第266話 既視感、そして再来

また負けた…………か。

まあはっきり言って仕方のないことではあった。


敵を避けたはずなのに、3パーティが降ってきた。

流石にlucusの想像の範疇を超えてきたようで、対処するには難しかった。


そういうわけで結果は総合7位へ転落

7位まで転落してしまったと捉えるか、まだ7位と捉えるか。

ただ1位までの軌跡が少し遠のいてしまったのは確かだったりする。




Day2の3試合が終わり、一旦休憩に入った時だった。


『いや~あそこ決め切りたかったですね。』


どよーんとした空気に切り込んだ一声はendmからだった。


『うーんまああれは俺が悪いかな。読めなかった。』


『いやいや二人とも悪くないって、仕方なかったんだよ』


wartがそう言って慰めつつも、彼女もご飯が減っていなかったのは俺が気が付いていた。


『うーん、ただあそこでもう少し結果を残せたら…と思うとまだまだ実力不足だな~って』


wartも言っていたが、流石にこれは仕方がない。

3パーティが一気に自分達に押し寄せてくる。

これを対処するのはもはや不可能に近い何かだった。

奇跡を起こすにも材料が要る。

ただ、まだ足りない。


「きつかったのは仕方ないよ。」


『実際そうだと思うよ~!』


wartもこう言う。


『いや、うーん…それはそうなんだけどさ。こっから1位は流石にきついよなって』


『私も少し……というよりも調子があまりよくなくて。昨日はめちゃくちゃ良かったのになぁ。』


lucusとendmは完全にダウン状態。

正直言い分は分からなくもない。

試合は最後まで分からない。

もはや王道な言葉になりつつある。


だが、lucusの目には何が映っているのだろうか。

逆転という言葉が消滅しているのだろうか。


一方endmは完全に調子を狂ったのかあまりやる気も進まない様子。

どれだけ環境が整っていたとしても結局はコンディションという運に狭まれる。

彼女がDay1と比べてしまうのも仕方ない。



あわあわとするwartが俺の目に映る。

これ大丈夫なのかな……俺の気持ちは不安でいっぱいだ。


「まあ、まだ3試合あるんだぞ。」


こう言っても彼らの耳には届かない。

まあそうだよなって感じるのは俺も一緒だ。

だって、昨日同じ境遇を受けたから……。


『blancの言う通りだよ~!頑張ろうよ~』


wartがlucusの方をがんがん揺らすが、彼はうーんとだけ答える。


『ここから3試合かぁ、どこまで詰めれるんだろうか。』


『どうでしょうか、ここでまた私が動ける気が全然しない…んですけど』


endmは昨日のプレイと見比べて、凄く落ちこんでいるご様子。

まあ確かにこの舞台で、全力を出し切れないというのは少しやるせない気持ちにもなる。


『うーん…………』


やばいこの空気のまま、休憩時間が終わってしまう。

これをどうにか出来ないのが俺の欠点なのかもな。


『希望が見えたら少しはわんちゃんが生まれそうだが、流石にきついんだよなぁ』


lucusはボソッとそう言って立ち上がった。


「あれ、もう行くのか?」


『ああ、先向かっとく』


やはり何かを失った喪失感は大きいのだろう。

彼と、それに続いたendmが部屋を出て行った。

俺らもすぐ向かわないとな。


「行くか」


と俺も足を進めだしたところでwartに引っ張られた。

シャツの張力はこんなにも強かったっけと感じながら、俺は止まったまま彼女を待った。


『私こんなところで諦めたくないよ…………』


辛そうにそう言った。


『まだ…まだ私たちは終わってないよ』


限界から出しているような苦しい声。

聞いている側もしんどくなるほどだ。


『blanc、彼らに希望を見せて………お願い』


wartからこんな真剣にお願いされたのっていつぶりだろうか。

いつもはちゃらけてる、どちらかと言えば明るい要員だったがそんな彼女がこんな一面を持っていたとは。


希望…………。


『無茶ぶりかもしれない、でも今はblancに頼るしかないの』


そんな声でお願いされて、俺が断れるわけがなかった。


「任せろって。ここで終わらせない」


誰が白い流星の不敗伝説を最初から潰そうとするんだよ。

プロローグくらい作らせろ。

どれだけ大会を荒してもいいや、勝てばいい。


「白い流星は負けない。伝説を起こす」


一歩ずつ確実に踏みゆく。

この試合は奇跡にはさせない。

優勝への軌跡だ。


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【後書き】

最後の言葉は、とあるゲーム大会で実況席から飛び出した神実況の1部を抜粋しました。

実際にはもっとカッコいいです。

めちゃくちゃ好きです(語彙力)



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