第6話 チーム練習①
もう時間は午後10時を過ぎて、夜音も家に帰った。
俺は夜音に配信を見ていたことは言わなかった。
見ていたことを知られたら、しばらく口を聞いてくれなさそうだからだ。
そして、もうすぐチーム練習の時間だ。
チーム名は、白い流星
メンバー数は俺を入れて4人。
といっても、今は本格的なチームではなく、どちらかと言えば全員がenjoy勢だ。
練習というのは見かけで、参加も自由だ。
けれど定期的に皆で話すと楽しいので、全員いつも参加する。
まあ、練習がなくても夜自由に通話で話すんだが…
ちなみにもしこのチームが本気のプロチームだったならば、
VTuberをしようとは思わなかった。
けれどそこまで今は本気でするようなチームでは無いので、仕事を断らなかった。
だが、何年か前までは世界にも名が知れ渡るチームではあったのは確かだ。
『よし、やるか〜!』
俺が通話に入った時、もうすでに全員集まっていた。
『blanc!あの件はは本当なのか?』
挨拶無しで急に詰めてきたのはlucus,このチームではオーダーをよくしている。
高校2年生らしく、1つ上の先輩ではあるが、敬語を使うと何故か怒られるのでタメ口でよく話す。
今日の朝、VTuberをやることについてとりあえず伝えておいた。
そこから返信などは見ていなかった。
というよりは忘れていた。
『急にびっくりした〜』
とてもかわいらしい声でそう言ったのは、wartという女性プレイヤーだ。
ちなみに年齢は聞いたことはないが、中学生くらいのような声だ。
担当、というよりは技能としては索敵能力が化け物だ。
足音を感知して、ほとんどの場所を見破られるという、
チーターと言えるような存在だ。
『それは本当にごめん、急だったし承諾したことは謝るよ』
今はこんな状況でも昔は最強チームとも言われたのだ。
急にオーナーが忙しくなり、もし大会などに出ることになったら不利になる。
『blancさんに皆驚いてましたよ。でも別に大丈夫ですよ。
あなたは十分頑張って るから』
優しい声で包み込んでくれるように言ってくれたのは、endmだ。
彼女は俺と同じ年齢だと聞いたが、
もうお母さん的な役割にしか思えない。
どんな時があっても優しく接してくれる。
表現するなら、天使というのが正しいだろう。
「あ、ありがとう」
俺はそう言うと、【world war】を起動する。
最近はVRゴーグルを使ってる。
今日も今日とて手に持って、装着しようとした時、
『でも、こんな時期にVTuberをするだなんて、しかも急に…』
wartは遠回しに、何でこんなことになったか教えてくれとでも言っているようだっ た。
「えっとね…色々ありまして」
この事は秘密事項なので、当然言えない。
よく考えたら、プリームの配信への乱入した本人は秘密にするらしい。
ならば俺は何でVTuberになったんだ…?
小さな疑問を頭の中で浮かべていると、
『wart、人には言えない秘密はあるんですよ』
天使がかばってくれた。
wartはそう言われてたが、『ちょっとくらい…』という言葉を連呼していた。
『まあ、とりあえずやろうか』
lucusはそう言った。
俺もそうだなと思い、ゲームを起動する。
彼からチーム招待が来たので素早く入り、
ロビー画面で、wartとendmが来るのを待つ。
『それにしても、blancはどうやったらあんな遭遇を2日連続でするんですかね』
endmの少し苦笑が混じった声と一緒に聞こえてきた。
確かに、ランクマッチの最高ランクで、チーミングとチーターに会う時点で珍しい。
その上で、2日連続で当たる。
よくよく考えたらどんなゲームのガチャのピックアップよりも確率は低そうだ。
ちなみに、運営はチーミングとチート行為に対しての謝罪を述べて、早急に対応した。
今までも対応していたそうだが、今回はそれまでよりも頑張ってくれたらしい。
『本当にね、何でだろうね…』
俺も正直真相は分からない。
配信もマッチングの遅延を設定で行っているので、合わせて入るのは難しい。
まあ、普通は当たらないので心配するほどでもないが…
『blancさんはやはり最強ですよね』
wartも含めて皆、あのシーンを見ていたんだろう。
でも、何度も言うが、もっと上手い人は居るので最強ではない気がする。
『VTuberになってからゲームはやるのか?』
lucusが興味津々で聞いてきた。
これに関しても悩んでいた。
けれど、FPSを始めとしたゲームなら結構人気になりやすいだろう。
『まあ、やれるならやろうと思ってるよ』
俺がそう言い終えたころにはロビーに四人集まっていた。
『さて、では行きますか!』
オーダーの掛け声で俺を含めた3人も気合が入る。
まあ、結局、雑談をずっとするから、気合はいらないんだけどな…
チーターやチーミング行為は今までよりも対策が強化されているので、危険性は少ない。
それでも、普通に強い人が溢れているので油断はしないでおこうと思い、
俺もちょっとだけ気合を入れた。
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<用語解説>
オーダー…チームで指示を出す人、言わば司令官のようなもの
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