第129話 衝撃の告白、これが始まり
「実は、俺がblancなんだ」
そう言うと、目の前に居た彼女はスプーンを机に置いた。
いや、実際は手から勝手に離れたの方が正しい。
彼女は今何が起きたんだ、という眼差しでずっとこっちを見ている。
「い、いや…その」
やっぱりまだ言うタイミングじゃなかったかと後悔した。
だがもう後には引けない。
「blancってあの?」
「ああ。」
「私が推してる?」
「そうらしいな」
「プロゲーマーの?」
「そうだよ」
「動画配信者の?」
「だからそうだって」
「えええええ」
まるで別の部屋の方にも声が聞こえるかのような大声で彼女はそう言った。
「ごめん。言うタイミングが無かったんだ」
「え?本当に言ってる?海斗がblanc?」
「そうだって………」
「まじかあ」
彼女は衝撃を隠せなかった。
いや、まあここで驚かないのは無理があるかもしれない。
「え、じゃあ私がblanc推してるって言ってる時どう思ってたの」
「ずっと横に居たのになぁと」
「私がコメ欄に居た時は」
「めっちゃ面白かったです」
「ああああああああああ」
「恥ずかしすぎる。まさか海斗だとは思わないよ」
夜音は頬に手を当てて、嘆いていた。
俺はちょっと面白いなと思って様子をじっと見ていた。
すると、ふと彼女は何か気が付いたようだった。
「あ、これドッキリ?」
「は?」
「私を驚かせたいんでしょ。大体配信する場所ないじゃん海斗。」
いや、そう来たか。
流石にそんな返しが来るとは思わなかったな。
「あー部屋見たことないのか」
なんやかんや俺のゲーム部屋に夜音を入れたことは無いのかもしれない。
鍵を掛けていたわけではないが、流石の夜音も無断で入ろうとまでは思わなかったんだろう。
「そこの部屋だけど見るか?」
「え?そこはVTuberの配信部屋じゃないの!?」
「どっちもここでやるんだよ」
ちょっと失笑しつつ俺は立ちあがった。
ご飯中に立ち上がるのはあまりよろしくないが仕方ない。
「見てみるか?」
俺はドアノブに手を当てて、夜音の方を向いた。
彼女はゆっくり立ち上がって、
「見る!」
そう答えた。
俺は、少し重い扉をゆっくりと開けた。
「どうぞ~」
俺からしたら見慣れすぎた光景だが、夜音にとってはどうでもないだろう。
「え、やば」
まるでプロゲーマーの部屋というのを始めて見た感じだ。
といってもこっちに来た時にはすでにプロゲーマーを引退してるんだがな()
「え、すごい。」
俺の部屋に入ってすぐ目に入ったのはやはりゲーミングチェアと大量のモニターだろうか。
まず椅子の目の前にモニターが一つ。
そしてその両端に1つずつ置いてある。
一応机に置いてあるのはそれだけだが、端にまだ封を開けていない新品のモニターが3台置いてある。
これは、HESKALから借りているもので傷つけたくなかったので使っていない。
そして、一応部屋には防音シートを壁に付けてある。
それでも声が漏れると、隣人には迷惑かもしれない。
隣の家が夜音の家じゃなかったらの話だが。
「どうだ?」
「本当にblancなのかも……って思っちゃった。」
「そりゃ本物だからな。」
俺は部屋の中に置いてある、棚を開ける。
そこから包装された、少し大きい箱を取り出す。
「これ開けてみて」
これが、これこそがblancとの証拠として現れたものだ。
「え、本物…まじか」
箱を開けた中には、この世界で俺しかもっていない、記念品が入っていた。
「【world war】で優勝したやつ。まだ飾ったことはないんだけどな」
2度大会に出てどっちもぶっちぎりの優勝だった。
けれど夜音にバレたくなかった。
だから二つとも棚に閉まってあったのだ。
「本物だ………これ」
「だろ?」
「これの8回目の大会でまた奪還するんだよ」
「え?てことは復帰するの?」
「ああ。」
「まじかああ」
少し彼女は驚きつつも、先ほどよりは平常に戻りつつあった。
「頑張って!」
彼女は俺の肩に手をぽんと置いた。
「【world war】一緒にやるか?」
「ご飯食べたらやる!!!」
と言ってリビングに戻って行った。
何はともあれ、なんとかなった。
これでとりあえず身内対策はばっちりか?
あとはいつ配信で言うかだな。
(先マネージャーさんに相談か)
そう思った。
ちなみに夜音は5本先取で5-0でぼこした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます