第231話 希望は取り戻して

アジア大会決勝3試合目、まだ終盤に入ったところだが早くも俺一人になってしまった。

4人に対して一人でこのまま勝ち残るというのは凄く難しい。


けれど、ここで勝たなければ皆を世界に連れて行くというその目標が果たされなくなってしまう。

だからどうしても頑張らないといけなかった。

今まで考えたあれこれを全部捨てて、ただ己の姿で。

何も聞かず、俺は自分自身を信じてこの試合をやり遂げる。


そう決めて、リミッターを外した。





『blancそこは右に行った方が良いかもしれん』


そんなlucusの指示も残念だが今は聞かない。

俺は何もなかったかのようにそのまま左へ進む。

もちろんリスクがあって選んだわけじゃない。


こっちの方がリスクが低く、かつキルも稼げて、ヘイトも食らいにくい。

そういう地点だからだ。

lucusの指示したところには、もうまもなく激戦が始まる。

それを読んでこっち側に来たわけだ。


戦術の神でもここまでは読めないであろう。

これが経験の差だ。


目の前にいるパーティは4人。

進路方向に居るからこそ、少し厄介になってくる。

バレるのも時間の問題………かもな。


じゃあ倒すしかない。


敵が俺に気が付く前に先制を仕掛ける。

スナイパーで構えて、…まずは一人をキル。

残り3人が俺に気が付いたところで普通なら下がるが、今回は違う。

サブマシンガンに切り替えるとそのまま前に進む。


敵の弾は割と規則的。

それに3人がアサルトライフルを一斉に撃ってくれたからこそ考えることも減ってくれた。


サブマシンガンで狙う敵を一人決めると、スコープを覗かぬままにキルを取った。

残り2人はアサルトライフルの弾が切れたらしい。

リロードをするかと思ったが、やはり別の持っていた武器に切り替えた。

1人はショットガン、もう1人は…ピストルか。


ショットガンは弾が大きいが、その代わりDPS、連射速度が低い。

逆にピストルは弾が小さくDPSが高いが、ダメージ量は少ない。


言わば妥協点というやつ。




ただ今の俺に妥協という言葉を求めてはいけない。


完全勝利


ただこれのために突き進むしかなかった。


ショットガンを避けると、一定時間意識はピストルのみに向けた。

もちろん先に倒すのもピストル持ちの敵から。


途中でショットガン側も意識しないといけない。

ダメージ量もバカにならないし、かするだけでまあまあにHPを持って行かれる。


2発目を華麗に避けると、ピストル持ちを倒す。

サブマシンガンのリロードをしながら、ショットガンをまた一発。


敵はこのタイミングで少し下がるらしい。

いや、ここしかチャンスが無いのは分かってるでしょ。


もちろん行く。


サブマシンガンのリロードを済ませると、すぐさま向かった。

敵はショットガンを構えてこっちを向いている。

ただその弾も当たることなく宙に舞っていく。



これで4キル。



まだ敵は残っているが、今はここにとどまって良いかな。

一番ヘイトを貰わず、敵も近くに居ない。という好立地。


キル数も少ないわけじゃない。

順位もめちゃくちゃに低いわけじゃないしこのままなら世界に行けるかな。


油断大敵、その言葉を忘れず俺はまだまだ進んでいく。








あと1パーティ。

向かい側で戦闘が激化してくれたおかげで敵数はあり得ないくらい減ってくれた。

これは運も味方に付けているというやつだ。


『これはもう落ちてもいいんじゃない!』


すまないwart。ここで素直に、残念、でも勝てたねで終わりたくない。

最後は勝ちたい、その気持ちが自然と湧いてくる。


ああこれがプロゲーマーだ。

懐かしい。

過去にしてきたこと、過去に捕らわれ辞めてしまったもの。

そして今、この現在においてしているもの。


俺は懐古に老けつつ、全てを思い出した。

昔何を意識して、何をチャンスにして、どう攻めていたか。


「分かっちゃったな」


俺はそうボソッとつぶやくとスナイパーをリロードした。

敵は3人、1人減ってくれている。

それでも1vs3と人数不利には変わりない。


もうまもなく俺の場所もバレる。

だからその前に先制は撃って出るべし。


俺はアイテム一覧を覗く。

久々に見たかもな、俺は珍しくアイテムをほぼ一切使わないプレイヤーでもあった。

まあ単純に考えるのが面倒だったっていうのもあるが。


昔は使っていた、その記憶をたどりに俺はグレネードを掴んだ。


「まあこの距離かな」


特に敵が居るわけでもない空へグレネードを投げ上げた。

そしてこの瞬間俺の攻撃は幕を開けた。




グレネードの爆撃音。

それと同時に敵を一人消去。


相手からしたら気が付くのにワンテンポ遅れる。

ようやく敵が近くに居る、そう気が付いたときにはもう遅い。


俺は既に目の前でサブマシンガンを構えているからな。


準備される前に2人目を倒す。



ここで攻める?いやそれはしない。

サブマシンガンもスナイパーもリロードは済んでいない。

俺が姿を隠せるような場所もないし、リロードするチャンスがない。

このままじゃ押し切られるだけ。


だからもう一つアイテムを取り出す。


「こんなものもあったな」


グラップラーを使って、違う場所に移動する。

移動中敵に撃たれるがそれはしっかり避ける。

近くの建物に入るとリロードを済ませつつ、窓から敵を伺う。



あれは……蘇生しそうだな~


敵が倒されても一定時間内なら蘇生ができて、復活させられる。

簡単に言えば倒した敵がよみがえる。

俺にとっては十分に厄介なことだった。


「ま、させないんだけどね」


俺はリロードを済ませたばっかりのスナイパーを使って敵を撃つ。



もちろんそれは頭を狙った。

だからこうしてまだ立っている。




俺がチャンピオンそのものだった。

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【後書き】

後書き書くことないよ!!!

いつも読んでくれてありがとう~!

勉強と小説頑張ります!

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