第20話 endmと配信
「あのさ、」
「はい…」
俺は朝から説教されていた。
「女の子と二人で寝るとかどういう神経してるのよ」
夜音は怒っているというより、呆れていた。
はぁ、というため息をしながらこちらを見てくる。
「いや、確かに悪かったけど何で俺の家で寝るんだよ」
こちらにも非はあるが、夜音が俺の家のソファで寝ているのもどうかと思った。
最終的には俺が寝るか寝ないかではあったが、疲労からして寝てもおかしくはなかった。
「それは、海斗が終わるまで待ってたのよ」
俺は何も言えなかった。
自分のためだと言われれば何も反論できない。
「でも、オーバーし過ぎでしょ」
昨日の配信、俺と春陽は二時間半くらいの配信だった。
当初の予定は一時間だったので超えすぎている。
「ごめん」
なにも言えない。
俺が悪いと認めた方が早かった。
夜音はまだ満足しない様子で見てくる。
「じゃあ、次の配信は私とコラボね」
「は?」
いやいやいや。
明らかにおかしい。
ただでさえ二回目の配信でコラボがおかしかったのだ。
三回目もコラボ配信にしてしまうと何か悪い噂が立ってしまう可能性も否定できない。
それに、常識的に考えれば次の配信は個人でやるべきだった。
「それくらいの事をやったのよ。学校でばらされたくなかったら乗るのね」
そう言って夜音は家に戻っていった。
もう答えは決まっていた。
この事が学校に広まれば行けなくなる。
まだ学校ではこの立ち位置で良いのだ。
それに陰の人間でも困らないし、他の人からの視線が痛くなるのは避けたかった。
「はぁ」
次の配信は日曜日なので、明々後日だ。
もう少し日時を変えてほしかったが仕方ない。
打ち合わせをする時間は余りに余っているので良いとして、問題はHESKALの会社側が許可するかだ。
慌ててマネージャーに連絡をいれると、どうせ戻ってくるであろう夜音のためにも朝ごはんを作り始めた。
《配信忘れてた》
「お疲れ~!」
ーお疲れ!
ーおつ
ー今日は遅刻していない
ーすご
夜はblancの配信だ。
やっぱりこの環境が安心する。
「今日も【world war】します」
blancの配信や動画のほとんどはこのゲームだ。
いまだに人気が衰えず年々プレイヤーが増加している。
そして、何故か自分の動画を参考にする人が多いらしく再生回数も伸びている。
登録者もどんどん伸びている。
「最近動画出してないなぁ」
忙しくて編集者さんに動画を送れていない。
ちなみに編集者さんは俺が入っているクランTRの人だ。
俺は現役引退と公表したはずだが、クランからは何も言われていない。
こちらとしては助かってはいるが、何故何も対応しないのかが不思議だ。
ー配信切り抜いたら?
ー 切り抜き師のする事なくなる
ーじゃあもう出さなくて良いんじゃね?
ー配信だけでもいい
ーそれな
このチャンネル公式の切り抜きの人がいる。
といっても昔から切り抜いてくださってたので公式にしただけだが…
ゴーグルを着けて、オンライン状況を確認する。
何人かやっていた中にendmがオンラインで、ロビーに居た。
彼女はたまにしか動画や配信をしていないが、今しているので招待を送るか迷った。
ーendm呼ぼ!
ーあり
ー二人でやってるのあんまり見ない
ー練習会とかあるらしい
ーまじ?
ー引退とは…
ーとりま呼ぼう!
視聴者も呼んでほしい人が想像以上に居たので呼ぶことにした。
招待を送ると、秒でチームに入ってきた。
急いで、通話アプリでendmと繋ぐ。
「あ、ごめん、配信中だけど大丈夫?」
『あ、はい。大丈夫ですよ』
ー来たー!
ーやっぱ聖女
ー可愛い!
ー神
もはやendmファンしか居ないようだ。
俺と彼女しかロビーに集まりそうに無いので、二人で行く。
『お久しぶりかもですね』
話題に、困っていると彼女の方から話しかけてくれた。
一昨日、VTuber配信の1つ前の日は一応練習会ではあった。
だが、行かなかったので久しぶりということになるかもしれない。
「最近忙しいから……」
『そうみたいですね、頑張って下さい』
VTuberの事は内緒にするよう頼んでいる。
だからおそらく身バレとかは大丈夫だろう。
「endmは確か高校生だったよね?」
同じ年齢だったのをこの前聞いたのは覚えていた。
だがやはり態度が高校生の域を超えていた。
『はい、そうですよ』
ーえ?
ーまじか
ー同じ高校にいないかな
ー居たらやばい
ーすぐ分かるだろ
俺の変わりに気持ちを代弁してくれた。
endmの何か悲しそうなはっとした声が聞こえた気がする。
だが、触れていいのか分からなかったので無視だ。
「よし、やるか」
自分達がワープした地点は激戦区その物だった。
武器と回復がたっぷりと得られる場所であり、敵が大量に集まる。
俺はとりあえず落ちている武器を拾う。
大抵落ちている武器よりも宝箱から出した方がラング度が高い。
下から白、緑、青、紫、金、赤の順だ。
落ちている武器の最高は青で、赤は滅多に現れない。
自分がよく使うサブマシンガンとショットガンを拾う。
どちらもランクは緑だが、初動なら問題ない。
初動はほとんどがシールドを持っていないので狩りやすく、狩られやすい。
ランクマッチは敵を倒すとHP及びシールドが50%回復するので、初動は攻めた方がいい。
「endm行けそう?」
『はい』
どちらも武器が揃ったところで、人が居そうな建物へと向かった。
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