第151話 何度目のHESKAL社?
「どう?」
いや、どうと言われても。
と夜音に聞き返したかったのをグッと抑える。
彼女は不服そうにまた、着替えに俺の部屋に戻る。
そもそも俺の家でなんで着替えるの?
まあいいや、今回俺は夜音に連れられてHESKAL社に向かう予定となった。
というのも、プリームは今年で周年らしい。
何周年かは知らないが多分2周年くらいだろうか。
いや、流石にもっとあるか?
まあそんなことはあとから聞けばいい。
なんで彼女の誕生祭に俺も招かれてるか。
踊るらしい。
俺も聞いたとき耳を疑ったが、プリームはこれでも結構なHESKALトップの人気VTuberだ。
登録者数も400万見えてるとか。
ということで、3D配信で彼女は歌枠を開けるらしい。
で、俺と、あと厳密にはもう一人いるらしい。
この3人で色々踊ったり歌ったりするとか。
なんで呼ばれんだろう。
「これどう!?」
彼女が自信満々に部屋から出てくる
「大体、俺らVTuberは服装気にしなくていいだろ」
「いや、そうだけどさぁ」
女子高校生ってよくわからんな。
「まあ、これでいいか!行こ!」
彼女はちゃっかり荷物をこっちに持ってきていた。
もはやお前の家には何があるんだろ。
「もうこんな時期かぁ早いな」
まあ確かにそうだなとは思う、
俺も少しずつ1周年が近づいていることに驚きを隠せない。
「あれ、海斗って踊れる?」
「無理」
行けたらそれこそ、俺も3D配信で踊る。
運動神経が悪いか?と言われたら違うが、全然良いわけではなく、きれいに踊れない。
「まあそうだろうね。ちゃんとダンスレッスンあるから!」
「あ~もう俺やる前提なのね」
別に良いけど。
どうせ岩佐さんが手配してくれているから、スケジュールなんで被らんだろ。
電車に揺られて数十分、
俺らが住んでいた2,3倍大きな都会に到着する。
「さあて行きますかぁ」
何回来てもあこがれる賑わいだ。
建物の屋上に置かれている看板にはいろんな広告が流れている。
あそこに俺が入れる日が来るかな
「海斗!こっち!」
「あ~ごめん」
看板に気を取られて忘れていた。
「やっぱ何回見ても広いなぁ」
複合ビルとはいえ、HESKALも割と多くを占めている。
そのうち、いつもと同じ階を選び、本社までたどり着く。
エレベーターの先で待ってくれていたのは岩佐さんだ。
「やあ、お二人ともお久しぶり!」
「岩佐さーん!会いたかった~」
二人の愛情的ハグを横目にしつつ、俺はもう一人の人を見た。
誰だろう。
「ネスイも会えてよかった!」
「いや遠慮しときます」
流石に高校生にもなって、成人女性に抱き着くほど馬鹿な人間ではない。
ちゃんとわきまえはある。
「ところであいつは?」
「噂をしてたら来たよ」
岩佐さんが指を指した方向からエレベーターのドアが開いた。
「春陽!?」
「あれ!?ネスイ!?」
お互い来るのは知らなかった。
もう一人って春陽だったんだ。
じゃあさっきから横に立っている人は春陽のマネージャーさんか。
凄い納得した。
「あれ、ネスイもプリームに呼ばれた?」
「ああ」
俺と春陽はお互い何をするんだろう?と目を合わせた。
それを見た、プリームが
「ふっ、二人ともありがと!説明聴きに行こ!」
と会議室に歩き出した。
そうですね、と岩佐さんも続き、春陽のマネージャーも続く。
俺も春陽も流石についていくしかない。
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「本当に踊るんだ……」
春陽がぼそっと横でつぶやいた。
俺もおんなじ気持ちだ。
しかも結構ちゃんと踊る。
「そのために2か月空いてるのか」
やけに早いなと思った。
HESKALにはダンスを教えるサポーターさんもいるらしい。
だからその人に基本的に教えてもらうのか。
「こんな感じ、行けそう?」
岩佐さんの話は終わった。
「まあ私は頑張る!」
「プリームが言うなら頑張るよ?私も!」
二人ともやる気満々。
じゃあやるしかないか。
「俺も頑張るわ」
「決まりね、さっそくダンス教えてもらいに行くか」
俺らは岩佐さんに連れられて、ダンスホール?練習のところに行った。
まさか同ビルでこんなに練習できるとは。
まだまだなんかありそうだな。
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「こんにちは、私はダンスサポーターの雅です。よろしくね」
「あ、よろしくお願いします」
雅さんが教えてくれるらしい。
本当にダンスを経験していたんだろう。
スタイルがバツグンすぎる。
「さてさて、皆は踊ったことある?」
「私は誕生祭で踊った!」
と春陽。
「私も一度やったことある!」
と夜音。
「え?二人とも経験者なの!?」
と俺。
だいぶやばくね……。
2か月でどれだけ追い付けるのか……。
「頑張ろ……」
誰にも小さな声でそう言った。
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