1章 新参VTuber誕生

第5話 プリームの配信

『はーい!プリームの登場だよ〜』


 勉強しながら待っていると、夜音の配信は始まったみたいだ。


 今日の配信はマシュマロ返しと雑談をするようだ。

 コメント欄も盛り上がっている。




 配信画面ではキャラクターが動いている。

 紫髪の二つくくりで目も少し紫がかっている。

 髪の両端に赤い髪飾り、頭の上にも何か金色の物を着けている。

 首には赤い真珠がぶら下がっていて、どちらかと言えば巫女のイメージだ。


 服はピンク色の和服、胸元にはピンク色のリボン

 そして何より服を肩まで下ろしてるので凄く可愛い。

 

 ちなみに正式名称は、プリーム・アラモートらしい。

 どうしてそんな名前なんだろうか。


 『さて、ではでは〜早速読んでいきますよ!』


 張り切った可愛らしい声が聞こえる。

 いつも隣で聴く夜音の声よりも一オクターブ上だ。

 彼女からは想像がつかなかった。





『こんにちは!

 率直にお聞きしますと、

 前回の配信時に一瞬出てきた男の人は誰ですか?

 その人凄くゲームが上手かったので一緒にやってほしい…』




 まさかの最初にそのコメントを拾うのか…

 普通は盛り上がったあたりで読みそうだ。

 コメント欄も、気になっているような声が次々と上がっている。


 


 ちなみにその人がVTuberになることはずっと内緒だ。

 だから、どう乗り切るのか楽しみだ。

 そう思いながら配信を見続ける。




 『あー、HESKALの関係者だよ~』



 いや、それでいいのか?


 でも、何故か視聴者はそれで納得している。

 ならまあいいか。


 いや良くはないよ????


 『よし、次!』


 勢いよく声を出して、次のマシュマロを読み始めた。


 『こんプリ〜、最近夏休みが明けてしんどそうですね…

 ついこの前の配信で高校生だと言っていたのを聞いて聞きたいことがありました。

 テスト結果を教えて下さい、』


『そ、それはちょっと…』



 最後の方は声が若干震えていた。

 まあ、少し大惨事になっていたから言えるわけがないだろう…

 赤点ギリギリなんて、視聴者が知ったら勉強会が始まりそうだ。

 いや、それでも良いんだがな。


『えっと〜、全部8割前後かな』



 嘘にもほどがある。

 この高校の赤点は大体、3割以下、こいつは4割ギリギリだ。


 ―blanc/本当かなあ……


 思わずコメントを送信してから気が付いた。

 今使ってるのは配信でも使うモニター、

 つまり、自分のアカウントがそのまま入っていたのだ。

 気がつけなかった俺が悪い。

 そして案の定、見逃してくれるわけもなく…


 


 ―本物?

 ―チェックマークある!

 ―がちか!

 ―ファンだったのか?

 ―誰?

 ―最強FPSプレイヤー

 ―まじか




 コメント欄は俺の話題で持ちきりだ。

 少し申し訳ないことをしてしまった気がする。

 

 意外にもblancという名前は世に広がっている。

 と言っても2日連続でトレンド1位を取ったのだから当たり前か…


 『blancさんってあの!?』


 彼女も少し驚いている。

 言っておくが、登録者数は当然夜音のほうが多い。

 実際220万ほどの差がある。

 


『あの、実は憧れてて…』


 『いつか、コラボしたいですね!』


 乗り気だ。

 まあ、ずっと横に居たんだけどね…

 

 コラボについてなんかする方向で盛り上がっている。

 ちなみに申し訳ないのだが、俺は全くする気はない。



 そして、視聴者も徐々に俺の送ったコメントに触れ始めた。


 


 ―ていうか本当か?ってどういうこと?

 ―もしかして…悪かったり?

 ―ありえる

 ―前回もテストの点数教えてくれなかったね

 ―中学生のときのやつは教えてくれたのに…




 夜音は中学生の時は考えられないくらいに頭が良かった。

 それこそ偏差値は70を越える化け物だった。

 なのに今はたぶんだが推定60あたりまで下がった。

 VTuber活動も原因の1つなんだろうけど、ここまで人気だと何も言えない。

 彼女にも人を笑顔にさせたいと気持ちがありそうだからだ。


 『あ、えっと、ね〜』


 絶対に打開策を考えている。

 それは誰がそう見ても明らかだった。

 だから、もう言い逃れは出来ないだろう。


 『まあ、大丈夫だから、ね?』


 


 【ね?】を可愛く言って、なんとかごまかしていた。

 でもいつかはバレて苦しむのは彼女なんだろうなと画面の前で苦笑する。





 『マショマロ次、読みまーす』


 彼女は話を戻した。


『今の一番のプリームさんのブームはなんですか?』


 一番のブームって改めて考えると難しい。

 というか俺は家でゲームばっかしているのでそこまで関係がない気もする。


 『最近は、スマホゲームかな。いつか配信でやるかもね』


 言われてみれば、最近よくスマホを触っているなと思ったらそういうことらしい。


  『さて、じゃあ次も読んでいこうかな』


 さっきから内容にしか触れていなかったが、後半は進行の仕方を学んでいた。

 とりあえず脱線しすぎても最終的に戻せれば問題はないらしい。

 視聴者のコメントにもたまに触れていた。

 

 そして、スパチャ、いわゆる投げ銭にはほぼ確定で触れる。


 まあ、色々勉強になったところで、一時間が経過した。

 そろそろ、ご飯を作ろうかと思い、キッチンへと向かった。





 今日はチーム内の練習がある。

 別に参加は自由だが、楽しいので基本みんな居る。

 大会も控えているらしい。

 世界一を決める大会への進出もかかっている。

 今回で第7回だが、俺は第1回と第2回で2連覇の世界一を取っている。

 

 俺は出る気はないのだが、他のメンバーは出る気満々だった。


 

 よく考えたら世界から注目されて当然だなと感じた。



 ちなみに第3回からは、とある事が原因で止めた。

 それを後悔したことはない。

 今は趣味程度にゲームをしている。

 

 ゲーム内の世界ランキングがシーズンごとに発表されるが、

 そこではトップに位置できるように頑張っている、






 ご飯を作り終わって、机に用意したと同時にドアの開く音がした。




 配信が終わりやってきたなと思い、席についた。


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【後書き】

1章スタートです!

今後この作品をよろしくお願いします!


<用語解説>

マシュマロ…配信者間で使われるこの言葉は食べ物じゃないです。

      いわゆる質問箱です。

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