第149話 ネスイの求めた相談相手
《blancとネスイって同一人物よね?》
『お~いblanc』
「ん?あ、ごめん」
しっかり通話しているのを忘れてしまっていた。
なにしろこんな文が届いてきたんだ。
固まるのも当然だ。
『大丈夫か~?』
wartも心配してくれている。
endmも何か不思議そうに心配してくれているのは嬉しいが、それどころではなかった。
「ごめん。通話抜ける!」
流石にまずいと思って、通話を抜ける。
とりあえず、返答をどうしようか。
このまま、はいそうです。
それか、いや、違います。
この2つの選択肢は結構頭を悩ませる。
割と、相談が効く相手に聞こう。
「あ、すみません。今大丈夫ですか?」
『ん?あ~大丈夫よ~』
俺が電話を掛けた相手はイーサさん。
俺と夜音のマネージャーであり、絵師&VTuber。
そして俺のことをよく知っている方だった。
「すみません。少し悩みがありまして、聞いてもらっていいですか?」
『良いですよ~』
と俺は今来たメールの件。その前にしていた配信の話などを入れた。
「というわけです。」
『なるほど~声で勘づかれて、バレたんだろうね……。』
「そうなのかな」
『そうだね…一旦ゲームでもしながら考えない?』
このタイミングで?
と思ったが、イーサさんこと岩佐さんは何か考えがあるに違いなかった。
それは俺でもわかるリードだった。
「岩佐さん、ゲーム出来るんですか?」
『ふふ、イーサでいいよ。ゲームは最低限だけね。』
「どんなゲームするんですか?」
『そうね~』
一瞬間が生まれた。
ただ思い出せないだけなのか、俺に対する配慮なのか。
それは分からない。
『FPSもやるけど、最近は村を発展させる系のゲームかな~』
「あ~良いですねそれ。俺もやりますよ」
特にマルチプレイ対応ではないのだが、二人で同じゲームをしているというのは結構楽しくて、言葉では表せない感動が付いていた。
『結構楽しいよ~。ネスイ戦闘系好きだろうけどたぶんこういうゲームも好きなんじゃないかな』
案外彼女は俺の事を見てくれているかもしれない。
配信もチェックしてくれているようで、たまに反省点や良かったところが送られてくる。
「で、どうしましょう」
こんな村つくりに気を取られていて本来の目的を見失うところだった。
『そうだね……うーん』
「HESKAL側としてはどうしてほしいとかあるんですか?」
『いや無いね~。基本そういうのは自由だし』
案外びっくりだ。
まあ最近はそういう企業も増えているのか。
『ネスイはこの先本気でプロゲーマー復帰したいの?』
「それは、そうです」
一瞬本当に良いのか?と頭がよぎったが、こんなところで戸惑ったらだめだろう。
『でも、半年まともにやってないんじゃない?』
「それは…まあそうですね」
かなりの正論だ。
実際最近wartとやった時、前通りにはいかなかった。
それほど周りは上達し、俺は落ちぶれた。
『だから発表はもう少し先でも良いと思うんだ』
「というと?」
『プロゲーマー復帰するって言って大会本戦出れなかったら本末転倒じゃない?』
確かに。
いくら世界王者が復帰しようとも、大会はしっかり予選を勝ち抜けなければならない。
ここで敗退する危険すらもある。
プロゲーマー復帰すると言って、大会本戦に出場できないとなると、結構ダサいし、世間の評判も悪い。
「なるほど…」
岩佐さんはこう見えて数倍先の未来が見えている。
だからこそ、『白海ネスイ』というキャラが生まれるまでのスピードが速かった。
絶対に伸びるという未来が見えていたのかもしれない。
『でも、どうせいつかはバレるんだよ?この調子じゃ』
「それは、そうですね」
現に、春陽にはすぐにばれた。
オフコラボした終わりに、キッチンを見て、住所を見てバレてしまった。
みなには声でバレた。
大丈夫だろうとか思って油断していた矢先だった。
「返答は…正直に言います」
『お~なんで?』
「いづれ発表するなら下地を作っておきたいです。」
視聴者ならまだもう少し待ってもいいかもしれない。
けれどVTuberにはバレたところでそこまでしんどい問題にはならないだろう。
むしろ協力的になってくれるんじゃないか?
『良いんじゃない?』
「そうですか!」
『私は良いと思うよ、ちゃんと考えもまとまっているし。ネスイはちゃんとしてて楽だな』
「逆に楽じゃない人とかって……あっ」
『あの子はまあまあしんどいよ~でもまだ楽。
あと一人請け負ってるんだけどね~これ内緒ね』
イーサさんもう一人請け負ってるんだ。
それで絵師もやってVTuberもやって。
凄いな……。
『まあいずれコラボさせるよ』
「え?まあはい…、」
『悩みは晴れた?』
30分くらい色んな世間話をしていた。
絵師である彼女の時間を奪うのも申し訳ないかなと思い、引き上げだ。
「はい!ありがとうございます!」
『いいよいいよ。それがマネージャーだからね。』
「はい」
ここまで頼もしいマネージャーが居るという環境が嬉しい。
また気軽に相談するかもな……。
そう思って通話を抜けようかなと思っていると、
『あ~そうだ!忘れてた!』
「どうしたんですか?」
彼女がいきなり大きい声を出したのでびっくりした。
『良いでしょ~ネスイの新衣装』
画面の前に映し出された綺麗な男の絵に、俺は口が止まった。
今までの銃を構えた白いキャラ、というモチーフも好きだった。
しかし今回のはまた違う良さがある。
配信でスナイパーを使い過ぎたせいか、後ろにスナイパーを背負い、
前回からの俺の絵は残しつつ、白黒で表現された服に感動が止まらない。
服を半分に分けて、白黒で描くだけでこんなにも変わるのか……。
「凄すぎます……」
イーサさんって凄すぎるな。
そう改めて思ったのだった。
俺はみなに返事を送った。
〈そうだよ〉
すると、返ってきた返事は一言。
《大会頑張れ!》
この一言でだいぶモチベが上がった。
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