第224話 使えるものは使って

『上の2人中々にしぶといです。どうしましょう』


「んーそうだな」


俺らが降りるというのも一応視野にはあるものの、今後の試合にだいぶ影響しそうで難しい。

だからといってここで戦うには場所が不利すぎる。


「endm的には勝率は何%くらいだ」


『そうですね…50%くらいですかね』


endmで半々か。

じゃあちょっと駆使すればわんちゃんあるか?

ここでリスクを負うのももったいないが、時には何かを掛けるのも大切だ。


「じゃあ俺が前を行くから後ろから撃ってくれ」


『了解です!』


俺がおとりになることで、どうにか打開を試みる。

前の敵はアサルトライフルで俺を撃ちまくる。

どうやらendmの姿は見えていないようで、俺だけを撃ってくれる。


「頼んだ」


俺は前からやってくる弾を正確に避け続けた。

少しタイミングに戸惑う部分もあったが、それは経験の差で補う。


後ろからendmが撃ってくれることで、1人はすぐにやられた。

もう1人は、彼女の姿に気が付き身を引いたようだ。


「ナイス、このまま上取るぞ」


『はい!すぐ行きます』


上に居た敵は、endmが来る前に俺が倒した。

近距離すぎると、流石にダメージを食らってしまったが軽い傷で抑えられたのは強い。

ただ、世界に行く前にはこういうところもちゃんと磨かないとな……。


「よしっと、撃ちまくるか」


上でやることはそう多くない。

下に居る敵で、撃てそうなやつらをどんどん撃っていく。

もちろん周りも警戒しないといけないので、俺が時折辺りを見回す。


『あ、1人やりました!』


「ないす!」


なんかいつの間にか彼女は一人倒している。

下と言っても、範囲は広いし、敵は色んな所に隠れているし見つけるのもそう簡単じゃない。

その中で、探してかつ倒せるとは……彼女が少し怖い。


「よしよし、順調だな」


次の安全地帯も俺ら側に付いてくれている。

初動で敵が居なかったときはどうなるかと思ったが、案外悪くない。

というかむしろいい方向に進んでくれている。


キル数は11。

当初の予定通りで、もう良いかなくらいまである。

あとは順位だが、この調子なら行ける。


『結構人が固まってきましたね……どうでしょう。特攻するのもありじゃないですか?』


「えー、うーん」


俺は言葉を詰まらせた。

流石にアジア大会決勝。

特攻していいですか?と聞かれてはいどうぞと答えられるような場じゃない。

それなりにリスクは大きく、どちらを取るべきなのかは難しい。


「どうしようかな。」


『私なら戻ってこれます。』


生存率がそれなりにあるのか。

でも不慮の事故というのも付いてくるが、どうしよう。


「endm、本当に戻ってこれるか?」


『任せてください。』


「分かった、ちょっとだけな。無茶はするなよ?生存第一で。何かあったらすぐ行く」


だいぶ条件は掛けたが、それでもendmは飛び出していった。

あんまりリスクが高すぎる行動を勧めたくは無いのだが、endmならワンちゃん?という希望も最近よく持ち始めている。


以前よりも明らかに強くなっていることもあり、出来ることも大幅に増えた。


こんなことを言ったら語弊が凄いことになるが、使える物というのはどんどん使う。

正直これに限る気がする。


今回も、リスクは高いもののそれなりに返ってくるものも多い。

現に、今endmはじゃんじゃんとキル数を稼いでる。


『15キルです~!流石にそろそろ戻りますね』


4キル稼いでちゃんと戻ってきた。


「ナイスすぎる。」


正直これはすごくでかい。

多少順位を落としてもリカバリーが付くしな。


「うーん、流石にきついか」


次の安全地帯も俺ら側、という風には残念ながら動いてはくれなかった。

自分達の居る真反対のエリアまで移動。


『それなりにヘイトとか貰いそうですね……どのタイミングでいきます?』


そう、移動で一番怖いのはヘイト、簡単に言えば集中砲火だ。

流石に四方八方から撃たれるというのは対策が難しすぎる。

まあ、もう食らったらおしまいみたいなものだ。


「そうだなー」


どこのタイミングでもそれなりにやばそうだな。


『あ、後ろからじゃあ見える敵にどんどん圧かけるので、その間にblancが進んでは?』


「あー良いかも。でもendmはそれ移動出来るか?」


俺が移動できても、endmが間に合わないと結局は変わらないようなもの。

それに圧をかけても、自分のところに弾が飛んでくるんじゃないか?


