第103話 change is sudden
「お前、VTuberを始めただろ」
そう追い打ちをかけるように彼女はそう言った。
俺は思わず、少し黙った。
まるで弱点を突かれたように。
「え、俺お前に言ったっけ」
一応確認しておく。
「いや、なんとなくそう思ったんだよ」
風夏はそう言ってPCを動かした。
何をするのかと後ろから見ていると、
「白海 ネスイね。たぶんこれでしょ?」
もうごまかしは通用しなさそうだ。
何もかも見抜かれている気がする。
「そうだ…でもなんでわかったんだ?」
別に風夏には連絡をしばらくしていない。
夜音も彼女に言うとは思えない。
「プレイスタイルが似てる」
あ、そっか。
彼女はblancが俺ということを知っていたのだ。
だからこそ似たプレイスタイルから白海ネスイと俺が一緒だと分かったのか。
「そんなに似てたか?」
「うん。なんなら他の人も分かってる人居るよ」
「まじか……………」
結構ショックだ。
自分なりにはバレないよう動いていたからこそ少し衝撃だった。
「ちなみにこれって炎上しそう?」
「いや、身元不明のネスイがblancじゃないかってなってる。
むしろネスイがチーターじゃなくて皆安心してるよ」
「そっか」
少し衝撃的ではあったが、HESKAL自体にあまり迷惑がかからないようにしたい。
「公表するべきかな」
あと一つ、彼女に聞いた。
「した方が良いかもね。でもしなくても面白い。」
「どうしたいかは自分で考えて」
そう彼女は言ってくれた。
新たに問題が増えた。
今、夜音の事で結構頭を悩ませているのだが、
更にblancの事もそろそろ考える時期になってきたかもしれない。
とりあえず、考え事をしつつも、風夏の家から出た。
出る直前に、
「無理はしないでね。力になれるよう頑張るよ」
そう言ってくれた。
唯一心情とかを話せる人が近くに居るのは結構ありがたい。
普通なら親に相談するのが良いかもしれない。
けど、おそらく夜音の親は、娘に愛想を尽かしてそうな気がするのだ。
電話もあれからかかってきてない。
一応メールで診断結果を伝えたが、
〈そう。海斗君に決断は任せる〉
それだけだった。
俺の親なんて連絡すら来ない。
面倒な家庭の中で俺たちは育ってしまったのかもしれないな。
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外が夕方の中、俺は家に帰ってきた。
まだ夜音は帰ってなかったようで何をしようかと思った。
「ゲームするか……………」
懐かしのゲーム部屋に足を運んだ。
いざ、部屋でじっくりとモニターを見る。
「思ったより機種、古いんだな」
まあ何年も使ってたら古くはなるかもしれない。
よくこれで世界と戦ってたんだなって思うけど。
「ちょっとやって見るか」
モニターと横にあるPCを起動する。
懐かしの音とともにホーム画面が現れる。
「懐かしい……」
言葉に表せないなつかしさとともに、【world war】を起動する。
まだあるかな、と思い棚を開けると
キーボードとマウスがあった。
めちゃくちゃ使ってるやつではなかったが予備で置いてたのだ。
まさかこのタイミングで使うとは思わなかったけどね。
「ちょっとだけやるか」
マウスを接続して久々に握る。
あまり使ってないけど出来るかな……………。
気が付いたら7時あたりになっていた。
「もうこんな時間か……………。」
ちょっとやりすぎたかもなと思いつつ、リビングに戻る。
「あ、」
夜音はもうすでに帰っていたようだった。
けれど反応はなく、ただ寝ていた。
夜音もこの家に懐かしさを覚えて寝たのかな?
とかどうでもいい事を考えつつ、電気を消した。
眠いしもう寝るか。
ベッドは引っ越しの時に移動させたので、どこも寝るところはない。
まあ、今日くらい許してくれるか。
横で一緒に寝た。
だが、次の日。
また緊急事態だった。
夜音が目を覚まさなかった。
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