第48話 予定が合わない時にここぞとばかりにライバルが…
家に戻って栄一達と合流し、寝る前にもう一踏ん張り勉強をした。栄一も長名も見られていたことには気付いておらず、いつも通り振舞っていた。
翌日も朝から夕方まで勉強を続け、合計すると結構な時間数になっており半年分くらい一気にやった気分だった。
「…もう、無理…頭から湯気が出ちゃう…」
「このペースならギリギリ何とか赤点は回避できるかもな。でも、本当にギリギリだな…」
「うーん、最後はアリスちゃんの頑張り次第って感じになるかなぁ。」
「アリスちゃんなら大丈夫だよ!私もできる限り一緒に勉強するから。」
「皆、本当にありがとうぅ。試験終わったら只男のおばさんちのケーキ屋さんで奢るからね!」
「それは嬉しいかも。」
「あそこのは美味いんだよな。」
3人が雑談している間に本気で間に合いそうか計算してみる。残り2週間で今のペースでいったとして…多分教えてる範囲は大丈夫なはず。でも、その分アリスが自分でやるって言った部分があんまり時間をかけられないから危ない気がする。何とかしないといけないよなぁ…
「テストまであと2週間…!ギアを上げていかなきゃ!只男、今日からも放課後よろしくね!」
勉強合宿で手応えを感じたのか、アリスは朝から元気満々で話しかけてくる。でも、こっちは寝不足だから元気な声が頭に響く。
「あぁ…ごめん。今週はちょっと家でやらなきゃいけないことできて。放課後は残れなくって…昼休みなら付き合えるからさ。」
「…そっかぁ…じゃあ…昼休み、みっちりやるよ!ご飯は早弁して来なさいよ!」
「ははっ、分かったよ。アリスも早弁だからな。」
申し訳ないが、今週は放課後付き合ってあげられる余裕がなさそうだ。でも、1人で勉強させるのも気の毒だし、昼休みにその日の目標を決めたりもしようか…
「今チラッと聞こえたけど、広井さん放課後1人なの?じゃあ、俺と一緒にっていうのはどう?」
どこからともなく北王子君が現れて魅力的なお誘いをしてくる。きっと、北王子君と勉強すれば効率も良いはずだから、とてもありがたいお誘いのはずなのだけど。
「うーん…まぁ…そうね。お願いしてもいい?私、国語と社会がちょっと苦手だから、その辺を中心にやりたいんだけど。」
「もちろん!分からないことがあったらいつでも聞いてくれていいから。よろしくね。」
放課後は北王子君が面倒を見てくれるみたいだから一安心なはず。さっきからアリスがチラチラと見てきたりして挙動不審なのが心配だけど、まぁ大丈夫だろう…大丈夫なんだけど…
「これは…意外なライバルが出現してきたな…!」
「なんの話?」
「いや、こっちの乙女ゲーの話。」
栄一が登校するなり決め台詞のようなものを吐き捨てていく。今日は朝から皆テンションが高いな。
放課後、いそいそと帰り支度をしているとアリスと北王子君が話しながら図書室に向かっていた。その姿に胸の奥でざわつくものがあったが、それを抑え込みながら平静なふりをして家路に着く。途中、目が合ったアリスは目を細めて呆れたような顔をしてそっぽ向いてしまった。放課後付き合えないからってそんな顔しなくても…
その後も寝不足と戦いながら勉強に勤しむ日々が続き、アリスは北王子君と一緒に勉強を頑張っているようだった。
「…ねぇ、どんどんやつれてってない?帰って何してるの?寝てる?ご飯食べてる?お風呂入ってる?」
4日ほど徹夜が続いてしまい、さすがに見るからに元気がなくなってきているみたいだった。
「いや、そんな矢継ぎ早に質問されても…ちゃんとご飯食べてお風呂入ってるよ。ちょっと夜更かしが続いてるだけ。」
「別にそんな心配ってわけじゃないんだけど…只男いないとちょっとだけつまんないなぁってだけ。よく分かんないけど無理しないでよ。」
「あぁ、ありがとう。でももうちょっとだから…あっ、明日の放課後から一緒に勉強できる?」
「できる!…明日からはもう大丈夫なわけ?」
「そうそう。結局週末までかかっちゃったなぁ。」
「じゃあ明日は放課後もね。ちゃんと今晩からしっかり寝なさいよ。」
「あ、アリスちゃん、おはよう。今日も図書室行く?…」
毎日一緒に勉強しているせいか北王子君は距離感をぐっと詰めてきている。落ち着かない気持ちをなだめるように明日、明日と唱えながら心の平穏を保つ。
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