第109話 episode5

夜音が倒れてすぐ、病院で目を覚ました。

だが、目を覚ました彼女はまるで別人に見えた。



いや、別人だった。



「えっと……」



俺を見て、何か言いかけつつも何も言わなかった。

既視感はあったのだろうが名前が思い出せ無さそうだ。


「俺は海斗だよ?」


そう言うと、彼女は一瞬あっというような顔をしたように見えた。


「えっと…私は夜音って言います」






俺に既視感はなかったらしい。



先生曰く、このまま病院に泊まらせたところで何も変わらないらしい。

だから結構早いうちに退院となった。


最初は夜音の親に連絡をした。

けれどあんまりいい答えは返ってこない。


『海斗くんに任せる』


ただそれだけ。


俺の親は反応すらしてくれなかった。



風夏に頼ろうかと思ったが、彼女に迷惑をかけたくなかった。

原因は俺。

だからこそ罪も俺が償うしかなかったのだ。




夜音には記憶が飛んでいるらしい。

けれど、知識的な部分は残っていた。

ただ、人間関係的や、生活面がすべて抜けているらしい。

俺が見ていて分かった。



だから、俺が今度は夜音を支える番だった。

まず、プロゲーマーを止めた。


ゲームにのめりこんだからこそ彼女に負担がかかったのだ。

二度目の過ちは犯したくない。


そして、家事もほとんど担った。

最初は夜音にも手伝ってもらおうかと思ったがやめた。


ここからまた同じことになっても困る。





そして、夜音は人間関係を忘れたことで学校にも行けなくなった。

幸い、何人かの友人は関係を持ってくれたようで、彼女もよく遊びに行っていた。


家でも色んなことに彼女は興味を持った。

病気については何も聞かれなかったのはたまたまなのか、それとも彼女が避けていた分からない。




だが、同じ高校に行くとしても近場は無理だった。

だからここを離れたのだ。


一緒に勉強をして、俺たちは高校に入学した。



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