第118話 back abillity
「ねー、もう海斗はゲームしないの?」
昼下がり、
ちょうど昼ごはんを食べ終わって皿を洗っていた時、そんな事を夜音が言い出した。
「急にどうした?」
皿洗いは止めず、ただなんとなく聞いた。
夜音はうーんという声を出しつつ
「海斗がゲームしてるとこ、あんまり見たこと無かったから」
「あー、言われてみればそうか」
まぁ仮に彼女が配信を見てくれていたとしても、生で見れている感覚はしないのかもな。
大前提として顔を出さないので
手元だけだと表情とか分かりにくいし。
「じゃあ…見る?」
「うん!!」
そう言って彼女は階段で上に上がっていった。
俺もキッチン周りを片付けると彼女を追いかける。
自分の部屋に入ると、夜音が椅子に座っていた。
「楽しみ~」
そう言って目を若干キラキラさせている。
「まぁやるか」
VR機器は無いけど良いパフォーマンス出せるかな?という不安もありつつ、モニターを付ける。
ゲームを起動して、キーボード、マウスも順番に付けていく。
「さて、やるか」
ランクのマッチングを始める。
「あれ?」
夜音は横で何か不信感がわいたのか、そういう声を出した。
「どした?」
「ランク低くない?」
「あー」
しっかり見られてた。
わんちゃん誤魔化せないかなとか思ったけれどそうは行かないみたいだ。
「なんで?」
夜音はじーっと俺の方を向く。
まるで嘘を付いてもすぐばれそうだ。
「忙しくて最近出来てなかったんだよ」
「配信も?」
「うん」
「えぇー」
夜音はがっかりそうにそう言った。
VTuberで忙しいからなと言おうとしたが、まずVTuberを始めたことすら説明してなかった。
めんどいし黙っておこう。
「マッチング始まりそう」
「ちょっとプリン持ってくる」
と突然言って階段をかけ降りていった。
そういえば彼女の好きな食べ物ってプリンだったっけか?
もう覚えていない自分が情けない。
「ただいまー」
わずか1分程度で戻ってきた。
横の椅子に座ってプリンを食べ始める。
「めっちゃ観戦する気じゃん」
「そうだよー」
「はぁ」
「何か文句ある!?」
「いやないけどさ…」
なんか、何とも言えない気持ちだな。
とりあえず夜音の前だしちゃんとしたプレイをしたいところだ。
「あ、敵だ」
始まってすぐ、分かりやすい場所に敵がいた。
まだ低いランク帯だからか、動きも読みやすい。
多少のミスが命取りにならないだけ心の救いかもしれない。
「おけ」
と言っても横に居る夜音のためにも下手なプレイは出来ない。
しっかりスナイパーで頭を抜いて1キル目だ。
「おお」
そう感嘆な声を漏らした彼女は無視しとこ。
「あれも敵か」
案外動きが大胆なのか分かりやすいな。
さっとキルを取って物資を漁りに行く。
すると、同じ思考をした敵が居たのか物資を先に取られた。
「は?物資取られた…」
敵とは高低差がある。
そして俺の方が不利だ。
だから下がろうかと思ったのだが
「え?逃げるの?」
と横のやつがうるさかった。
「えぇ」
困惑8割の中攻めるしかないかと思ったのだった。
敵はアサルトで上から撃ってくる。
まぁ大方予想通りだし、上に来ないようにしている。
「え、これどうすんの」
岩の裏に隠れてそう言った。
単純かつ明確に、俺がここで下がるのが得策なのだが。
横をチラッて見るとあたかも逃げんなよとでも言うような表情をする彼女がいる。
どうしたらと思っていたら
「あれ、しないの?」
「あれ?」
「ほら、あれだよ。弾避けるやつ」
「あれか」
ここで攻めるならそれしかないなーとは思っていたけれど。
まぁやるしかないか。
「分かったよ。出来るか分かんないけど」
不安がちょっと大きいがやってみるしかない。
敵がちょうどリロードするために岩陰に入った瞬間俺は攻めに行く。
敵もリロードを終わらせるとすぐさま撃ちに来る。
まずは右から来るのを避けて、そして左に来るのも避ける。
敵は案外追うような撃ち方じゃないようで、避けるのが難しい。
けれどしっかり避けつつ敵との間合いを詰める。
「よしここだ!」
ちょうど敵の弾が切れたタイミングでショットガンを撃ち込んだ。
「おおおお」
夜音も若干声を出してくれて満足だ。
失敗する気でいっぱいだったが案外行けるかもな。
とりあえず安堵しつつも移動する。
すると案の定銃声を聞き付けた敵と戦うことになる。
「多すぎる…」
銃声聞こえたら攻めるという考えの人が多すぎる。
その結果5人くらいが戦闘してる気がする。
俺は端からスナイパーで抜いていく。
好戦的な人をまず1人抜いた。
そして、その抜かれた敵の物資を取ろうと動いた敵を抜く。
3人になると近い人同士が戦闘に発展してくれる。
そしてそれを横取りしようと待ち構えている敵を抜く。
あとは戦っている2人を抜けばいい。
「よし!」
これで5キル盛れるのだ。
「ええ…」
チラッと横を見るとプリンを食べる手が止まっていた。
「海斗、思ったより上手いね…」
何様だよって心のなかで突っ込みつつ、
「これでも世界1位だったからな」
と自慢のような言葉を渡す。
「そうだった…」
本当に忘れていたかのようでクスッと笑ってしまう。
このマッチは優勝しないとなーと思いつつどんどん進んでいく俺だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます