第49話 テスト前、好きな子のために徹夜して作るものとは…
翌日、放課後一足先に図書室に入ってアリス達が来るのを待つ。そこに、アリスが1人でやって来た。
「あれ?栄一と長名は一緒じゃないの?」
「あの2人は…実は先週末部活があったみたいで、今居残りさせられてる…」
「それは…自業自得だな。勉強会に乗じてイチャついた罰だな。」
「そんなこと言っちゃ可哀想だよ。まぁ、楽しんではいたけどね。」
2人で笑っていると図書委員の人にひと睨みされてしまった。
「…そういえば、今日北王子君は?」
「あぁ、別に約束してるわけじゃないし、予定が空いてれば勉強見てもらうだけだから大丈夫よ。」
「そっか…」
北王子君を見た感じだと勉強を見るだけとは思えなかったけど…わざわざ教えてあげる必要もないか。
「じゃあ、始めようか。」
久しぶりにじっくりアリスが勉強しているところを見るが、この数日で相当できるようになっているような気がする。さすが成績トップの北王子君。きっと教えるのも上手いんだろう。
ここまでくると質問することもあんまりなく、集中して勉強しているとあっという間に下校時間になった。
「そういえば、最近忙しかったのは何だったの?」
勉強道具を片付けながらアリスがふと聞いてきた。
「いや、実は…これを作ってたんだ。」
カバンの中からノートを取り出し、アリスに手渡す。
「何…これ?テスト対策ノート?」
「そう。アリス専用対策ノート。全5教科のボリュームパックだよ。」
「え…本当に?…これ作っててずっと徹夜してたの…?」
「別に、俺が作りたくて作ってただけだから。自分の勉強にもなったし。見返りとかは要求しないよ?」
「そんなの心配してないし…もう…只男って…本当にバカ…」
そう言いながらアリスの目からは涙が次々と溢れ出していた。
「な…どうした!?」
「…うわぁーん!…感動したぁ…ここまでしてもらって赤点取るわけにはいかないよぉ…頑張る気しか起きないよぉ…」
「…それなら良かった。まぁ一緒に3年生になりたいし。」
「なるよ!なるなる!もう4年生でも5年生でも何年生でも一緒になってあげるよ!」
「それは3年までで大丈夫です。」
間に合わせるために急いで作ったものだけど、やる気に繋がってるみたいで安心した。
そこから1週間は顧問にこってり絞られた栄一と長名も加わって、対策ノートを中心に放課後や休み時間も活用して勉強漬けの日々を送り、ついに学年末テスト当日を迎えた。
テストの手応えやテスト返し直後は結果についてあえて触れないようにしていた。全てのテストが返ってきて点数一覧が配られる日にみんなで結果発表することにしたのだった。
「みんな…点数の紙は持った?せーの、で一斉に見せるのよ。いい?…せーの!」
正直、他の3人の結果はどうでも良かった。とにかくアリスの点数に目をやる。他の2人も同じ考えらしく、3人で顔を突き合わせてアリスの結果を覗き込む形になった。
「ふふっ、みんなして私のを見るなんて…人気者は辛いなぁ。」
「そういうのはいいから。」
「もう、ノリが悪いなぁ…ほら、しっかり見てもいいよ。」
こっちの気も知らずに軽口を叩いて場を和ませそうとしている。
ただ、点数を見てみると軽口を叩く理由が分かった…赤点だらけだった前回とは見違える点数だ。赤点が…ない!どころか全教科平均点を超える点数を獲得している!
「ふっふっふ…これが私の実力よ!崇め奉りなさい!っていうのは冗談で。みんなのおかげです!特に只男、ありがとう!」
「いやいや、こんなにできるなんて正直びっくりだよ。すごいすごい!」
「そういう只男だって点数上がってるし、清香は言うまでもなく化け物じみてるし、栄一君だって…ん?栄一君!?」
アリスの叫び声に釣られて栄一の点数を見て絶句した。数学の点数が…
「0点!?どうした?」
「いやぁ…最初の解答欄飛ばしちゃった、てへ。」
「いやいや、可愛子ぶっても意味ないから。」
「でもね、えーちゃ…栄一君は解答欄が合ってたら90点はあるんだよ。」
長名がフォローを入れる。
「まぁ…今までもできてるし、そんなにできてるなら追試も一発合格でしょ。」
「うんうん。栄一君はちょっと心配だけど、これで全員進級できるね!やったぁ!打ち上げだぁ!」
アリスが小躍りしていると、後ろから北王子君が近づいてくる。
「打ち上げいいね!それならクラスのみんなも誘ってカラオケ行こうよ!」
「あっ…いや…そ、そうだね。そうしよっか。」
「おーい、今日打ち上げに行ける人ー?放課後カラオケ行くよー!」
多分、アリスの打ち上げはテスト前に言っていたケーキ屋に行くことを指していた気がするけど、北王子君の陽な雰囲気に押されて断れない空気になっていた。
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