第253話 勝者効果
この世界には勝者効果というものがある。
勝てば勝つほど自信が付く、すると次も勝ち、その次も勝つ…………
言わば勝者は勝ち続けるというものだ。
その一方で敗者効果というものもある。
負けて戦意を喪失し、負け続けるというもの。
だが例外もある。
その言葉が下剋上。
弱者が強者を打ち破り、地位を逆転させる。
何が大事で、何が不必要か。
その場での最適解をどれだけ早く見いだせるか。
それが勝利の方程式に打ち勝つ者である。
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「良いな。人の減りが早い」
今まではまだ残り15パーティとかだった。
けれど、この試合は残りパーティ数が10
明らかに人の減りが違った。
『6試合目なので、今まで負けていた人がぶつかりに行っているのかも』
おそらくそれだ。
1日目でどれだけの結果を残し、どれだけ次の繋げられるか。
『ただ、キルログを見た感じ上位勢が結構勝ち残ってますね』
どれだけ弱者が抗おうと、結局勝者が勝つ。
それを示唆しているかのようにも見える。
「俺らも流石に移動しないとな」
次の安全地帯に、俺らの居る場所は入らない。
だから移動必須というわけ。
『どう移動しますか』
「そうだなぁ」
忘れてはいけないのが俺らは今2人ということ。
周りは4人パーティの中、人数不利という現状を変えることは出来ない。
そして前方には敵を確認できる。
移動上は避けられない壁となるので、戦闘を避けるのは限りなく難しい。
「endm、次の戦闘。どれだけ戦える」
『いつでも行けます。』
「行くしかないな」
2人という不利な状況は、どこでも同じ。
ピンチになるのはいずれ出会う事実。
じゃあ自分たちがその運命に抗わず、内部で必死に抗う。
「勝ちに行くぞ」
俺らは前方の敵を照準の範囲内に収める。
2vs4?
そんなの数値上の事実。
実力差、これが全て。
『撃ちます!』
彼女から放つスナイパー弾、そしてすぐに鳴り響く俺のアサルトライフルが戦場をかき乱した。
彼女の先制攻撃は敵の頭を貫いた。
敵側があたふたし始めた時、もう既に俺は攻撃開始。
endmは動き始めていた。
「そこの敵削った!」
『了解です!!』
いつの間にやら彼女はショットガンに武器を変えたらしい。
超近距離で、攻めている。
俺はサブマシンガンとアサルトライフルの二丁持ち。
決定的な弾は撃てなくとも、サポートとサブアタッカーとしての役割は果たせる。
『ここ撃ってて!』
endmがピンを指した場所は敵が2人籠っているところ。
「了解!」
残りの敵をendmが処理する間ヘイトを受けろというわけだ。
任せろ。
もうそこは俺の
endmが攻めている間、俺は目の前の2人と向き合う。
相手の思惑は、おそらく〔2vs1なら倒せる〕そういう見解なのだろうか。
1人はアサルトライフルをこちらに向けて撃ち続け、もう一人はサブマシンガンを持って攻めてくる。
どれだけ数で攻めてこようと、どれだけ間合いを近づけようと、
「当たらなかったら意味がない」
距離のあるところから飛んでくるアサルトライフル弾は無意識に避けられる。
サブマシンガン弾は小さく、かつ数も多い。
距離も非常に詰めてきているからこそ、これは勝ったとでも思ったのだろうか。
もう一度言おうか。
当たらなかったら意味がない。
この勝負、敵側の方が断然有利なように見える。
これは一般論だし、正しい。
けれどそれはあくまで、対戦相手が普通の敵だった場合。
今この状況、大会中だ。
もちろん強者が集う世界最高峰の大会。
普通じゃないプレイヤーなどざらにある。
俺もその一人だ。
弾を避ける。
どれだけ練習して、長い間で培ってきた技術かは自分自身ではっきり刻んでいる。
もちろん衰えることもない。
これが俺のアイデンティティだ。
敵の弾切れ、俺はまだ立っている。
反撃を始めようじゃないか。
サブマシンガンを構えた。
あっちからの攻撃は当たらなかった。
でもこちらからの攻撃はまた話が違う。
これでも命中率は世界上位。
「勝たせない、まだ終わらせない」
俺らの時代は終わっているはずがない。
あの時、あの少女は言った。
『デュオで巻き返せばいい?ふっ、バカな事言わないで。もう私たちの時代だから』
私たちの時代?
