第212話 対策が付き物
さて4マッチ目。
3本先取で相手が2本を取っていてややピンチ。
相手側がペースを握っているこの状況で、endmはとある作戦を思いついた。
『これってつまり、相手が私たちの場所を完全に分かりきっているということなんですよ。』
「まあそうだね。」
wartも居るので、俺らの足音を聞いて後を付けるのは簡単だったりする。
そのおかげで、まんまと綺麗にはめられたわけだが。
『じゃあ私たちがその上をいけばいいんです。』
「と、いうと?」
『おとり作戦やっちゃいましょう』
ということで単純かつ名案、それがおとり作戦だった。
おとりは俺が担当。
そしてそこから少し離れた先でendmが終始構えている。
「案外効くのかなぁ」
俺がおとりで、endmは動かない。
つまり今彼らがこの足音を聞いて駆けつけているとしたら、それは俺だけの足音だ。
だがそこに気が付かれない限り、この作戦は上手く行く、そう確信した。
「本当にどこに居るか分かんねえな」
どういう立ち回りをしてるんだろう。
少し気になってくる。
『あ、来てますね。私の方から若干足音が聞こえます。』
「え、そっち?」
『はい、ただ私の存在は気が付いてなさそうです。』
「なるほど…」
つまり作戦自体は上手く行ってるのか。
「そっちの相手の動きはどんな感じか分かるか?」
『えっと、二人居ますね。あと結構動きはゆっくりだったりします。
blancと進むスピードがほぼ変わらないかも』
「尾行か…ははーんなるほどな。」
大体彼女らの動きは分かった。
言わば、急がば回れ。
戦いにおいて、焦ることは禁断。
やはり事前にどれだけ有利に持ち運べるか準備することが大事だったりする。
彼らは遠くから回ることで、出来るだけ俺がギリギリまで気が付かないようにしている。
すると、不意打ちが何度も出来るのだ。
しかも距離が離れているからこそ、簡単には反撃が出来ない。
「流石は…lucusだな。」
『ですね、そろそろ撃ってくるかもしれません。私が合図したら後ろを向いて攻撃してください。』
「了解」
俺は出来るだけ気が付いてません感を出せるように、前を歩く。
といってもおそらく足音しか聞こえてないから、視覚的錯乱は無意味なんだが。
『行きますよ……………今!』
彼女の声と同時に振り返る。
ここでようやく彼らの姿を見ることが出来た。
撃たれた弾を避ける。
彼らも少し動揺したのか、少し下がれたのが遅れたようだ。
後ろに回って攻撃するendmには気が付けず、そのまま二人を倒す。
「よし!ナイス!」
『ナイスです!ここで刺さってよかった~!』
さて2本目を遅れてゲット。
次が正真正銘ラストマッチ。
さてどうすればいいものか。
5マッチ目。
お互いセットポイントということもあり、迂闊に暴れることは出来ない。
さっきの作戦で行くのも無しではなかったものの、それが通用するとは限らない。
『これどうしましょうかね』
「そうだなぁ」
やはり敵となるのはwart。
相手ペアは彼女を元に、lucusの的確な作戦を構成して作られる。
だからどれだけ彼女の力を封じ込めるか、というところか。
『そうですね、でも彼女にとっての一番怖い状況というのはやっぱり居場所が分からなくなったときですよね。』
「まあ確かに」
今まで信用してきたものを失うというのは怖い。
そして一気に劣勢になってしまう可能性もある。
だって、それをもとに作っていた作戦、立ち回りが全部崩れるから。
「そっか、俺らが動かなければ良いのか」
『え?』
「音が聞こえないと彼女らは何も出来ない。これが良いんじゃないか?」
『まあ確かに…良いですね角待ちでもしますか』
ということでまさかの最終セット。
角待ちで過ごすことになった。
ただwartには割と有効。
彼女は現に足音を乱して走り回っている。
lucusとの動きも若干乱れている気がする。
『来ますね。行きますよ』
『いけ!!!』
「よっしゃあ」
まさかのここに居るなんて彼女らは思っていない。
俺らの角待ちにまんまと引っかかってくれた。
『こっちは1人やりました。そっちは行けそうですか?』
「よし、終わった!勝った!!」
『やったあー!ナイス!!』
「勝ててよかったぁ負けるかと思った。」
wartとlucusもなかなかに凄い作戦を作っているものだ。
流石に焦った。
ただお互い改善点が見つかってよかった。
大会前に弱点を見つけられると、対策とか修正とかが出来るのでありがたい。
「さて、次はご飯食べて配信するか」
『ですね~!』
まだまだ合宿は始まったばかり。
---------------------------------------------------------------------------
おまけ?
「あ、お疲れ~」
『お疲れ、お前ら強すぎやろやばいって』
『いえいえ、私達も二人の作戦にだいぶはまってしまいました』
『わーんendmちゃん強すぎるよ~』
『lucusの作戦なら絶対勝てると思ったのに~』
「流石にあれは凄かったな、どういう動きしてたんだ?」
『秘密だ』
『教えないもーんだ』
『ふふ、まあお互いよく頑張りましたということで。』
「結局は俺たちの勝ちだしいいよ」
『良くない!』
『まあwart、大会でぼこせばいいから』
『あ、なるほど!』
『そうはさせませんよ?』
『はは、まあその時はまた対戦よろしくだな』
「だな」
『あ、そうだ昼作ってるから食べに行くか』
『えーまじ神!大感謝!』
「まじかありがたすぎるな」
『ついて来い、早く行くぞ~』
『お~!!!!』
俺とwartはlucusの後ろをてくてくと歩いた。
『たのしいな…』
そう呟いたendmの声はなぜか脳裏によく響いた。
----------------------------------------------------------------------
【後書き】
おまけみたいなの入れました。
単純に地の文全然無いセリフだけの小説も好きなんですよね。
配信回は一回くらいこれしてみようかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます