第209話 混乱をさせる側

『敵が居ねえ』


lucusはそうボソッとつぶやいた。

確かに初動にしては敵が少なすぎる。


いつもなら3パーティくらいは降りてるのだが、今回は1パーティ。

たくさんいるはずなのにおかしい。

もちろんその1パーティは4人でさっと倒した。


ただ、この銃声を聞きとって敵が来なかった。



確かに何かがおかしいのだ。



4人全員が不信感を抱きつつ、街で物資を漁る。


『本当に敵が居ないですね……』


『だね~なんでだろ』


「流石に珍しいな。どうする?探しに行くか?」


俺がそう提案したが、その後にlucusはこう言った。


『いや、これは行っても意味がない。』


彼は何か考えたらしい。

そしてなぜそうなったのか原因を突き止めた。


『俺たちはこの試合において、避けられている。これは間違いないと考えて良い。』


『なるほど!?』


『確かに、それだと敵がいないことにも辻褄が合いますもんね』


「そういうことか」


これは避けられている。

間違いなく見て良いと俺も思った。


もし俺ら4人に当たると、敵側からすれば災難を逃れない。

ほぼ確実にそこで試合が終わってしまうのだ。


じゃあ俺らを避けて順位ポイントを稼ぐ。

これがあいつらにとっての最善策だった。



俺でも、もしあっち側ならそうしていただろう。



「きついな」


『だな、wartも活かせないし』


『ごめんねぇ』


『wartが悪いわけじゃないんですよ。大丈夫ですよ』


wartの特性は敵側の足音から生まれる。

足音から距離間を考え、場所の特定。

また銃声から距離間をも特定できる。


それぐらい化け物能力を彼女は備えている。



ただ、音がまったくもって聞こえない以上、どうすることもできなかった。




『これどうしよう…流石に私も何も出来ないや』


『敵が居ないと、キルも稼げないのでしんどいですね』


「これはどうしたらいいやら」


はっきり言ってどうすることも出来ない。

こうなることを予測できなかった俺らに余地があるくらいだ。


流石にこの考えは頭から抜けていたなぁ。




『まあ一つあるには、あるんだが。リスクはそれなりに大きいぞ?良いか?』


『うん!リスクなんて元から付き物だよ』


『私も何があるかは知りませんが行きますよ』


「俺はもちろん賛成だ。それで、案というのは?」


『2ペアで動く。これだ』




は、はぁ。



え?



『lucus、詳しく聞かせて』


『ああ、敵は当然のように俺らには近づかない。

けれど、分散したらどうだ?嫌でも近づくことになるんじゃないか?』


「まあ、確かに。ただその代わりに2vs4という不利場面で常に戦わないといけないのか」


リスクは凄く大きい。

でも、このままキルポイントが稼げずに順位も中途半端だともっときついかもしれない。


「順位伸ばすのを優先に動くくらいなら、ありかもな。」


『ですね。ペアはデュオのタッグで行きますか』


『よし、決まり!頑張ろ~!!』


というわけで、いったんlucus&wart、そしてendm&俺


この2ペアで分かれることにした。

ミスってもまだ1試合残ってるし最悪どうにかするからいいだろう。


そもそも、自然とミスる気配がなかった。

これは仲間を信頼しているからなのかな。


大会でやる作戦ではないもののの、このまま暇を持て余すよりは全然マシだ。


「endm、いっちょがんばるか~!」


『私も頑張ります~!行きましょ』


endmと俺は別方向に走り出した。







先に結果から言おう。



この作戦はめっちゃ刺さった。



お互いデュオ大会のコンビということで相性は言うまでもなく抜群だった。


『あそこに、敵が居ます』


「よし行こう」


順位優先という言葉はどこに行ったのか……と言ってもちゃんと頭には入っている。

ただ、もう1ペアが生きているという余裕が生まれ戦闘に突っ走れるのだ。


特にendmとblancはどちらかと言えば2人もアタッカー型。

ここでキルポイントもおおまか稼いでおきたい。





「こっちはスナイパーで1人倒した。どうだ?行けるか?」


『今詰めてます!1人は倒しました。残り2人は少し奥側に下がってます!』


「よし、俺もそっち行く。」


wartとlucusがどんな感じで立ちまわっているかは残念ながら見れない。

だが、一方俺らは戦闘狂。


もはや2人ということすらも忘れて見えた敵を片っ端から倒すのだ。




「え、まじかよ」


最後のパーティはあっちのペアが終わらせてくれたらしい。

合流するまでに1位になってしまった。

こうなるはずじゃなかったんだけどな…、まあ結果オーライってやつか。




「うい~そっちはどうだった」


『もう順調すぎてやばい。でもそっちもやばくない?キルポイントどんどん入ってきたんだけど』


『割と結構倒した気がします』


『まあなんとかなったから良いだろう。一応3試合目の作戦も考えたから聞いてくれるか?』



『もちろん~!』


『じゃ、説明するぞ…』



まだ3試合目が残っている。

2位以下にとっては、1位を奪い返すチャンスでもある。

けれど、もはや俺たちの流れを止められるものなどいなかった。


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【後書き】

U-24杯っていうものがあるんですけれど、参加作品多すぎる。

しかも皆面白くてすげぇ。


もっと面白い作品作れるようになりたい。

これが今の目標です。

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