


「あじゅく、きういすき?

「あずくん、いっぱ、いっぱ、ある」

 

 両腕を大きく回した。


「それはきゅうりでしょ」


 祖母が見かねて口を挟んだ。


「えっ、きゅうりがなっているんですか。いいなあ」

「南の海の近くに住んでいるから何でもよく育つんです」



「さあ、おやつを戴いたし、そろそろお暇しようね、あずくん」

「ええ~」

「ママが心配してるよ」

「そうですね。公園へ行って来るとしか言ってないいんやから。またお祖母ちゃんのお家来たら、あずくん、ルナちゃんに会いに来てね」



「外は暑いですから、車でお送りします。あずくんもルナちゃんもトイレはいい?」



「ルナちゃん、あずくんにバイバイして」

「あじゅく、ばいばい」


 後部座席に座ったルナはあずのほっぺにチュをした。

 あずも同じようにルナの頬にチュをした。




「2歳と3歳で会話が成り立ってるの?」

「楽しそうにしてたから出来てるんやない」

「ところで、ナオさん、あの話だけど」

「もし、そうなったら全力でサポートするけど、これだけはレイちゃん1人で突っ走るわけにはいかんわよ。ガクさんともよう話し合って」


 さんざん話し合った結果なのにな。

 レイは大きなため息をついた。





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