第136話 latent kingdom


みなと俺が進んだ先には一つの宮殿があった。

西洋にある白いもの、ではなくどちらかと言えば魔王城に近いという印象だった。


『ここに居るのかな?』


実際彼女も俺も敵の位置を把握していない。

だからその場で探さないといけない。


「宮殿の中入れそうだよ」


宮殿のドアには侵入可能マークが付いていた。

それを押すと中に入れるようで、俺は中に入ってみた。


「結構広いな」


外からだと奥行きが見えなかったのだが、入って見た感じ結構広そうではある。


『お~すげえ』


彼女も後に続いて入り、周りをぐるりと見渡している。

確かにグラフィックなども1流だ。流石AFGというべきか。


『こっち行ってみようぜ』


彼女は上に続く階段を指さして、先に登って行った。

俺だけ残されたところで勝てないので付いていく。



螺旋階段状になったそれを駆け上がると、先には一本の長い通路があった。


『この先かな…』


とゆっくりと進んでいく。

壁に掛かっている絵画には何か意味があるのだろうか。

みなは凄く面白そうに見ているし、コメント欄も凄く騒いでいる。


この際だからストーリーも今度見ておこうかなと思うくらいには、今ここで感動を味わえない悲しさがあった。


「ここか……」


なんやかんやしているうちに廊下の端にたどり着いた。

一筋の光はここから指していたのだろう。

ドアらしきものが光で覆われている。


[本当の戦いに挑みますか?]


と一つの通知が飛び交った。


「本当の戦いに挑みますか、だって」


『もちろん!やってやろうぜ!』


まあもちろんそうするよなと思い受諾する。


突然光が少しずつ消え、見えにくかったドアが徐々に表れていく。


「さて、行くか」


ドアを開くと、そこは荒れ果てた地、ビルが崩壊し、何も原型すら残っていない。

俺らがいつもスタートするときの背景の街にそっくりだなと思ったが、エアプが考察なんかしても炎上しそうだからやめておいた。


ひなは何も言わず、若干何かを考えたような感じがした。





空には雨雲がかかっている。

今からの絶望を表すように、それは急にやってきた。


《そなたが新たにこの街latentへ歩んだ者なのか》


《我が姿を前に持ちて何を想う。それは絶望か?それとも希望か?》


《何を持つとしてもこの先に絶望しかない。これは運命で決まっているのだ。》


《諦めて降参せよ。さもなくば一生分の辛い嵐がお前らを襲うことになろうぞ。》



「かっけぇ」


ーかっこよすぎる

ー何だこのキャラ!?

ーやべえかっこよすぎる

ーこれは推せる

ーグッズ来たら即買いだわ

ー声も良すぎる

ーキャラ、性格、声、満点ですこれ


神威戦に引き続き、やはり敵は女性だった。

けれど、今回はまた雰囲気が違う。


耳に掛からないほどの少し長い白髪、そして赤い眼。

紳士服のような白い雰囲気をまとった少女だ。

だが、何よりも、彼女の右手に持つ刀に目が注目した。

今にでも切り刻もうとせん赤い刃、そして彼女の赤いオーラでより刃が目立っている。



『かっこよすぎるぜ…こいつと戦うのか俺らは』


「ああもちろんだ。」


お互い目を合わせた。

無言で頷くと、何か伝わった気がした。

そしてそのまま少女を向く。


(倒してやろう。俺が)


この気持ちで今は胸がいっぱいだった。




《我らの娘神威を殺した罪。お前らは死に値する。》




少女は刃を俺に突きつけた。

そして同時に赤い閃光がどんどん彼女の周りに集まってくる。



《さあ、世界の崩壊を見届けるがよい》




戦いが始まった。


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まずは、様子見だ。

最初っから攻撃に適応するなんてプロでも難しいだろう。

みなもそのつもりなのか少し下がっている。


《閃光よ、我が胸から解き放て》


少女の威圧ある声とともに、いくつかの赤い閃光がこちらに向かってくる。

見た感じ、落下地点は固定の用で、さらっと避ける。


だが威力はバケモンらしい。

それは突き刺さった床を見れば一目瞭然というほどだった。


「ちょっと攻めてみます!」


『おっけ~サポートしとく!』


彼女の加護を受けつつ、一直線に少女の方へ向かった。

だが、少女は何食わぬ顔でこちらを見ていた。


《閃光、加護ありけり》


彼女の周りには急に赤い閃光が飛び出る。そしてそれは形付けていた。

ギリギリで止まれたから良いが、これじゃ近づけない。


「どうしましょうこれ」


『上からダメージ与えてみるよ』


アタッカー型聖魔は飛び上がって、上から魔力弾をいくつか放つ。


『へ?全然効かないんだけど!?』


「まじか」


今回ももしかして避けるゲーなのか?と思ったが、まだわからない。

というか避けれる技が来てくれるのか?




《絶望を与えよう》



おもむろに少女は必殺モーションに入った。

少し発動時間があるようで、俺とみなは少し下がる。



《絶望を知るがいい》



このセリフでHPはすべて吹き飛んだ。

本来俺の2倍のHPがあるはずの聖魔ですら吹き飛んでいた。


つまりこの必殺1つで俺たちは即デスしてしまったのだ。


「嘘だろ……?」


『流石にやばいっすねこれ』


ー???????

ーなんだあれ

ー攻撃範囲どうなってんの

ーほぼ全範囲じゃね?

ー一応避けれるらしい

ー避けれんの!?


どうしたものか……。


ちょっと攻略の手が弾みだした。


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