第52話 夜の公園に通りかかったら…
「行かないでいいの?ファミレス。」
「うーん、別に良いかな。清香も栄一君が送って帰っちゃったし。」
「アリスがいいんならいいんだけど…」
「あっ、公園だ。寄ろうよ。」
家の近所の公園を見つけるやいなや、ブランコに座って漕ぎ始める。隣に腰掛けてアリスが一通り満足するまで眺めて待つ。
――これは、公園で語るやつだ。ここか、ここが勇気を振り絞る時なのか。
「やっぱりさ、1番楽しいのはいつもの4人なんだよね。」
漕ぐのに満足したのか、止まったアリスが突然口を開く。さっきの続きみたいだ。
「確かに、一緒にいる時間も長かったし気楽な4人ではある。」
「そう!そこなのよ。他にもすっごい盛り上がる友達とかもいるんだけど、ちょっとズレるというかどこか気を遣うのよね。その点、清香や栄一君なんかは全く気を遣わなくていいし、なんて言うか…空気が合ってるのよね。きっとこれが親友になれるかどうかの違いなんじゃないかな。」
「そういうものなのか。よく分かんない感覚だけど。」
「そりゃ只男は空気が合う人としか友達になってないからよ。北王子君達と友達になってみたら?きっと言ってることが分かるよ。」
「うーん、遠慮する。北王子君はきっと敵視してるから無理だろうし。」
「あら、敵なの?何かした?北王子君は親切だし話も上手だし勉強もスポーツもできるのに謙虚でとっても良い人じゃない?」
「…そんなに褒めるならアリスが親友になればいいじゃん。」
「ん?なんかちょっと怒ってる?今も言ったけど空気感が違うから無理なのよ。さっき告白されたけど。」
「…告白!?それは…カミングアウト的なやつじゃなくて、男女の仲的なやつの?」
「そりゃそうよ。何でいきなりここで北王子君が私に男の子好きを暴露してくるのよ。付き合ってくれないかって言われたわよ。」
「そっか…」
トイレで宣戦布告のようなことをされたけど、本当にすぐに行動に移すなんて…イケメンは行動力が違うな。
「何か反応薄いなぁ。もっと何かないの?実際どう思ったの?もしかしてちょっと嫌だった?」
意地悪そうな微笑みでこっちの様子を伺いながらアリスが煽ってくる。いつもみたいに軽いノリで言ってるようだが、ここはいつもみたいに強がらずに素直にならなきゃいけない。
「…嫌だ…」
「えっ…?」
「アリスが他の人の彼氏になるのは嫌だ。これまでみたいに気軽に話せないのも、遊んだりできなくなるのも嫌だ。俺以外の男と親しげに話をするのも本当はちょっと嫌だった。」
「それは…その…そうね。なんだか今日はやけに素直だね…」
少し困惑した様子で落ち着かないアリスと向き合うため、姿勢を正して座り直す。アリスも真剣な様子を察知してくれたのか、こちらを向いて言葉を待ってくれる。
「うん。今日は素直な気持ちを言う。アリスには他の人と付き合わないでほしい。その…北王子君には返事したの?」
「いや、あの…お断りしたけど…」
「そっかぁ…北王子君には悪いけど、めっちゃ安心した…正直嬉しい。」
一拍おいて息を整える。ここで一気に攻め切ってしまえ!
「あの…さ、いつ自覚したかとか、いつから意識したかとか全然分かんないんだけど……その……アリスが好きどす。えっと…今年はアリスと出会って、文化祭も体育祭も夏祭りも修学旅行も…去年までと違って全部が最高に楽しかった。アリスと一緒にいるのが当たり前になってて、もうアリスがいないことが想像もできなくなってて。これからも、当たり前のように隣で笑っててほすぃ…俺と付き合ってくだせい。」
大事なセリフは噛み散らしてしまったが、おおむね徹夜しながら考えてた通りに言えた気がする。多分言いたいことは伝わっているはず。後はアリスの反応を待つだけなのだが、アリスはというと途中から俯いてしまい、表情や反応が読めなくなってしまっていた。一世一代の告白だったのだが、アリスは今何を思っているのか…
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