第218話 endmが家に③

endmが一緒に生活に加わり数日が経った。

分かったことは多々あったが、一番感じたことといえば、やはり彼女が優秀すぎるということだ。


夜音の家を片付けてもらい、料理も作ってもらった。

あ、もちろんご飯は交代制で作ることにした。

全部をendmが担当は俺も少し心が痛む。



平日は俺と夜音が学校に行っている。

endmは流石に学校に行ける状況じゃない。

見慣れない街を歩いたり、俺のPCを使って練習したりしているよう。



そんなこんなで彼女が来て4日目。

いつも通り学校から帰ってくると、endmは家でゆっくりしていた。


「ただいま~」


そう返事したが何も帰ってこない。

もしかして、寝ている?かと思ったがリビングには普通に彼女が居た。

ただ深刻そうな顔つきで、悩んでいるよう。


「endm、どうかしたか?」


『うわ!blancも帰ってきてたんですね。おかえりなさい』


まさかの俺が帰ってきたことに気が付いてなかった。


「大丈夫か?なんかあったか?」


『い、いえ、お気になさらず。』


流石に心配しているが、彼女がそう言うなら俺は何もできない…。

そう思ったのだが、


endmの挙動が今日1日中不自然だ。

あまりにも会話を聞いていないし、夜音の呼びかけにも無反応が多い。

おかげで、夜音まで彼女を心配する次第。

endmは『きっと疲れていますね。すみません』と言っていたが違う。



だから、いっそ聞いてみるか。そう思った。


「endm話聞くぞ、今日変だし。俺らも心配するしさ。」


夜音が居ると話しにくいかなと思って、彼女がお風呂に行ってるタイミングで聞いた。


『あ、えっと、なんでもないで…』


「そんなわけないだろ?良いよ話してみ」


ここまで来て、なんでもないでごまかすのは無理があった。

俺はendmが話始めるのをじっと待つ。


少しの間が空いてから、


『すみません実は…』


と話し始めた。

簡単に言うならば、大会に出れるかというのが分からないらしい。

両親が家に思ったより滞在していて、戻ることが出来ないそうだ。


『私の勝手なんですけど、仲直りするしかないのかなと思ったりするんですけど…なかなか先に進めなくて。』


俺は彼女の話を黙って聞く。


『両親は私の事、過剰に期待しすぎなんです。

 何もかもを平均以上にこなしていると、いつの間にか期待度が凄く上がってました。でも私はそんなに期待に応えられる人じゃなくて…』


『それに、私がゲームをすること自体、反対だったんです。

ただ、両親は忙しくて帰ってこれない日もあって、そのタイミングでよくやってました。』


『今まで隠してきたんです。でも、両親が共に出張する直前、その事実を知られてしまいました。』


『私、今は顔を合わせたくなくて…本当に自分勝手でごめんなさい。

 また出張行くと聞いていたのですが、予定が変わったのかまだ家に居るんです。

だから帰れなくて…』


凄く難しい問題かもしれない。

俺がどうしたらいいのか、そんなのが分からなくて苦しい。


『もう良い子として振る舞うのは嫌です…』


彼女は涙を流した。

日ごろから清楚として、天使として生きている彼女を見てきたからこそ、

悲しんでいる姿に俺も心が締め付けられる。




「その、俺にはどうすることもできなくてごめん。でもendmが良いなら俺らはいつまでも住ませるし、きっと夜音も分かってくれる。

大会に関しては気にしなくていい。俺はもう1セットあるから。」


自分達も親と色々あって、今ここに立っている。

だからこそ彼女と両親との関係が俺に分からないわけでもない。


きっと夜音も分かってくれる。

だから大丈夫だ。


そう言うとendmは涙を流しながら、でも少しだけ笑顔が戻ってきた。


「大丈夫だ。俺が世界に連れて行ってやるよ。それまでは俺に頼ってくれ」


まだ俺たちの世界大会始まったばかりだ。


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【後書き】

少し文字数短めでごめん!

次話はついにアジア大会準決勝から始まります~!



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