『これは気合いですかね……』


「いや、もっといい作戦思いついた。俺が後ろでお前が前。これで行こう」


圧をかけて、ギリギリで移動する人。

これを安定させられる自信が俺にはある。


『それでもいいかもですね。私が先走ります~!』


俺はアサルトライフルで、撃ってきそうなところ全てに圧を掛けた。

すると予測通りヘイトは俺の方へ向いてくれる。


endmは無事、移動に成功して後は俺だけ。

上から斜方上に落ちてくる弾は少し避けにくい。

がこれに関しては、割と練習していた。


『おっけーです!いつでも来てください!』


endmが圧をかけ始めた。

すると、俺のヘイトは若干薄まり、彼女の方にも集まってくれる。


これは移動しやすくて助かる。


「よし、いまだ!」


多少来る弾は右に左に避けて、出来る限り短いルートで。


「よし!」


合流は成功。

ただヘイトは変わらず俺らの方を向く。

次の移動もあるし、どうにかしておきたいが。


『私にスナイパー貸してくれませんか?』


「ん?良いけど」


彼女が突然そんなことを言った。

まあ別に良いけど、と思い持っていたスナイパーを落とす。


『いっきまーす!』


あ、まずい。

よく考えれば分かることか。

さっきまで俺らに銃口を向けていた敵全体が、少しずつ減っていく。

彼女の銃弾と共に…。




「まじで敵居なくなったな」


残りも、もう3パーティとか。

だいぶ減ったな。

ん?違う、減らし過ぎたな。


『ですね~でも18キルは大きいですね』


流石にさっきの敵をやり切れなくて悔しそうにしていたが、それでも3キル。

俺にとっては十分だし、大会全体にしても1試合目でこれは大満足。


おまけに順位はもう3位以上確定。


『敵はそこの崖上と、あそこの岩裏ですね。』


若干俺らが不利か。

挟み撃ちにされたら、全然まずい気がするが。


「移動もあるし、岩裏の敵を倒しとくしかないな。」


『私が1キルは持って行くので、残りの敵を倒してほしいです。それかスナイパーで上の敵のヘイトを向けておいて欲しいです。』


急に捨て身作戦来た。

まあでも割と現実的ではあるのか?

1位は狙えない気がするが、2位を確実に取る。

まあこれでもいいだろう。


「分かった、ミスってもドンマイだ。行くぞ」


endmから受け取ったスナイパーを構えた。

崖上の敵はずっとこちらを伺っている。

いつでも準備が出来ていそうだな。


『では、行きますね』


彼女は走りだした。

その背中を俺が守る。

スナイパーでまずは一人、当たらなくても良い。

とりあえずヘイトを向けることには成功したようだ。


endmの方には弾は行ってない。

後ろでも戦闘音が鳴り響く。



俺も少し耐えるのがきついな。

敵はスナイパーとアサルトライフル。

どちらにも注意を払うのがどうにもしんどいらしい。


とここで朗報。


『2人ともやりました!片方は合い撃ちで私も死んじゃいましたが、』


「ナイスすぎる!」


流石にそれはでかすぎるよ。

endmが強すぎる。


「出来るだけ頑張ってみるか」


次の相手の弾が切れたタイミングが狙い目か。

アサルトライフルのリロードに入っている。

今しかない。


急速に詰めて、崖の近くまでやってくる。

ただ、スナイパー持ちの敵はショットガンに持ち替えて撃ってきた。


俺は今アサルトライフルとスナイパーしかないのだが。

とりあえずアサルトライフルを使う。

ただ狙っている暇など無いので、スコープ無しで勘を辿るしかない。



っとここで上から一人やってくる。

まずいリロードを終えたらしい。


「くっそ、まじか」


1人は持って行けそうだったのだが、技術不足でやられてしまった。


『いやいや十分です!2位最高です!』


アジア大会デュオ部門決勝、大会全体としては1位通過で1試合目を終えれた。

まあでもここからどんどん場に対応してムーブしないといけない。

自分の実力不足を実感させられるばかりだった…………。


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【後書き】

ギフト本当に嬉しいですありがとうございます。

これからも頑張ります~!

近況ノートに新作の先読み貼っているのでサポーター様の方々はぜひ読んでみて感想頂きたいです。



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