第107話 episode3

俺はどんどん引きこもり始めた中学3年生。

受験生ということもあり、夜音に勉強を教えてもらうことも増えた。


夜音にはよく


「海斗はやっぱり地頭が良いよね。もっと勉強したらいいのに」


そう言われた。

確かに勉強が嫌いというわけではなかった。

けれどそれよりもゲームをしないといけないという義務感で時間が圧迫されていたのだった。



だから夜音に一緒の高校に行こうと言われた時、結構考えた。





そんな悩んでいたある日。

突然にも起きた。




「夜音?大丈夫?」



家の中で夜音が倒れていた。

最初は寝ているのかと思って優しくたたいてみたが反応はない。


ここでようやく彼女の容態に何か異変があるのだと分かった。


助けを呼ぼうにも焦りすぎてどうすればいいか分からなかった。


とりあえず、持っている連絡で頼りに出来そうな人を探していた。

親はダメなのがもう目に見えていた。

その他で頼りに出来る人は風夏だけだった。



風夏に電話をすると


「ん?何?」


と何もない一言。

俺が説明を急いですると、彼女の声の大きさも変わった。


「何してるの?早く救急車!!!!」


そう少し怒ったように焦ったことだった。




救急の方に言われたことを行った。

まず申し訳なく思いつつ彼女の胸に手を当てた。


(心臓は動いてる、か)


心肺停止ではなかったようだ。




救急車を要請して待っているときようやくわかった。


(俺って何も出来ないんだな)


救急に電話をするということすらままならなかった。

それどころかまず夜音が倒れていてもすぐには気が付けなかった。



自分だけで判断することが出来ず、すごく情けないと反省しつつ救急車を待った。








夜音を運んでいる救急車に一緒に載せてもらって病院に向かった。


そして彼女の診断結果を待っていた。



何も考えることが出来ず、ぼんやりとしていたら夜音を担当する先生が出てきた。


そういや確か名前は井上先生だった。

今も担当の先生は同じだ。


彼は俺に向かってまず一言。


「容態は比較的安定している。だが、意識だけは不明だ。」


そう言われた。




「なんでこうなったんですか」





もはや不安ということも俺には忘れたらしい。







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