第115話 Is the truth worth knowing?
「もうすぐこの私の意識、死んじゃうんでしょ」
「え?」
俺は困惑だった。
確かに彼女が考える一つのことだった。
でも、本当に気が付いているなんて思わなかったのだ。
「私には分かるよ。急に記憶が飛んで、皆様子も違って。」
彼女は海の方向を眺めていた。
俺は何も言えず、ただ黙ることしかできない。
「全部話してほしいな。」
彼女にはうっすら涙が溜まってるように見えた。
夜音自信でも自分の事を思った以上に考えているのかもしれない。
「夜音の言う通りだよ……。もうすぐ治療が始まるかもしれない。
もし、治療が始まれば夜音はもう……。」
「いいよ。私じゃない私が生きてるんでしょ?その子を想ってあげなよ」
夜音は依然としてこっちを向かない。
最後まで彼女自身貫き通したいのかもなと思ってしまった。
カッコいい彼女の背中を見て育ってきた。
それは変わらない事実であり、永遠に俺に刻まれることだろう。
「海斗はどうしたいの?」
「俺は、夜音に死んでほしくはない。けれど治療をしたら夜音はもう……」
やっぱり俺は決断が出来なかった。
ゲームならすぐに決めて即決行動に移せるのに、リアルになると話は別だった。
「私は大丈夫だよ。覚悟はできてる」
彼女はようやくこっちを向いた。
けれどもう涙なんて無く、ただたくましい姿だった。
「誰かに頼っていいんだよ。自分で決めなくていい。時には迷惑をかけるかもしれないけど、それでもまた返せばいいよ」
「海斗だって、プロゲーマー頑張ってたじゃん」
「なんで、知ってるの……。」
俺は夜音にそんなことを話したことが無かった。
学校を休んで、ゲームの道を選ぶ。
これが決していい事とは言えなかった。
「分かるよ。たまにご飯できても来ないから呼びに行ったら凄い真剣だった」
「ごめん……」
「なんで謝るのよ。私は海斗の真剣な姿好きだったよ?」
「でも、そのおかげで俺は夜音を……」
「気にしなくていいよそんなこと。私は海斗の真剣な姿を見て、自分も支えたいって思ったんだよ」
「世界大会で優勝したとき私も嬉しかったな」
「見てたんだ…。」
「でも私に直接教えて欲しかったな。」
夜音は俺がプロゲーマーとして動いていたことを知っていたらしい。
でも、それならもう少し家事をしてほしいとか言ってほしかった。
そんなことを言わないのはやはり夜音の優しさなのか、支えなのか。
注意する優しさが無いのはおそらく俺のせいだ。
「私、真剣に何かをすることが出来なかったからさ。だから海斗の事を尊敬してた」
「確かに海斗は学校に行けなくなった。けれど学校がすべてだと私は思わないからさ」
夜音は俺の手をにぎった。
「それに海斗も今頑張ってるんでしょ。それでいいじゃん。」
彼女の笑顔はやっぱり綺麗だった。
昔ながらの純粋な、そして周りから見ても可愛いと見える人だ。
俺はそういう人を失った。
「まあ、今何してるかなんてわかんないけどさ、私に対して責任感を持つのはやめてほしいな。私が嫌だよ。
私が決めたことだからね」
そう言って彼女は振り返った
「そろそろ帰ろ~」
「あ、ちょっと待ってよ」
俺が後ろから小走りで走って追いかける。
すると、夜音は負けないとばかりに全力で走る。
そうだ、夜音は運動出来るんだった。
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帰り道、彼女との会話が止むことはなかった。
「そういえば、海斗ってプロゲーマーまだ続けてるの?」
「いや、あの後からやってないよ」
「え~。続けなよ」
夜音はがっかりそうにそう言った。
「二の舞踏みたくないからさ」
「大丈夫だって、私なら」
「いやいや」
それが冗談なのか本気なのかは分からない。
けれど昔から夜音に応援されていたと思うと少しやる気は上がった。
「私が居なくなってもプロゲーマーまた続けてよ?」
「えぇ」
「約束ね」
まあ、今度チームメンバーに相談してみるか。
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