第18話 一人の無双
俺は倒すのもほどほどに、
場所を配信で悟られるので、転々と移動した。
すると、小さな声が聞こえた。
『ごめん、ネスイ』
この声は紛れもなく春陽さんの声だ。
チームメンバーを見てみると、春陽さんは死んでいた。
「大丈夫です」
実際勝てる自信は残っていた。
といっても、無理矢理な突破は被ダメージを稼いでしまう。
なので、慎重に行動する必要はあった。
『頑張って…勝ったら何かご褒美あげる』
別に要らないんだけど、と言いたかったがここは乗っかっておいた。
「そうですね…」
特に欲しいものはないなぁと思いつつ、戦いの作戦を練っていた。
とりあえず、今いる廃墟の屋上から徐々に階段で降りていき、制圧しようと思う。
この場所はマップ場で一番攻めにくい位置にあるからだ。
何分後かに攻められるのが分かっているならそれに対しての作戦が大切だ。
『じゃあ、私の事、春陽と呼ぶ権利!』
ーまじか
ーいいなぁ
ー要るか?
ー要らなさそう
ー欲しい!
断りにくいご褒美が提案されてしまった。
ここで断ると春陽さんが困り、逆にうなずくと欲しがってるかのように見える。
ただ困らせたくはなかったので、仕方なく乗った。
「分かりました。頑張ります」
ちなみに俺が勝たないと貰えないので、勝つしかない。
とりあえず春陽さんに会話を任せて、俺は制圧する。
今残り人数は20人を切った。
春陽さんの方に序盤、大量の敵が行ったので残り人数が大分減ったのだろう。
作戦通り敵が何人か下から入ってきた。
俺は下で迎え撃つ。
敵が多すぎて避けたい気持ちもあった。
横に飛び出るのも有りだが落下ダメージがあるので極力避けたい。
敵はしっかりと作戦を作っているようだった。
前衛に盾使いを置き、その後ろに戦士がいる。
奥には聖魔や魔法使いなどが居る。
俺は戦士の攻撃を見切って避けながら近付く。
いつの間にか春陽さんの話も止まっていた。
「
近くの物陰に隠れて短剣を上にかざすと、
大量の獣が出てくる。
森で狩りまくった結果ゲットした技だ。
これなら近付く必要が無く、人数を減らせる。
盾使いの頭上を行き攻撃を始めたので、防御が弱い職業がやられていく。
チラッと見ると、残っていたのは盾使いや忍者などだった。
このゲームを初めて二時間と少ししかたってないので、相手の唱える技が分からない。
だから反射神経で避ける。
『すご…』
春陽さんの声も紛れて聞こえた。
コメントを見る余裕もなく避け続けた。
盾使いは防御を固める技を使っている。
忍者は遠くからクナイで攻撃するものも居れば、地面からつるなどを生やして攻撃するものもいた。
厄介だと思いつつ少しずつ近付いた。
「短剣の加護!」
これはレベル20に達成したときに得た技だ。
コメント欄でも盛り上がっていてどうやら入手方法が特殊過ぎるらしい。
入手条件には、レベル20で初期装備から変動なし、ならびに0デスが条件だった。
効果も化け物で、回避盾の初期値を一時的に二倍、そして、初めの10秒は無敵という公式チート技だった。
俺は10秒の間で一気に攻めた。
結果的に残り人数は1人まで減らせた。
『あれ、あと一人は…』
そう、俺も謎だった。
ここは全滅したはずだったので、どこに居るかは分からない。
このゲームもどんどん移動可能範囲が狭まる様で少しずつ場所は特定されていく。
静寂な時間で包まれている。
大分戦闘範囲が狭まっているが未だに見つからない。
俺は何か嫌な予感がして、建物の屋上まで上がった。
すると、プレイヤー本人にしか分からない小さな音が聞こえた。
「これは、地下、か?」
ふと思って階段を素早く降りて地下まで向かった。
地下は車が物陰となっていて、少し広い。
すると、目の前から戦士が現れた。
急な発砲を俺はギリギリで避けて、車の裏に回った。
しゃがみながら移動して足音を消す。
移動しながらコメント欄を見た。
コメントの一つに、戦士と回避盾は回避の腕前が高くないと相性は最悪になるらしい、というものがあった。
腕前には前作で世界に注目されたっていうお墨付きがある。
俺は覚悟を決めて、立ち上がった。
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