第148話 ダブル聖魔ってなんですか

「ゴーレムかぁ」


このゲームで言うゴーレムは、しっかりと近衛型のボスだった。

だからこそ、魔法攻撃というよりは、近接で正面からダメージを入れないとHPは削られない。


『いやぁこれは面白いね』


「?」


ーめっちゃ熱くなってて草

ー面白いというより絶望

ーだいぶきつい

ーアタッカーじゃないやんこれ

ーダブル聖魔草


『これどうしよっかぁ』


「まじでどうするんだよこれww」


聖魔とかいうヒーラーキャラでゴーレムはだいぶきつい。

さっきの雑魚敵でさえ苦戦するほどなのに行けるのか……?


「そもそも、聖魔ってダメージ全然出せなくね……?」


『そうだね~』


ー分かってんのかよw

ー知ってこれw

ーおいw

ーええて

ー草


聖魔って思ったようにヒーラーなんだなと今感じてる。

あの時のアタッカー聖魔は一体何だったんだというくらい、サポート技しかない。

ダメージを出す技もほとんど治癒量に依存していると言っていいくらいだ。


「まあとりあえず俺がアタッカーで行くか」


『おっけ~私がサポートするねー』


なんとかギリギリ残っている魔法を駆使するしかない。


ーさてさて

ーゴーレムは別に強くないんだけど魔法戦には強い

ーなにこれ

ーダブル聖魔初めて見た

ー普通に勝てるのか?


「じゃいくかぁ」


wartに攻撃力バフなど掛けられる。

そして自分も自分にバフを掛ける。

すると、速度も2倍掛けになり、だいぶ足が速い。


「閃光!お~まあこれくらいか」


ゴーレムの元に光の雨を降らせる。

ざっと10分の1くらい。


ただ、こんな量のバフを掛けまくるとEPもなくなり本末転倒だ。


ーうん

ー微妙

ー出てる方なんだけどね

ー魔法耐性高い

ーゴーレム強いんだよな


『思ったよりきついかぁ』


いや分かってただろうが。

とりあえず行けるところまで行くか。







いや、きつい。

俺たちはEPが尽きるまで閃光をしまくった。

もちろんバフ乗せでやったのだが、これでHP半分。

あと半分をどう削るんだと言わんばかりにゴーレムは立っている。


ゴーレムの攻撃自体は全然避けれる。

速度バフは付いているし、投擲物は避けたらいい。



「問題はダメージ量なんだよなぁ」


ーうん

ーそれ

ー聖魔で戦える奴なんてせいぜいあいつくらい

ー聖魔アタッカーなぁ

ーあんま見ない。

ー中途半端だとメンバーに怒られるだけ


ー白井みな/やりましょうか?


ーあ

ーきた

ー本人wwwwwwww

ー来ちゃったwwww

ーおいw

ーみな居て草

ーまじで居たのかよ


『え?ほんとだ!みなさん居る!!』


wartの声を聴き、コメント欄を見ると、


「あ、ほんとだ。」


白井みな…そっかこの垢ではコラボしたことないか。

まあそりゃそうだな。


「あ、えっと…やりますか?」


『やろやろ!!!』


ー白井みな/了解です!DM送りまーす


『やった!』


いや無理だろとか思ったんだが行けるのかい。

VTuberそんなに厳しくない……?

いやArkenとHESKALだけだなうん。



しばらくするとwartの方にDMが来たみたいで、通話にも参加した。


『あ、声入ってる?』


『入ってるよ~』


『おっけ!やあやあ皆!Arken所属1期生の白井みなだ!よろしくな』


ー来てしまった…

ーがちの変態魔王

ー聖魔最強は結構こいつで確定

ーバカ強いんだよなぁ

ーえぐいやつきた。


「あ、えっと。白井みなさん。こんにちは!」


『ん?まあよろしくな!』


若干の違和感を抱えたらしい。

これは今すぐにでもネスイってバレそうだな。


『パーティ呼んだよ~』


『了解っ!とりあえず魅せますかぁ』


「アタッカー聖魔って言うやつか」


もちろん知っている。

けれど、大体本気で戦っているときなので、強いのか実感がわきにくい。

ただ彼女のプレイだけを見るのは初めてかもしれない。


「じゃあ、行きます」




まず雑魚敵の処理スピードが違う。

俺は一体一体を攻撃しないといけなかった。

けれど、彼女は範囲内の敵を一掃してくれる。


『エンプティバスケット』


彼女がそう唱えると、すぐさま範囲内の敵は跡形も無くやられていく。

魔法使いより魔法使いなんじゃないか?


ーなにこれ

ー????????

ー聖魔ってなに

ーこれが聖魔かぁ()

ーこんなん野良に居たら引く

ーえぐい


「もうゴーレム戦かよ」


さっきの苦戦なんて無かったかのようなスピードで最深部にたどり着く。


『バフだけ掛けてっ、私が魅せてあげる』


『りょうかーい』


「分かりました」


ゴーレムとの戦いが始まった。

俺とwartは出来るだけ邪魔にならないように、後ろに下がっておく。

もちろんバフは掛けておく。



『見ててっ。ハーベストルイン!』



彼女は天使のように高く舞い、そして杖を上に掲げた。


いつの間にかゴーレムの姿はなく、代わりに大きな遺跡が広がっている。



『えい!』


ー?

ーは?

ーわんぱん!?!?!?

ー何が起こった

ーはい?



画面の前の俺もwartも驚愕で何も言えない。

さっきまであんだけ苦戦していたゴーレムが目の前でわんぱんされた衝撃だった。


『みなの聖魔なんか違うくね?』


『えへへ』


「まあ控えめに言っておかしいわなこれ」


『ちょっとだけなんかやるかぁ』




この後みなの聖魔を見て、視聴者も俺らも驚きを隠せなかった。



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ゲリラ配信だからと、まあ大体キリが良いタイミングで終わった。


『あ、終わったんですか』


『AFGどうだった?』


『えっとね、みなが化け物だった!』


「まあそれはそう」


と、白い流星のボイスへ戻ってきた。

いまだ勉強しているendmと、定期的に動画を投稿するlucusに頭が上がらない。


と思って、のんびりと会話に参加していると

1つのメール着信が来た。


しかもVTuber用。

相手は白井みなだった。


嫌な予感がする。



《blancとネスイって同一人物よね?》



急すぎて返答に困った。

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