第17話 化け物
ーなんだこいつら
ーは?
ーおかしい
ーヤバイって
ーゲーム性が…
ーモンスターがかわいそう
俺と春陽さんは今、人気上昇中のVRゲーム【AFG】をしている。
もうかれこれ二時間経ってしまったが、装備はなんと初期装備のままだ。
「まだ俺たち0ダメージですね…」
『レベル上げもきつくなってきたね』
配信の事を忘れて、ひたすらレベル上げをしていた。
春陽さんも技を避けるのが上手く、お互い装備を変える時間がもったいなかった。
そして、避けまくった結果、何も当たらなかったままレベルだけが上がっていった。
「そろそろダンジョンに行きますか」
ーやっとか
ー行かないかと思った
ー長かったな
ーもうどこでも行けそう
さすがにこの作業も飽きてきたので、何か面白味が欲しいところであった。
『だね、とりあえずリス地に戻ろう!』
来た道を戻って最初の広場まで戻ってきた。
そして、忘れていた状況が起こってしまった。
『何か人だかりが出来てる…』
春陽さんの指した先を見ると、あり得ないほどの人が居た。
嫌な予感でいっぱいだったが、気のせいかと思って無視しようとした。
けれど、間に合わなかった。
〈あれ、例の二人じゃね?〉
〈本当だ!〉
〈会えてしまった!〉
〈フレンドなりませんか?〉
〈ぜひ、私のギルドに〉
大量の人数が自分達の方へやってきた。
これはいわゆる配信者特有のゴースティングと言ってもいいだろう。
昔から自分もそういう状況が度々起こった。
状況をどう潜り抜けるか考えていると、
『じゃあ、皆で戦おう!』
春陽さんがとんでもないことを言い出した。
もちろん乗っからない人は居なかった。
俺はこのまま春陽さんの方の説明に任せた。
『私とネスイの二人チームで他は全員敵で』
「は?」
流石に勝てる気がしなかった。
ここにいる人数全員を合わせて100を越えてるだろう…
つまり最低でも2vs100という意味の分からない戦いが始まることになる。
しかも俺たちは低レベル底辺装備だ。
俺はまじかと頭を抱えるが、それに春陽さんは気がつかなかった。
『じゃあ専用部屋作ったから入ってきて!』
ここに居る人は彼女に従って消えていった。
俺もそっちの方へ行く。
いかにも戦闘用マップという感じがした。
色んな廃墟らしき建造物が立っていて、物陰も多い。
俺と春陽さん、そして他の人でチームを変えた。
本気で戦うつもりだろう。
このマップは始まるとボイチャがチーム同士でしか出来なくなるという説明を春陽さんが話した。
ちなみに二人の声は配信で流れるので、何分後かに作戦がバレてしまう。
『じゃあ、始めるね!』
その言葉と同時に再びテレポートした。
おそらくここがリスポーン地点だろう。
どうやらどれかの廃墟の一つの建物にワープをしたらしい。
「はぁ、まじでやるのか…」
思わず出てしまった声に春陽さんは苦笑する。
『ごめんね、でもそうするしか取り巻きをかわせないの…』
ーこれ勝つのか?
ー負けるだろ
ーいや、こいつらなら
ー春陽さんだけならまだしもネスイさんが居るなんて
ー化け物コンビ
配信でも勝負の行方は分かれていた。
「仕方ないのでやりましょう」
俺は腰に刺してある短剣に手を掛けた。
彼女もやる気があるようで腰に手を当てている。
『私はこっちを!』
「では俺はこっちを」
春陽さんとは逆方向の場所を目指す。
ちなみに、このゲームでは遠くてもチーム同士でボイチャが使えるのには驚いた。
なので、配信中に黙るような事にはならないようになる。
敵同士などは、近づかないと喋れないのは周知の事実だ。
だが、今回は二人で喋る暇もなく敵に接近する。
〈やってやる!〉
20人くらいが固まって攻めてきていた。
半分が魔法使いなので、本気で倒しに来ているのが分かった。
俺はさっきゲットしたスキルを行使する。
「聖剣!」
自分の持っていた短剣が青く光った。
攻撃力アップのバフが付いた。
この技があるから初期装備でも上手く戦えたのだ。
〈どんどん魔法を放て~!〉
リーダー格の様な人が声を出す。
つられて、色々な属性魔法が向かってきた。
氷属性魔法は大体が短剣で壊せる。
なので、短剣で素早く壊しながら
魔法を避ける。
このゲームの属性はもう少しあるのだが、あえて相手も避けにくい魔法を選択してきたようだ。
〈当たらない!〉
〈逃げろ〉
〈撤退だ!〉
相手の隙が増えているのを確認して一気に攻める。
回避盾は素早さの項目の初期値がとても高い。
なので、すぐに相手に近づいて短剣を振り回す。
敵を一掃したのを確認してどんどん前に進む。
春陽さんの声は聞こえないが、おそらく黙っているだけだろう。
まさか、春陽さんが死んでいるとは思わず、ずっと前に進みだしていた。
[春陽のゲーム部屋]
ー春陽さんダウン
ー仕方ない
ー20人相手じゃどうしようも
ー強いなぁ
ー白海は?
ーえ?
ー生きてる!
ーは?
ーやば
ー本物の化け物じゃん
ーこれもしかして…行く?
ーいや、流石に…
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