第130話 歌い手観察
「最後に来たのは3D配信の時だっけ?」
今、大きなビルの前に立っていた。
HESKALもこの中に含まれている。
俺はそこに用があった。
「やっぱ何度みても大きいな」
そう言いながら、中に入っていく。
「あ、ネスイ!」
と横から声を掛けられた。
「あ、岩佐さん。」
今回俺は、岩佐さんに会いに来た。
というのもあの件を伝えるためだった。
「とりあえず、上に上がりましょか」
HESKALはこのビルの上の方にある。
スタジオなどもあるので、いくつかの階に分かれていたりする。
そのうちの会議室にお邪魔させていただく。
「じゃあ、早速本題だけど、」
「あ、えっと、1つ話したいことがあるっていうことでしたよね」
「そうだね。ちなみにそれはやばいこと?」
岩佐さんは神妙な顔つきでそう聞いてきた。
「いや、岩佐さんの想像しているやばいこととかではないです。けれどVTuber活動に支障をきたす可能性はあります。」
俺は正直に話した。
「聞こうじゃないか」
岩佐さんは腕を組み、俺の方をじっと見つめる。
その期待に応えられるように口を開いた。
「えっと…実は自分、他界隈でもちょっとだけ有名でして」
ここで謙遜しようと思ったが話の論点がずれる気がした。
だからこのまま続けさせてもらう。
「それで、その界隈にまた復帰したくなって」
「ほう。」
岩佐さんは理解したような感じだった。
「VTuber活動は続けるの?」
「あ、はい!それはもちろん…ただ、」
「ただ?」
「その界隈では名前が違うくて、そろそろ同一人物とさせとかないと後々ややこしいかなって」
「あ~ネスイはどうしたいの?」
「視聴者を騙したくは無いので、ちゃんと公表したいです…」
「なるほどね。良いんじゃない?」
「良いんですか?」
「うん。スケジュールくらい組めるよ。心の準備は出来てるんでしょ」
「はい」
岩佐さんは結構若いが、中身は結構な大人だ。
子供の言うことに真摯に向き合い、意図を組んでくれる。
「話はそれだけ?」
「あ、はい」
俺的には結構重要だったのだが、彼女からしたらそうでもないらしい。
というのも、別界隈から降りてきた人とかも結構居るみたいだそうだ。
心配して少し損したかもしれない。
「もう帰るの?」
「まあ、することもないし…」
特に今回は話し合い以外に目的は無かった。
だからもう帰ろうかな~と思っていた。
「この後暇?」
「まあ一応」
「少し上にうたみた専用の部屋あるから見に行かない?」
うたみたというのはいわゆる歌ってみた動画だ。
素晴らしい方たちが作ってくれた曲を、俺たちが歌うというシンプルなものだが、
歌がよくないと、ただ叩かれるという結構勝負に出る動画だ。
「行きます」
おそらく俺とうたみたは全くと言っていいほど縁がない気がするが、一応見に行こうか。
岩佐さんは決まり!と言って荷物を固めた。
彼女に俺は付いていく。
レコーディングスタジオが置かれる階に着くと、少し歌声が聞こえてくる。
うっすらとだが、誰かが歌っているのが分かる。
「ちょっとだけ見に行こうか」
邪魔にならないようそーっと部屋を開ける。
すると、ガラス張りの奥側に一人の少女が歌っているのが見えた。
「誰だろ…」
ちょっと小声でそう呟くと、岩佐さんは少し笑って、
「ネスイはあったことがある人だよ」
と言った。
声はどちらかといえば、中学生より。
なんなら身柄も中学生に寄っている。
「綺麗だな…」
流れるように、というよりかは勢いがある。
その勢いは歌詞に乗って、俺の耳に入ってくる。
なんかうるさいけどきれいな声の人っぽいな…
あ、あの人か……
「清城ひな………?」
俺がボソッとつぶやくと、
「当たり」
と言う岩佐さんの声が聞こえた。
ひな、あんな声が出せるんだ。と思いつつじっと見つめる。
約3分間の録音が終わり、彼女はこっちの方を向いた。
最初は関係者なのかと思われていたみたいに、何もない表情だった。
けれど横に岩佐さんが居ることで、
「あれ、その人誰ですか」
と指を指された。
「あ、えっと。こんにちは、白海ネスイです」
「あ!え!?ネスイ!?」
ガラス張りで謎にテンションの高いひなが映っていた。
黒髪のロングヘア、中学生みたいな小柄な人だ。
「あ、ネスイも一緒に歌おうよ!!!」
「は?何を言って…」
と思い隣を見た。
共感を求める目で見たのだが、岩佐さんは逆だった。
「一回やってみたらどうですか?」
「えぇ」
岩佐さんはそっち側の人間だったようだ。
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【後書き】
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感想も返せていないですけど全部見てます!
少しずつ返していきます!(古いのは返さないかも…)
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