第4話 またトレンド

「じゃあね!」


夜音は家を出た。

辺りはもう夜だ。

あれから外食を済ませ、

ショッピングモールで色々遊んで、帰ってきた。


帰ってきた時には夜ご飯の時間だったので作って

家で一緒に食べた。

正直いつもどおりのような一日ではあった。


(おそらく、これから生活変わるんだろうな)




この関係もVTuberになると変わる気がしている。

楽しみではあるが不安でもある。

機材を置くためのスペースも必要だし…

こんな事を考えていると、落ち着きがなくなる。


だから、俺はとりあえず予定になかった配信をする。

いわゆるゲリラ配信だ。

まあ、最近はずっとこれだが…

というか2日連続配信かもしれないが。


視聴者と絡むと結構心を落ち着かせられるからちょうどいいのだ。



俺は椅子に座り、ゴーグルを装着する。

配信が始まったのを確認してから、



《ゲリラ配信するぞ》



「2日連続配信、始めるぞー」


俺は元気な声で視聴者に呼びかけた。


ー2日連続とか珍しい

―明日は雪か?

―いや、隕石降りそう

―全く信用なくて草

―仕方ない、日頃の行いだ

―まあ、学生さんだし…


「さて、今日も【world war】をやりますか」


画面ではもうすでに戦闘前のカウントダウンになっている。


―今日もトレンド来るか?

―流石にそれは無いだろ

―いや、こいつなら…

―ありえるな

―blanc 無双 の未来が見えた

―本当に起きそうだなw




視聴者にはなぜか期待されている。



「さて、やりますか」


やっぱり、持つのは安定のリボルバーだ。

もう一つは今回はスナイパーだ。

特に理由はないが、強いて言うならアップデートで偏差が結構大きくなったので慣れたい。


「あ、敵だ」


今回はソロでやるので、敵は当然1人チームだ。

急いでしゃがんで様子を見る。


―敵さん、終了のお知らせ

―未来予知かな?

―敵頑張れー

―勝ったら世界ランキング実質5位だよ

―ファイト〜


右目でちらりとコメント欄を見ると、

何故か敵側に応援が寄っている。

少し苦笑しながらもマウスをしっかりと握る。

この距離ならワンちゃんあれが出来るかもしれない…




「チェックオン」




俺は少しカッコつけながら、スナイパーで一瞬で照準を合わせて、撃つ。

そして、それはきれいに頭に当たった。


―まじか

―トレンド確定

―流石にそれは無理だろ

―チートかな

―頭当たるとかヤバ

―何でランクマッチでクリップ狙うんだw


「はは、当たるとは思わなかった」


偏差と距離を考えれば、大体出来る。

ちなみにそんな事をせず、スナイパーで慎重に撃っても当てれた。

つまり絶対必要のないことをただやっただけだ。


ちなみに当たったからよかったが、

当たらなかったらただダサいやつになっていただろう。

まあリスクって大事だ。



その後も順調に進んだ。

まあ、敵に遭遇しなかったのが正しいが。


「残り3人か」


俺を省いて3人、この安全地帯から考えて今建物は3つある。

俺はそこに入らず真ん中の道路を走っているので、

たぶん1つの家に1人居るだろう。

とりあえず近くにある建物に入る。

すると、明らかにありえない光景を感じた。


「え?」


―何でそこに3人いるの

―そんな家大きくないぞ?

