第110話 Sometimes taking a breather brings happiness

空はもう赤色に染まりきっている。

いつの間にか寝てしまっていたようだ。


ふと横を見ると、机に一つ紙が置かれていた。


《おはよ。先帰っとくね   風夏》



どうやら夜音はまだ目を覚ましていないようだった。

今日中に目を覚ますという可能性がないわけではない。

けれど、今混乱した頭を整理するのも必要なことだ。



「じゃ、また明日見に来るよ」



俺はすやぁっと眠っている夜音にそう告げて病室を出ていった。





家に帰っても当然誰も居なかった。

普段は居る夜音も居ないせいで余計静かに感じる。


1人で居ても特にすることがない。

いつもならゲームとかしてるのにな……





そういやゲーム配信って出来るのか?





俺は急いで自分の部屋に入った。

机には2台のモニターとさっき出したキーボード&マウス


これ出来るんじゃないか?



モニターの電源を入れて、自分の配信チャンネルにログインする。


【配信を開始する】


どうやら配信が出来るようだ。




「どうしようか」




まあ確かに今夜音の事もある。

だから本来なら考えることがいっぱいあるけど。


でもたまにはリフレッシュも大事なんじゃないか?

幸い今出来るのはblancだけ。



久々に配信をするかあ……。






俺は用意を済ませると配信開始ボタンを押した。



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【blancの久々のゲーム配信】


ー急すぎんか!?

ー久々きたあああ

ー待ってた!!!!!!!

ーようやくだよ

ー復帰きたか?

ー懐かし



「というわけでblancです!皆お久しぶり!!」


なんやかんや半年くらい放置してたかもな。

視聴者には少し申し訳ない気がする。



「久々の配信だけど早速【world war】やるかあ」


このゲーム。VRゴーグルが無くてもプレイが出来る。

実際使わずすることもあるので慣れている。


ただキーボードとマウスが慣れてないのでそこだけが不安だが。




「どこに降りようかな」


ー何してたの

ーまじでそれ

ー急に活動休止したからな

ー噂だとあれだろ

ーVTuberなんじゃねえの

ー流石にそれはない


そういや、活動休止を発表したときあんまり何も言わなかった。

ただ、忙しいからという名目にしていた。


言葉足らず過ぎてやっぱり気が付かれてるのかもしれない。

もう時間の問題かもな。


今度じっくり考えるかあ




「まあ勉強とかがやばかったんだよ」


ということにしといた。


「学校行ってると両立が難しいんだよね」



周りのプロゲーマーは結構両立してやってたりする。

だから結構尊敬してるし、めちゃくちゃ上手いのも凄い。


それに比べて俺はあんまりできてない。

現にランクマは全く触れてないおかげでランキングにすら載らない。



「っと、敵いたわ」


ランクマがリセットされたことで、今は一番下のランクだ。

まだ余裕かもしれないが、結構強い人は潜んでることもある。


「おっけ~!」


まあ撃たれる前にやれば問題ない。

しっかりスナイパーでキルを取った。


色々あったから調子狂ってるかと思ったがそうでもないみたい。



ーうめええ

ー安定感やば

ーやっぱり大会出るべきだわ

ーまだblancなら舞えるんじゃね

ー行けると思う

ー出てほしい



「大会かあ」



やっぱり大会という言葉からは逃れられない。

けれど、また同じ道を繰り返したいわけではない。


だから今はやりたくない。




「きついかな」


またごまかした。

結局は夜音に依存しているんだなって思う。

どんなことにも彼女は関わっている。


俺にとって重要な存在なんだから仕方がない。


「あ、敵」


そう気が付いたときには敵も気が付いていたようだ。

銃口を俺に向けて撃ち始めた。



アサルトライフルなら結構避けれる。

そして相手が一瞬止まった時に、スナイパーでカウンター。


これで一発アウト出来る。


「けど結構強いな」


ギリギリ避けれたが、弾道は正確だった。

この人が凄いのかは分からないが、人数の減りが遅い。


「まあ倒すけど」




ちょっとずつ夜音の事は頭から消えていった。



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