第113話 Not a new lifestyle, but a returned lifestyle
「私からしたらいつも通りなんだけど、海斗からしたら懐かしい家って面白いね」
夕方、窓から黄色がかった光が注がれている。
夜音はすぐ退院したらしい。
本来診察とかして結構期間が空くはずなのだが先生からの許可が出たらしい。
まあ実際夜音に対する決断はまだ決まってすらいないしどうすることも出来ない。
「そうだな。」
夜音は荷物を置くとすぐにキッチンに向かった。
けれど、ここでさせるわけにはと思って
「あ、俺が作るよ」
と止める。
夜音は一瞬止めようとしたのだろうか、けれどすぐに興味深そうな顔に変わった。
「じゃあ海斗のを楽しみにしてようかな」
そう言って下がった。
せっかくだし成長した俺を彼女に見て欲しかった。
「私は自分の家にいったん帰るよ。すぐ戻ってくるから。」
と言って家を出て行った。
彼女は状況を全部把握しきれていないにも関わらずここまで動けるんだ。
流石は夜音と言ったところか。
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「おいしい!!海斗すごいじゃん!」
夜、俺が作ったご飯を夜音に食べてもらった。
成長した成果が見られたようで俺は凄く嬉しい。
彼女もおいしそうに食べてくれているからこそ、がんばってきて良かったと思った。
「海斗が住んでる街ってどんな感じなの?」
食べているとふと聞かれた。
どんな感じと聞かれても説明が難しい。
自分が感じたことをただ言ってみる。
「ここより広いよ。色んなものがいっぱいあるし。」
ここが田舎というわけではないが都会と言えるほどでもなかった。
そう考えれば、今住んでいるところは大都会並みの大きさだ。
「へえ私も行ってみたいな」
彼女はわくわくしてそう言った。
「そういや、明日どこか行かない?」
夜音とまたどこかに行きたいと思ってそう提案してみた。
彼女は待ってましたと言わんばかりに頷いた。
「うん!行こうよ」
「でも実際どこ行こうか」
なんやかんやで周りにある場所は全部行っている気がする。
それこそ少し離れた場所まで行かないといけないかもしれない。
「うーん…」
彼女にはどうすることも出来ない。
この1年で何がつぶれて、何が新しく出来たのか分かるわけが無かった。
「あ、水族館とかどう?」
俺は必死に頭を回転させて、そういや病院に水族館のポスターがあったことを思いだした。
「いいね!私ずっと行ってない」
「俺も行く機会ないし行くか」
「決まり~!」
と即決だった。
後から調べて分かったが水族館は少し離れたところにあった。
別に行けない距離でもないし、結構広そうで良かった。
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外はもうしっかり暗くなった時間帯。
夜音は勉強をしていた。
流石に彼女でも頭を抱えるのは当たり前。
一応知識は引き継がれているだろうが、あの彼女自身勉強をしていなかったこともあった。
だから実質的に無知から勉強を始めているわけで、結構地獄かもしれない。
「大丈夫、教えようか?」
俺がそっと声をかけると
「じゃあこれの解き方教えてほしい……」
と数学の問題を指さした。
「えっとこれは……」
今考えると、昔とは逆構図なんだな。
夜音に勉強を教えてもらったのが懐かしい。
今となっては逆なのがまた感慨深いかもしれない。
「なるほど!!」
俺の教えれていたか微妙な解説で納得できたらしい。
そういや家に帰ってきて、色んなものがまだ動いているんだな。
モニターなどが例だろう。
そういやと思って時計を見ると、それもまた動いていた。
時刻は22時くらい。
「もうこんな時間か」
俺がそっとつぶやくと、彼女はえ?と時計の方を見た。
「ほんとだ、時間が経つの早いね」
確かになって思う。
まだ体感20時くらいだ。
「私からしたら海斗が部屋に居ないこと自体に凄く違和感あるよ」
「まあ夜音からしたらそうだな」
そうか、そのころはずっと部屋でゲームだったか。
彼女からしたらそれが記憶が飛んだことによる違和感か。
俺の影響は凄く響いているのかもな……
凄く申し訳なく思う。
「海斗はゲームしなくなったの?」
「まあ。前より頻度は減ったよ」
「そっか」
良かったともがっかりとも言えない顔でこっちを向いた。
「もう寝る?」
「そうだな」
別にすることないし。
配信してもいいけどもう少し知識つけないと。
「一緒に寝る?」
「え?」
夜音はさりげなくえげつないことを言った。
「いや、一緒に寝たいかなって」
「いや、いいよ。どうせ寝たことあるし」
まあソファとか、寝落ちしてしまったときとかしょっちゅうではないがある。
けれど言い方のせいで彼女には誤解を生んだかもな。
「えあるの?」
「あ、気にしないで」
流石に失言だったなとか思いつつ、彼女を見ると、
「何やってんのよ私……」
と小声で言っていたのを聞いた。
まあ大体俺が一緒に寝てしまったのがすべての原因なんだがな。
「で、一緒に寝るの?」
夜音は立ち上がって今にでも寝室に行こうとしていた。
「布団とか大丈夫なの?」
1年以上経てば布団とかやばそうなんだが。
「大丈夫。風夏から借りてきた」
いつの間に……と思いつつ、やっぱり流石だなと思った。
抜かりない彼女にはまだまだ追い付けそうにないや。
「で?」
「じゃあ寝るか」
特に何か起きたわけでもないが、一緒に寝るのも新鮮で良いか。
流石にベッドはばらばらだが、親が使っていたベッド二つをそのまま借りる。
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
懐かしかったあの日常。
少しでも味わいたいな。
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