第21話 化け物の無双

 「あの家の中に二人いる」



 『わかりました。行きましょう』


 endmと家の方に向かう。

 初動ということもあって、銃声がいろんなところに響く。

 そのため足跡が敵側からは聞こえづらい。


 二階建ての家で、敵は二階を漁っていたのが見えた。

 

 「俺が前行くからカバー頼んだ。」


 『了解です。』


 サブマシンガンを構えて、前に進む。

 足跡の音で二人が同じ部屋にいるとわかった。

 ゴリ押しをして一人をダウンまで持っていくか、それとも二人のシールドを割る必 要があるだろう。

 正直endmに任せたらその瞬間勝てそうな気配はするけれど、

 自分の配信なのでプライドが譲れない。


 後ろにendmがいるのを確認しながら、部屋に突撃する。


 案の定敵二人が銃を入れ替えていたときだった。

 

 とりあえずでサブマシンガンを撃ちまくる。

 ドアが一人スペースだったので撃てるのは俺だけだった。

 そして、あまり胴体が出ないように意識する。



 「一人割りました」


 一人を集中的に打ちまくっていたので、割れるのは当たり前だった。

 だが、相手側のカバーとエイム力が高く、あまり弾が当たらなかった。

 自分も結構ダメージを入れられたので回復をするために引く。

 endmは横で敵が来ないように見守ってくれている。

 

 「突入してもいい?」


 相手が回復するタイミングでカバーが重ねられているのはわかっていた。

 だから割れた今がチャンスだ。


 『いいですよ』


 俺はショットガンに持ち替えて部屋に突撃した。

 銃声が止まったタイミングで行ったため、一人はリロード中、もう一人は回復が終わったところだった。

 

 少し遅かったなと思いつつ打ち始める。

 endmが入れるようにドアの前ではなく入り切るしかない。


 

 

 だが、一瞬で回復終わりの敵が死んだ。

 疑問に思いつつ、もう一人の方を撃つ。


 −強…

 −被ダメ0はやばい

 −最初のキル何?

 −もう驚かないわ

 −二人が超人すぎる

 −白い流星全員集まったら終わりだ


 もちろん2vs2の勝負には勝てたが、1キル目はendmに取られた。

 キルログを見ると、どうやらスナイパーで抜いたようだ。

 あの近距離で抜くとか、化け物すぎだとは思った。

 

 『あの距離で当たるもんなんですね』


 普通は当たらないんだよなぁとは心の中で思いながら、


 「さすがだな」


 こんなにもエイムが良くないのでもっとうまくなりたいと思った。

 

 自分は確定で当たる位置まで近づいて撃つ方が安定しているので仕方ない。


 

 「他にも敵がいるから行くか…」


 『ですね』


 今度こそはキル2人とも取ってやるという気持ちで敵がいる建物へ向かった。








 『もういなくなりましたね…』


 「う、うん」


 endmは4キル

 俺は2キルだ。

 しっかりサポートしたようにも見えるが詳細は違う。


 彼女はさり気なく別パーティも殲滅していたのだ。

 どこでやったかは分からないが敵にはしたくない。


 −ああ…

 −化け物だ

 −いやblancも弾避けすぎ

 −endmチート疑惑


 別に疑っているわけではないが、どうやってあんなにも弾を当てられるのか気になる。

 だから一度くらいはこの目で手元のプレイ映像を見てみたいなとは思った。

 白い流星はオフであったことがない。

 大会に出たときもオンライン大会だけだったので会ったことはない。


 『安全地帯が縮小しているので、移動しましょう』


 「そうするか」


 3チームも全滅にして街で銃声をなり響かせていたので、別パが来そうだ…

 武器も回復も充実しているので移動する。



 


 「危な!」 


 急に目の前から弾が飛んできた。

 即座に反射神経で避けられた。

 おそらくスナイパーだろう。


 『どこでしょうか』


 前には森林が広がっていて、隠れるところも多い。

 撃たれたところの方向もわからないので場所を特定できない。


 「どこだろうなぁ」


 このランクマッチはレジェンドとエキスパートが集まるマッチなので、

 一筋縄では行かない様子だ。

 森に火をつければ、ダメージ表記でわかるが火を付けられるような武器を今持っていない。

 範囲攻撃の武器も持っていない。

 だからするとしたら……


 『あ、倒せました』


 「ん?」




 キルログをすぐに見ると、endmがキルしている表示が出てきた。


 「まじじゃん…」



 俺がどうしようか作戦を練っているときに倒したらしい。

 

 気が付かなかった理由は、

 サイレンサースナイパーというほぼ銃声がならないスナイパーで撃ったからだろう。

 ダメージ量が普通のスナイパーよりも減るとはいえ、

 銃声がほとんど響かないという利点から使う人も多い。


 『一人でしたね』


 ダウンではなく、即キルだったのでそういうことだろう。

 当たり前のように物資を漁るendmに恐怖を少し感じた。







 自分が前に立って進むはずが、いつの間にかendmにキャリーされていた。

 俺がダメージを入れてもすぐキルへと変わる。


 『あ、また倒してしまいました。すみません』


 このセリフを何度も聞いた。

 キルした人にしかキルptが入らない。

 だが、アシストにはアシスト用のptが入るので別に問題ない。

 それよりもその言葉が倒された敵への煽りにしか聞こえなかったのは気のせいだろうか…



 今は2vs2の状況だ。

 どこにいるかは分からないが、もはやendmに任せてもいいんじゃねという気持ちを載せていた。

 そんなことを言うと、絶対彼女は謙遜するだろう。

 いっそ撃つフリでもしてよっかなとか意味がわからない考えを浮かべていたら、


 『最後の敵見つけました。』



 トイレ行ってる振りしてても良さそう、とか思いつつ俺も応戦した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る