第2話 半チャンラーメン


「あの子たちお腹減らして帰って来るやろから、がっつりチャーハンと唐揚げでええ?」

「ああ、何だったらピザでも取るか?」


 一平は新聞を読みながら言った。

 一瞬ナオはそのおいしい話に乗りそうになった。

 アカン、アカン。首を振った。


「朝も手抜きしたから、せめて何か作る」

「そう言えば小学校の先生たち、勝常寺先生に竹刀を持って追いかけ回されたらしい。これなら青痣が出来るのも頷けると納得したらしいよ」


 ハハハハッ

 笑ってはアカンけど大笑いしてしまった。


 


「おお、いい匂い。ナオさん、俺らの食べられる物、何かある?」

「あら、日曜日は外で食べるからいらんって言うてたのに。顔なしさんはご実家に帰らはったのよね。だから、哲さんとモンキーさんの分作ったらええの?」

「ごめん、ナオさん」


 手を合わされたなら仕方ない。


「あれ、哲兄も来てたの?」

「何だ、おまえたちも来たのかよ」

「やっぱりナオ食堂のご飯美味しいもん。ナオさん、手伝う。何か食べさせて。ガクさんはここに座っていてね」


 ダイニングの椅子を引くとガクを座らせた。


「あっ、アクちゃ」


 ルナはガクに抱きついていった。


「ルナちゃんは今日も元気がいいね」

「うん、ルナ、おなかちゅいた」

「えっ、朝ご飯食べてないの?

「えへ、ちゃむたべた」

「ちゃむ?」

「ガクさん、ジャムだよ。ジャムしか舐めなかったの」


 一平が言うと、大笑いしたのはガクだけではなかった。


 レイはテーブルを拭くと、小皿に盛られたチャーハンを並べていった。


「はい、腹ぺこさんからラーメン食べて。ナオさんが次々に作ってくれるから」

「ルナ、おなかちゅいた」

「しっかりと朝ご飯食べないからだぞ」

「ごめちゃい」

「そしたら、パパがフーフーして食べさせてあげよう」


 ルナ用の椅子をセットして、ウサギの柄のピンクのお椀に、麺を少し入れてもらいルナはフォークで3本ほど掴むと啜り上げた。


「あちゅ」

「ゆっくりと食べなさい」


 一平はフーフーと息を吹きかけたが、ルナはよほど空腹だったとみえ、待ちきれずに啜った。


「フォークで上手に食べられるなあ」


 感心する哲平の手元にもラーメンが届けられた。





 昼食後、リビングのソファーに寛いでいるとルナが這い上がって来て、一平の首に手を回ししがみついた。


「ルナはひっつきむしだなあ。そんな簡単に男にくっついたらダメだぞ」


 ナオとレイは洗い物をしながら、何やら深刻な話をしているようだった。




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