第84話 神威を倒す配信④


さて、問題は圧倒的に第二形態だった。

まず上下の剣は感覚で、左右から飛んでくるのに意識を向ける。

そして、強化弾はひたすら避けることだけを考える。


「こいつまじでやべえな」


初見よりかは避けれている。

けれど重力操作が怖すぎて、まったくと言っていいほど歯が立たない。


「これ、重力操作の前兆みたいなのない?」


ーある

ーするときは彼女の目が光る

ー神威が光る

ーいや、コメント読めるのつよ

ー案外余裕そうで草


「いや、余裕ではないよ………なるほど目か」


確かに言われてみれば、神威が目をオレンジ色に光らせた時、重力が変わる。





つまり、俺は上下左右の剣に意識を向け、自分のところへ飛んでくる強化弾にも意識を向け、

神威の目にも意識を向けろと言うことか。


「無理すぎん………?」


しかも攻撃は一定時間経たないとまず当たらないらしい。

つまりこの状況の打破は出来ず、ただ避け続けるしかないのだ。


ー無理すぎる

ーだから最難関

ー早く動けば大体避けれそう

ー確かにそれなら上下左右と目だけで良い

ーお~天才?


「あ~やってみる?」


コメント欄にあったアドバイスをもとにやってみる。


「ん~????」


とりあえず技でスピードを上げて走ったのだが、

走る先の頭上に剣が飛んできている。


「は?先読み????」


ーえ??

ー先読みえぐい

ーは???

ー強すぎww

ーどうしろって言うんだよ

ープロの動画見よ

ーネスイはネタバレ×って書いてるからなあ

ー成長を見守れる配信


「うぁ~」


まあ、案の定避けれるはずもなく撃沈。



ただ、収穫は得られた。


「結局速くなってもダメなら、避けるしかないのか」


ーそういうことですね

ー頑張れ………

ーまじでここ佳境

ー慣れないときつい

ーまあ最難関すぎる

ーこれ避けれるの?

ーラスカ/それ気合い

ー気合いwwww

ープロでもお手上げかww


「気合い………まあ噛み合い待ちってやつか………」



とりあえずまた1からやる。

第一形態の通過率は8割を超えて、安定してきた。

だが、第二形態は少しずつ耐えている時間が多くなっている気もするが先が見えない。

でも、ラスカさん曰くここは避ける以外対策しようがないらしい。


しかも回避盾で防御力、HPがともに低いため、ダメージを受けれないらしい。

普通はちょっとくらい大丈夫なのだが………


「つまり、俺だけハードレベルかw」


ということだった。






こうして沼り続けて配信開始から3時間後………ようやくその時が訪れたのだった。


「よし、第一形態は突破~」


「次またあいつらのホラゲー配信やろうかな」


ーありw

ープリーム達面白すぎる

ーひなも良い

ーあんまり見ない一面すぎて良

ーネスイは怖くないの?


「まったく、まあ初見はちょっとビビるけど」


こう、雑談配信と何も変わらないような会話をしていた時だった。



第二形態は最初に上下からの剣、そして1,2回の重力操作が入る。

そして次に強化弾が参戦する。

経験してて感じたことだが、強化弾は少しずつ速くなっている。

だからこそ終盤で倒されることが多い。


そして最後に左右からの剣も参戦する。

これで攻撃は全部そろった。


そして、案外逃げやすいような配置になっていた。



「うえ?これある!」


唐突にクリアテイクが出そうで驚きつつも、落ち着いて避けていく。

まず上下の剣を確認、そして左右も確認して逃げる。

神威から飛んでくる強化弾にも気を付けながらひたすら走り続ける。

だがまっすぐ走っても先を読まれてやられるので、曲がりつつ移動しないといけない。


重力操作をされても、頭上、左右に剣がない場所に移動しないといけない。



だが、まだ攻撃種類はそろっていなかった。

神威との戦いでのBGMが明らかに盛り上がった瞬間。



「はああ???」


次は神威から剣が放たれた。

強化弾の代わりというべきか、その速さは異常で避けるのが精いっぱい。


「なんでできてる!?」


ただ、なんか奇跡的にすべて避け続けれた。


そしてようやくその時が訪れた。



パリンッ




神威を覆っていたバリアがはがされた。

今なら攻撃が入るんじゃないか?


「今だ!短剣の加護!」


急いで加護を使って詰める。

浮いてるとはいえ、攻撃は当たる。

俺は第一形態の序盤で使ったやり方をもう一度使う。


そう、剣に乗るのだ。

すごく早い剣で慣性の法則で飛ばされそうだが、その力に耐えて前へ進み続けた。


もう加護が切れる寸前のタイミングで、俺は神威の前で短剣を振った。


神威のHPゲージはすべて消えた。



「よし!!!!」




ーきたあああああ

ーすげえええ

ー上手すぎ!!!!

ーすごwww

ーついに噛み合ったwww

ーでもこれで終わらないんだよなあ………

ーこっからが鬼

ーまだ本番じゃない


「ん?」


何か様子がおかしい。

AFGは基本モンスターを倒したら赤いエフェクトが出るのだが………


「まさか、終わってない?」


【ふっ、流石は童の挑戦者。耐えたか。】


神威はしゃべりだした。

俺は静かに言葉の続きを聞く。


【だが苦手な魔法だとやはり挑戦者を倒せん。童が直接相手してやろうぞ】


「は?」


ん?苦手?

ちょっ、どういうこと!?


「え?フィールドが変わった………」


ーさて始まったか

ー最終戦~

ーこっからが本番

ーてかここがえぐい

ー全部えぐいけどここだいぶやばい

ーラスカ/最終戦は最難関とかいうレベルじゃないよ~


「え、そんなむずいの………」


まだあることに絶望しながらも、また戦いが始まった。




フィールドはあたり一面が森だった。

目の前に神威が居るわけでもないが、謎にぞわぞわする。

警戒しながら、ゆっくりと足を進めたその時、


「うわ!?」


目の前から神威が現れた。

そして俺はとっさに攻撃を防いだ。

すると神威はすぐ消えてしまった。


スピードと攻撃スピードが速すぎる。

そう感じたら、


「後ろ!?」


次は後ろからやってきた。

ギリギリ反応して対処する。


今、おそらく木の上からやってきた気がする。

やはりユーザーと思わせるほどの実力、そして立ち回り。


「これが………最難関か」


最初は反応出来た攻撃も、少しずつギリギリで回避することが多くなった。

神威は攻撃スピードを上げてきたようだ。

出てきたときにはもう剣を振っている状態だった。



そして、


「は!?」


一度は攻撃を避けきったと思った。


だが、神威は剣を二つ持っていたのだった。

左手には漆黒の剣、さっきから降らせたりしてくる剣だ。

そしてもう一つが、紫がかった銀色の短剣。


その短剣に気が付けず、俺はやられてしまった。




「これ無理じゃね?」


ー無理!

ー最終戦は桁違い

ーこれ耐久するんじゃなくて自分から攻撃当てないといけない

ー攻撃当てんのくそむずい

ー当てたら勝ち

ーまじで神威怖すぎ

ーラスカ/それ作戦立てないと無理



「作戦………か」



まずは第二形態の戦い方を変えないといけないな。

安定させないと、神威との直接対決での傾向も分からない。



改めてAFG最難関という言葉を感じ、そして一筋の光は絶望の中に埋もれていた。





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