第184話 マナとオフ(2回目)

「2回目か、ここに来るのも…」


俺の目の前に建っているのは、何を隠そう光マナの家だった。

一度ここに来たとはいえ、もう一度見るとやっぱり大きいな。


しかも今回は俺しかいない。

緊張するな~とか思いつつ、家に入る。

というのも、今回は駅からお手伝いさんが来るまで迎えに来てくれたのだ。


「本当にありがとうございます。わざわざ」


「いえ、マナ様のご志望でしたので。それにわたくしも白海ネスイ様をよく拝見させてもらいまして、凄く面白い方だなと思いました。こうして会えて光栄です。」


なんでこんなに返しがうまいんだ!

しかも言葉遣いも乱れない。

うちの厄介幼馴染の教育とかしてくれませんかね~。


どうでも良いことを思いつつ、前に続く。

前見た時とは季節が違うため、庭に生える植物もまた異なっていた。

ただ綺麗ということには変わりなく、中心にある噴水は相変わらず凄く良い。


「こちらにどうぞ」


前入った建物とはまた違う。

入った先には長い廊下。

左右に多様な部屋が待ち構えていて、洋風の作り。


「ここがマナ様のお部屋です。」


とドアをノックして、彼女を確認した。

するとドアの向こう側から元気な声が聞こえてくる。


そして1秒も経たぬ間に、あっちからドアが開いた。


「ネスイ!ようこそ!!!」


黄色がかった大人の美女。

やはり前見た時と全然変わってない。


「では、わたくしはこの辺で」


とお手伝いさんが去っていった。

もちろんお礼の言葉は述べさせてもらった。


「というわけで、会場に行きますか~!」


「あれ、ここじゃないんだ」


てっきり連れられたからにはこの部屋でやるのかと。


「違う違う、私が呼んだだけでここじゃないよ~」


マナはそう言うと廊下を歩き出した。

俺も後に続いて歩き出す。


「さっきの部屋は私の配信部屋その1ね」


「その1?」


「他の人とやるときとかは別の部屋でやるんだ~。やっぱり清潔感は大事だからね」


な、なるほど。

やっぱお金持ちって考え方が違うのかな。

部屋が何個もあるっていいな。


「はい、ここが今回の会場~!」


両開きのドアをがっと開けて、中を見るとホテルの広間みたいに綺麗だった。

上にはシャンデリア、下にはカーペット。

そして壁の方には大量のダンボール。

これが今回の配信の主役だ。


「さて~手元どうする?私が出そうか?」


正直出してもいいかなとは思ったけれど、やっぱり慣れてる人にやってほしい。


「頼む」


「おっけ~じゃ、私がこっちの席貰うね」


ちゃんとマナの席には手元用のカメラがセットされている。

彼女は今回Vの皮被らないのかな。


「ちなみにプレゼント開封ごとにその人から通話来るかも」


「あー了解です」


さらっと流したけどこの大量のプレゼント1つ1つに電話来るってこと!?

いや、まあHESKALってたくさんいるらしいけどそれでもって量じゃない?


「ネスイは本当に愛されてるねぇ」


「いや、本当にありがたい限りですよ」


まさかここまでしてもらえるとは流石に俺も感謝が溢れる。

VTuberやってきて楽しいづくしで幸せだ。

これからも頑張らないと。


「そういやネスイって次の目標決まってたりするの?」


機材の確認とかをしながらそんなことを聞いてきた。


「いや、まあそうですね…もっと色んな人に楽しんでもらえるように出来たらっとかですかね」


ちょっとありきたりすぎたかな。

でも現に登録者数というよりは、どれだけの人を楽しませられるかに焦点を置いてる。

だから間違いではないし、本心ではある。


「いいね~、他の人なら登録者数100万人とか言うからネスイもそうするのかと思ったけど、流石。新星は違うね」


「いやいや、そんなことないですよ。ちなみにマナは何か目標はあるんですか?」


ずばり聞いてみた。

HESKAL筆頭のエース、光マナ。

VTuber四天王の1人として未だその名を轟かせている。

でも、今の彼女の目標とかあんまり聞いたことない。


「そうだね~あんまり言って来なかったんだけどネスイなら言っちゃうか」


「HESKALをドームで埋めたい!大きいドーム会場で、みんなが歌ったりして楽しんでるの!」


「いいなぁそれ。でもまだやったことないんだ」


別にHESKALとかいう大企業ならもうしてそうだと思ったんだが。


「いやあるけど違うの、みんなでやるの!4期生も4.5期生も合わせて皆で!

その方が楽しい!絶対に!」


マナは目を輝かせていた。

自分の事を夢にするんじゃなく、周りの事も考えている。

エース以前に、彼女自身のやさしさというものが出ている気がするな。


「凄く良いですね…やってみたいです」


「でしょ~!だから皆もっと歌配信とかしてほしいのになぁ」


あっ


いや、まあうん。

歌声にあんまり自信がない。

それに歌配信って緊張するんだよな。


「ちょっと俺もやるか考えてみます」


「まじ!?やったあ」


まあ本当にやるかは分からないけどな。

ところで、ふと思ったことを聞いてみた。


「そういやVTuber四天王ってあるじゃないですか。他ってHESKALのメンバーっているんですか?」


「いや居ないよ~、確か1人がArkenで、あと2人は別企業だっけな、個人勢だっけな。忘れちゃった。」


「Arkenとは一度だけ絡ませてもらったんですけど凄い楽しかったです。」


「分かる!私あの企業も大好きなんだ!だからHESKALとArkenはもっとコラボして遊んだ方が良いよ絶対!」


これはアドバイスとして受け取っとく…か?

まあエースが言うことだし受け取っても損はないだろ。


そうこうしてるうちに二つとも機材確認が終わったらしい。


「じゃ、私の画面で配信でやるけど、ネスイはVTuberとして登場で良い?」


「はい!やりましょう」


「おっけ~頑張ろうね」


異例のゲリラでオフ配信。

これが出来るのはHESKALだけ、そう確信したのだった。


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【後書き】

次配信回!

ここら辺は自分で書いてて楽しい~!


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