面白いことを言うね君は。
君たちが主導権を握った時代はここまで。
ここからは俺たちの時代。
「よし!!倒した!!!」
この場面、その逆境に打ち勝ったのは俺だ。
『私も倒した!!!』
endmもそこで戦闘に勝つ。
2vs4において生き残ったのはblancとendmだった。
残りパーティ数は6
安全地帯も収縮したことで戦闘は激化している。
だがそれでも人の減りは加速しないのがこの試合のレベルを物語っているのだろうか。
『どうしましょう、これ』
今この状況。
攻めるべきか否か、というのが今悩んでいるもの。
仮に攻めないという判断を取った場合順位は確実に上がる。
ただ最終場面は2vs4。
安全地帯が収縮した中での2vs4に勝ち目はないに等しい。
つまり、多少生き残るが、1位は取れない選択。
一方攻める選択。
リスクは高い。
だが、1位になれる選択肢が生まれる。
「まあ攻めるしかないよな」
どうせ散るなら後悔のない選択を。
今この流れで攻めない選択なんて取れるわけない。
『あそこが狙い目ですね』
ピンを指してそう言った。
確かに敵の場所も分かりやすい。
「行くか」
すぐに俺らは向かっていった。
敵の減りは加速はしなくとも減っていく。
その中で俺らは1パーティに狙いを定めた。
『行きますか』
endmの先制攻撃が戦闘開始の合図。
もはや暗黙の了解だった。
「負けても良い、それを前提にして頑張るぞ」
どちらの選択にせよ、俺らが負けていたかもしれない場面は十分にあった。
そこで勝ったんだ。
負けていたらそこで終わり。
言わばここからはボーナスタイム。
『ですね、やってやりましょう』
彼女の弾丸は戦場を貫き、虎は牙を向いた。
endmはもうこの場には居ない。
彼女はスナイパー弾を放つと、それが当たろうと当たらないであろうと戦場に乗り込んだ。
俺もその後ろから追う。
『そこ頼みます!!』
endmはショットガンで近距離戦。
だが複数人には割と不利になる。
そこで俺が出番となる。
サブマシンガンを構えた。
1人を正確に決める。
エイムのぶれも今はない。
流れはこちら側へ。
「よし!行ける!!!!」
この自信は糧となる。
勝者効果、これが今俺らには備わっていたのだ。
『倒しました!!行きます!!』
endmは予定よりも早い段階で、2人とも片付けたらしい。
それに引けを取られないよう俺もキルをする。
サブマシンガンが弾切れを起こしても身を引くのは時間の無駄。
アサルトライフルでそのまま突っ走る。
確かに近距離戦には不向き。
でもダメージ量は別に少なくない、全弾頭に撃てるならば、見方も変わってくる。
「よし!!!!!倒した!」
『ナイス!!!次行きましょ』
俺らの場所以外でも戦闘は起きていた。
だから残りパーティ数は2。
残り人数は6人。
結局運命は同じだった。
2vs4。
『人数不利ですね、どうします?何か戦略考えます?』
「んー」
どうだか。
でも戦略を変えたところでというのはある。
「運命は拒む、勝ちに行く。それだけだ」
『ですね』
彼女は特に何か言うわけでもない。
やる気は十分。
勝利の方程式は既に立式された。
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【後書き】
まだスクワッド6試合残ってます。
書きたいことをただ書いていると文もぐちゃぐちゃになるけど、めちゃくちゃ楽しい。
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