第248話 道しるべ
『よしじゃあ行きますか!』
第5試合、準備は万端。
降りる場所は特に変更もなし。
とりあえず初動に全てを掛ける。
負けたらおしまい、そう考えてやろう。それがlucusからの指示だった。
『サブマシンガンないですか?』
『こっちあるよ~!合流しながら渡すわ!敵はここね!』
展開は変わらない。
最初にendmとwartが対峙する。
ただ残りの二人は降りる場所を少し変えていたみたい。
『あれ、敵3人居る。』
「まじか、行くわ」
『俺もすぐ向かう、二人はそのまま行けそうか?』
『ええ、行きますよ!』
endmは強気だ。
3人だろうがお構いなしのご様子。
wartも異論はない。
俺はすぐに彼女らと合流して戦闘に入る。
「そこの敵削った!」
『ここの敵めちゃくちゃHP少ないです!』
『1人後ろに下がってる!』
3人の連携は途切れることは無い。
『俺のところに1人敵がやってきたわ。上は任せた!』
3vs3だ。
HP的にも俺らが優勢と見ていいかもな。
『敵二人は奥の部屋に行っちゃったね』
「じゃあここ倒さないか?」
『了解です!』
1人逃げ遅れた敵を俺らは見逃さない。
『よし!倒しました!』
endmが特攻してくれて、残り2人。
『よし!こっちもやったぞ!すぐ向かう』
このタイミングでlucusも勝利。
もはや流れはこっちの空気だ。
「endm、行くぞ!」
『はい!!!』
俺はendmと二人で戦地に身を乗り出した。
敵は二人、どちらも同じ小さな小部屋。
障害物は特に目立ったものもない。
じゃあやめておくか?
そんなわけがない。
行くしかないだろ!
「そっちは頼んだぞ……」
endmが1人を豆腐のように素早く崩した。
その間に、俺はもう一人の敵と対面した。
銃口はこっちに向いている。
標敵は俺の様だ。
俺に向けて撃たれるのはショットガン。
至近距離だと頭にも当たりやすくて怖い!
というのは建前の話。
そんなもので崩されるとでも思っていたのか?
「よし!1人やったぞ!」
『こっちも終わりました!!!』
『ナイス!!!』
『やった!初動勝ち!』
現役時代に
やっぱり大会は初動が一番怖いですか?
誰かがそんなことを質問してきたことがあった。
初動が怖い?そんなわけないだろ。
そう反論したことがあった。
当時の自分はまだ中学生、周りを燃やすには十分だった。
と言っても俺は本当の事を言ったと過信し、何も思わなかったのは蛇足か。
話がそれたな。
もし今の俺にそんな質問が降り注いだらどうなるだろうか。
まあ答えは1つ。
怖い、けど撃ち勝つ。
これだけだ。
「ナイスすぎる!このまま動くか?」
『そうだな、攻め方は任せる。endmに連れるわ』
lucusと俺はおそらく同じことを考えた。
endmはこの世界において、トップレベルの実力者。
あるいはそれ以上の人間。
こんな程度の立ち回りだと、彼女を最大限生かせるわけがない。
そう思ったのだ。
『分かりました。』
とendmは身勝手に動き出した。
特に俺らは何か意義を唱えるわけもない。
というか、意義を唱えられるほどに彼女より実力がない。
『あ、あそこに敵………』
「攻めるか?」
『んー……いやあれは3パーティくらいが絡んでそうですね』
『確かにそうだね~ちょっときついかな』
流石に3パーティの戦いに、1パーティが突っ込んでもヘイトを食らって撃沈するリスクもある。
ここは身を引く…………かと思った。
『きついですね。じゃ、私だけちょっと様子見を………』
『ちょいちょいちょいちょい』
lucusが真剣に止めた。
彼が声を上げなかったら俺が同じことをしていたかもな。
『え、どうしました?』
『どうしました?じゃないよ?え?』
いや反応は同じ。
いやむしろそれ以上。
wartなんかはもう一言も発しなくなっちゃった。
『大丈夫です。すぐに引いて戻ってくるので。皆さんは安全なところで隠れててほしいです』
『でも………』
「lucus、今主導権は彼女にあるしここは様子を見よ」
俺も正直こんなリスクのあるパワープレイは断固反対。
だが彼女を信じたい気持ちの方が高かった。
もしも数学で表すなら、endmが生きて帰ってくる方に確率が分布する。
そういうレベルだ。
『じゃ、すぐ戻ってきます!』
そう言って朝学校に行く時の家を出るかのようにあっさり飛び立った。
いや、飛び立ってすぐ戻ってくる……そんなこと誰も思っていなかった。
『ただいま~』
『えっと、皆?』
『お前やばすぎんだろ…………』
lucusの声が引きつっている。
『endm、なんてものが私の仲間に……』
wartまで若干引き気味。
『な、なんで皆さん暗いのですか?』
「いや、10キルを単身で稼いで戻ってくるやつはやばいだろ!!」
しかも大会決勝、凄く重要。
化け物とかそういうレベルじゃない。
世界から集まった最強同士の集まりの大会。
それが世界大会。
1人1人がブロンズ帯とかじゃない、全員世界を争える最強プレイヤーとして名を連ねている人たちだ。
それら1パーティを1vs4クラッチする。これだけでもざわつくどころの騒ぎじゃない。
なのにこの女は10キル持って帰ってきた。
「お前……まじでやばいよ……」
流石に俺も引いた。
もちろん良い意味ではある。
endmが世界で注目されるプレイヤーになった瞬間だった。
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【後書き】
ちなみに単身で10キル稼いで帰ってくるのは、カジュアルでも難しいと思われます。
作者には出来ませぬ…………
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