―もしかして…

―あれか

―でも、blancさんなら勝てそう

―勝ったらヤバいぞ

―本当にトレンドに入りそう…




おそらくチーミングだ。

これは、fps界にとっては暗黙の禁止行為だ。

どういうことかと言うと、本来敵同士な人たちが戦場でチームを組むことだ。

ソロの場合、数の有利さで押し勝ててしまう行為

悪質なプレイヤー行為の1つとして業界では有名だ。


攻める前に、通報だけはした。

まさか高ランク帯にまだこういう奴らが居たとは…

少し呆れる。


だが、後はこいつらを実力で叩くだけだ。



俺は深呼吸をした後、


「さて、やりますか」


キーボードとマウスをもう一度握り直して、一気に建物に入った。

この家は2階建てだ。

とりあえず1番上の屋根から侵入する。

その時に足音を出さない。

せめて、先に攻撃しないと負けるリスクが大幅に上がる。

おそらくその攻撃はスナイパーによるヘッドショットでの1キルが必要だろう。


「go!」


俺はリボルバーで屋根を一発で壊して、上から攻撃を開始する。

予想通り、目の前には3人の敵が居た。

まず、相手が反応する前に、スナイパーに切り替えて即座に撃った。

もちろん照準を合わせて冷静にではあるが。


しっかりと頭に当たり、1人キルした。

残りは2対1となった。


相手は二人ともアサルトライフルを持っていた。


さすがに2人とも俺の奇襲に気が付いたようだ。

ずっと上から撃ってくるが、銃声が消えるまで待つ。

その間にスナイパーをリロードしておく。


二人ともアサルトライフルを全弾打ち終えたのを確認して、リボルバーで一瞬だけ顔を出して撃つ。

頭には当たらなかったが、仲間の1人のシールドが割れた。

もともとのHPがあまり無かったのだろう。


1人は一階に下がった。

つまり2階には1人しかいない。

その瞬間に俺は屋根から中に入った。


この状況は1対1だ。

これを待っていたのだ。

数的不利がない今やるしかないだろう。


「当たれ!」


俺はリボルバーを撃つ。

それは胴体に当たったので倒れなかった。

いつもならここでヘッドを当てられるのだが、

チーミングにあって興奮しているのだろうか。


相手はサブマシンガンで撃ってくる。

そいつの武器構成はこれで確定した。

アサルトライフルとサブマシンガンだ。


リボルバーのクールタイムを待つ間、常に相手に銃口を向けながら、弾を避ける。

だがその弾はほとんど俺には当たらない。

相手のエイムが悪いからではない。

むしろほぼすべてが胴体に当たりかけているだろう。





だが俺はその弾を華麗に避けるのだ。





この弾を避ける技術こそが、俺が世界に注目されている理由でもある。

予測を立てつつも、動体視力でほとんどをカバーする。


流石に近距離過ぎると効果は発揮できないので、距離を詰めることは出来ない。


けれども相手の弾は有限だ。

下の敵が上がってこなかったら問題ない。


相手が弾切れしたその瞬間にリボルバーを撃って、相手をキルした。




「後は一階だけだ!」




おそらく回復を始めている。

たぶん使っているであろうアイテムの回復時間は8秒だ。

何度か使っているのだろうが、出来るだけ回復量を抑えたい。

急いで階段を降りる。



そして、降りた時、横で回復をしていた。

その回復が終わる時間を知らない。

だがここで、HPを増やされるのは面倒だ。


だから、ここはスナイパーで賭けに出る。


なんとなく、感覚だけで銃口を敵に向ける。

流石に距離はある。

でもここは元プロゲーマーの意地が必要だ。




偏差を計算し、距離の間合いを考える。


その結果導かれた角度を微調整し、撃つ。






「あ、勝てた…」





俺は勝った後、しばらく唖然としていた。




―バケモン

―やばあああ

ーこれでもランクは一番上のマッチだぞ?

―これは世界1だろw

―大会復帰期待

―チーミングに勝てるとかやば

―おめでとう

―さすが!

―これはトレンド入るぞw




視聴者に方々が次々と称賛される。

俺も少ししてから笑顔になる。

だが、それと同時に少し頭が痛くなる。

少し無理をしすぎたみたいだ。

ここまで本気でやるのは久しぶりだ。



そしてこのままいい調子でいくつかマッチ数を重ねた。

もちろん1位率も結構高くて平常運転だ。



6マッチくらいやったところで、

「そろそろ終わるか。」



―おつ〜

―おつかれ〜

―お疲れ様です!

―次も楽しみにします!

―お疲れ様!





俺は配信を切って、ゴーグルを外す。

すると同時くらいにパソコンからも通知が来る。


チームの皆からの称賛の声だ。

おそらく配信を見ていたのだろうか。



やっぱり、他の人達と喜びを共有するのは楽しいな。

自分のプレイを皆で楽しむ事は悪くない。

もっと感じたい!


だから…




(やっぱりVTuberの道を選んで良いかもな…)




そう思えた。




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【後書き】

序章読んでいただきありがとうございます。

これはあくまで最初のプロローグにすぎません。

これから彼の活動を温かく見守ってください。



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