第132話 ただいま………?

ピコン


通話チャットに入ってくる1人のプレイヤー、それが俺だった。


『え!?blanc!?』


と最初に声を上げたのがwartだった。


lucusはそろそろ来るだろうと分かっていたのかそこまで驚かず、

endmはやはり驚くまでは行かなかったものの、少し声は出ていた。


『blanc、久しぶりですね』


endmの優しい声が聞こえてきて、白い流星に戻ってきたんだなという感情が湧き上がった。


「ただいま」


『おかえり、blanc』


『blanc急に戻ってきたね!』


wartとendmにはそろそろ戻るという情報は言っていなかった。

lucusにしか言っていなかったため、わんちゃん2人に伝えているのかと思ったが、

二人の反応から見てそうではなさそうだ。


「急にやりたくなったからね」


もちろん例の件は内密にしておく。

あんなの話したところで混乱の元にしかならないだろう。


『やりますかぁ…』


3人はさっきまでやっていたようなので俺待ちだった。


俺がオンラインになるとパーティへの招待が届くので受諾する。



すると最初に聞いたのはあれぇというwartの声だった。


『ランク低くね………?』


「あー最近忙しくて」


『忙しいにしてはランクが高い気がしますけどね』


というendmの失笑も合わせて聞こえてきた。


「もしかして実力落ちたからそのランクで沼っているとかってわけじゃないよ?」


誤解でもされてんのかと思ったので一応正しておこう。

といっても、今は最高ランクのレジェンド帯、そしてそのtop層にたどりつく自信はない。


せいぜい、レジェンド帯行けて良いかなくらいしかないだろう。


「まあ全盛期よりは弱いから練習頑張るよ」


『練習?』


wartは俺の言葉に疑問を持ったようだった。


「あ~大会また目指そうかなって」


『え!?』


驚きの声はwartから…ではなくendmから聞こえた。


『本当ですか!?』


「うん。まあ頑張ってくよ」


 やったあやったあと裏で喜ぶendmを無視しつつ、lucusに


「ちょっと下手だけど許して」


とだけチャットで伝えた。

軽く、okとだけ帰ってきたが、まあ彼なら大丈夫だろう。


『さてさて~』


とwartが言ったことにはもうマッチが始まりかけていた。


『あ、そういえば~』


『今endmの世界順位がtop5あたりだからそこに合わせられてるよ~』


「え?」


開幕マッチからtop層のランクマに入れられる俺の身にもなってほしいがまあ仕方ないか。


「まあいいか」


考えても仕方ない。

ちょっと強くなっただけと思いつつ、マッチ開始する。




速攻街降りになったが、やはり敵は何人か居る。

とりあえず武器を拾うと、降下中の敵を狙い落すところから戦いは始まっているのだ。


『一人やった』


endmの安定のエイム力で人数有利が生まれる。

相変わらずの変わらない立ち回りかもしれない。


初動で人数有利を取っているからこそ冷静に動く。


「ここ敵居るかも」


若干足音が聞こえてきた。

他のメンバーを待つのもありだが、他3人はまだ武器が揃って無さそうだった。


シールドも付いて、ショットガンとサブマシンガンを持った俺しか攻めれないかも。


『あとから行くから先行ってて』


というlucusの指示の元、攻めに行く。


俺が動き出すと敵も動き出す。

足音的に、俺から離れようとしているのだろうか。


相手はまだ武器とかが揃っていなくて好都合だ。


「こっちもやれたよ」


初動ということもあって難なく倒せた。


あと敵2人は、他のメンバー3人で潰してくれたようで即キルになった。



『ナイス~』


とりあえず敵が居なくなった街を漁ると、索敵が始まる。


普通は、中盤よりも終盤キルの方がポイントが高いので中盤は生き残る方を優先するチームが多い。

中盤にキル稼ぎに行っても、死ぬリスクもあるので難しいのだ。


けれど白い流星は違う。

どのタイミングでもキルを狙うチームとして界隈に知られているのだ。


『ここの地下に足音聞こえる』


とwartの化け物みたいな索敵能力に驚きつつも全員で向かう。

endmのエイム力で一掃しつつ、俺が後ろから援護射撃をする。


正直これだけでも1パーティを壊滅出来てしまうのだが、これに加えてどこに敵が隠れようとも見つけてしまうスキャナー的存在のwart、

判断能力に長けているlucusが付いているのだ。


これが白い流星のえげつないポイントかもしれない。




「俺、前行くわ」



と4人の前を走る。


『そこの壁に居る!』


とwartが叫んだ時、敵1人がアサルトライフルで撃ってきた。


流石に危ないとは思ったものの、俺の反射神経は鋭く働いてくれたようで、弾を避け続ける。


敵は常に撃ち続けるが、リロード無しのこの避ける技には勝てないのか一旦壁に下がった。


その瞬間後ろで待っていたendm達が一斉に詰めてくれる。


『ナイス!大体敵の位置が分かったよ』


この時間稼ぎだけで、敵の位置が分かるwartが凄い恐ろしいのだが、

彼女曰く、俺と戦っている敵は孤立しているらしい。

他3人はまだ地上に居るとか。


今が攻め時ということでendmが突っ込んでいく。


彼女のエイム力に勝る人なんかなかなかいないもので、敵はあっさりとやられる。


『敵が降りてきたよ!』


若干の足音が聞こえたため俺でもわかった。


『blanc時間稼げる?』


lucusの質問に対して俺はもちろんと答えた。


敵からの攻撃を避ける戦いが始まった。

1人はスナイパー、1人はアサルトライフルといったところだ。

もう1人は見当たらないので何をしているか分からない。



と思っていると


『横!』


lucusの声と同時に横を向くと、先ほど見えなかった敵が真横までに迫っていた。

ショットガンを構えていて、今にでもやってやるとでも言うようだった。


「ごめ…」


と言おうとしたところで目の前でダウンになった。


『抜いたよ!』


『俺も抜いた』


wartは俺の横の敵を抜いてくれたようだ。

そしてその隙にスナイパーで抜こうとしていた敵をlucusが抜いた。


そして残った1人はendmが急速に詰めたことで難なくやられる。




「お~すげえ」


全くキルが取れない俺は顔が上がらない。


『blancもやっぱ安定してんねそれ』


「まあな」


wartに照れくささを感じていると、


『blancさんのそれは唯一無二ですよね。結局弾が当たらないと不死身ですし』


まあ確かにこれは一種のアイデンティティかもしれない。

誰かにこの役割担ってほしいとは思わない。


というか俺が1年間近く練習してようやく身につけたものであり、簡単には習得できないだろう。


この俺だけの技でどこまでtop層と戦えるのか、

そう思う疑問は日に日に強くなっていった。









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