第38話 HESKAL杯の練習④
とりあえず、どうしようか。
正直生き残るだけならば、まだ安全地帯に余裕があるので出来る。
だがそれが本当に視聴者にとって面白いのか?
そう思うと俺は戦いに行くことにしかできなかった。
「やりに行きます」
俺はスナイパーからショットガンに持ち替えて走り出した。
目の前の家で氷さんがやられたのでそこに居るのだろう。
『頑張れ!ネスイ!』
その応援とともに俺はマウスを握りなおし、深呼吸した。
何ごとにも冷静さは大切だった。
「2人居ますね…」
見間違いではなく家の中には2人居る。
足音が二人分あったからだ。
ーがんばれ!
ーネスイなら行ける!
ーどうだ…
ちらっと横のコメント欄を見て、元気をもらいプレイ画面を見直す。
ドアから入ると確実に二人からやられてしまう。
ならば屋根から行くしかない。
もしものために意識していたアイテム《グラップラー》を使用する。
一瞬で家の屋根まで移動した。
これで上は取れた。
だが、上を取れたとはいえ数的不利を覆すのは難しい。
そこで考えられるのが、立ち回りだ。
相手がどう攻めてきても対処できるようにしたい。
「ここからか!!」
相手は俺が1人で屋根に居ることに気が付いたのか、
ドアから出てきた。
もう一人はすぐにでも逆から出てくるだろう。
「頼む」
そう俺はつぶやき、相手と戦う。
相手はサブマシンガンで俺を下から撃ちまくる。
俺はその弾を避けながらショットガンを当てる。
相手はダメージを入れられて下がる。
そしてすぐにでも後ろからもう一人が来る。
『後ろかも!!』
彼の声と同時に振り返った。
相手はもうまじかにショットガンを構えて立っていた。
「やっば」
俺は反射的にしゃがんだ。
そのタイミングで弾が同時に出た。
俺は頭を当てて、相手は俺がしゃがんだことでダメージは入らなかった。
「行ける!!」
俺は落ち着いてもう一人の敵をしとめに行く。
家の1階あたりにいるのを俺はすぐにやりに行った。
相手は案の定回復をしていたようで、すぐに倒すことができた。
「よしゃあああ」
『は?』
ー??
ー何が起きた
ーなんも分らん
ー早すぎる
ー強すぎてついていけてない
勝ったが、まだ敵は居るので銃声で集まらないようにさっと持ち場を出る。
「まじであるかもしれない」
『が、がんばれ!』
氷さんが若干引いているように聞こえるのは気のせいだろう。
俺はそのまま立ち回りを考えた。
結果的に山の上を取れたし、残り人数も5人となった。
俺は上からスナイパーで敵を探す。
見つけたらすぐ撃ちたいのだが、流石に終盤になると敵も強く、
簡単には見つけられないのだ。
俺は暇だったのでいくつか氷さんに質問でもしようと思った。
「氷さんはなんでVTuberをやったんですか?」
最初に聞くことに対しては少し重かったかもしれないがなんとなく聞きたかった。
『そうだね。なんかやりたかったんだ!VTuberが』
案外単純な理由で驚いた。
基本HESKALは面接を通した審査系で入る。
だからもうすこし明確な理由があるはずなのだが、
彼からはそれが感じ取れなかった。
『ネスイはVTuberしてて楽しい?』
「もちろんです」
VTuberをしてよかったと思ってる。
色んな人とも関われて、
視聴者とも楽しい時間を過ごせるのが何よりも良い。
『そんな感じだよ。俺も楽しいからなってよかったなって思ってる。』
「なるほど!」
HESKALの審査基準は知らないが、この人は入ってよかったと思う。
待機時間などに少しだけ雑談したが、それだけでも面白いというのが伝わってくる。
そう思っていたら、
「あ、銃声」
残りパーティが戦い始めたのだろう。
しかも戦っているところは上からよく見える。
「ここか」
俺はなんとなく上からスナイパーで敵を撃つ。
頭には入らないが胴体にダメージが入った。
『すげえ』
ーとりあえずで当てたw
ーえっぐ
ーそんな気分で当たるの
ーこわ
ー頭じゃないからいいとかじゃない
「そんな。まだまだですよ」
俺はこのゲームでまだ成長できると思っている。
そう思いながら、スナイパーで敵を狙う。
「とりあえずここに居る敵くらいは倒せないとまだまだです」
『お、おう』
「あ、ここ行ける!」
俺はそう確信した。
その弾はきれいに狙った敵にあたり、相手はダウンする。
これで相手チーム同士1vs1の戦いとなった。
そしてそのまま片方のチームがやられた。
ここからだ。
俺は残った敵を狙う。
だが相手も俺の場所が大体分かっているのか、物影に隠れていた。
ここで使うのがアイテムだった。
「ここでこれだな」
《エンペラー》
高い殲滅力を持つ武器を一定時間扱える。
だがアイテムクールタイムが長くなる
これで俺は賭けをした。
「いけええええええ」
相手が物影に隠れているので、そのものごと破壊する。
そして壊れた時、ここからどれだけ相手にダメージを当てられるかなのだ。
『ええ…』
案外弾は当たり、あと少しというところで、効果が切れた。
だがあきらめるわけもなく、スナイパーに切り替えて俺は一瞬だけスコープを狙う。
特に確認をするわけもなく、感覚で撃ったそれは相手に当たり、
「やったああああああああ」
1位となった。
『うえええ?』
ー知らないムーブすぎん
ーなにこの立ち回り
ーバケモン格
ーえぐすぎ
ーこれは次のHESKAL杯やばそう
「もう少しやりますか」
『そ、そうですね』
俺はただ氷さんを怒らせないように動いただけだ。
結果的に【end world】界隈で盛り上がる映像となることになったのはまだ知らない。
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