第18話 ショッピングで男の定位置といえば…

「それじゃあ目的も達成したことだし、ダブルデートの続きといきますか!」

「ダブッ…!?」

 長名をおもちゃにできて満足そうな栄一が、たじろぐ他3人を引き連れて気の向くままにショッピングモールを散策した。

――女性陣とショッピングといえば……これは、男が疲れてソファで待たされるやつだ。栄一と二人で女の子を待つ日が来るなんて…感動だ。

 初めは栄一に押されて大人しかった女性陣も段々と元気を取り戻し、後半は栄一と2人で店の外のソファに座っている時間の方が長くなっていた。

「安心したよ。」

「は?何が?」

 突然の栄一が話かけてきたため、けんか腰のような返答になってしまった。今日の栄一はどんな発言をするか分からないから油断できない。

「アリスちゃんと仲直りできたみたいじゃん。」

「あぁ…仲直りというか、別にけんかしてたわけでもないんだけど。たしかに、気まずい感じはなくなったかな。」

「やっぱり外から見てても違和感があったもんな、体育祭の後から。」

「…まさか、そのために海水浴を?」

「親友の一大事に文字通り一肌脱いじゃったわけよ…それだけが理由じゃないけど。」

「なんてことだ。文化祭でも体育祭でも親友呼ばわりしている人間を何度も犠牲にして、自分の欲望を満たしてきた悪魔のような奴だと思っていたのに。まさか、こんな気遣いをできるなんて。もしや…別人にすり替わってるとか?宇宙人にでも攫われたか!?」

「…心の声がだだ漏れですけど。めちゃくちゃ失礼なこと言ってるが。」

 普段栄一が自由に生きているようでも、なぜか憎めないし敵ができない理由が分かった気がする。自分がやりたいことをやる中でも、周囲への気遣いを忘れない。こいつは本当のできる奴だったんだ…!

「いやいや、人間性を一から見直したよ。あと、それだけが理由じゃないって?他に何か目的でもあるってこと?」

「それはもちろん…長名ちゃんとお近付きになるためさ。そろそろファン0号じゃなく、同級生として仲良くなりたいと思っていたところでさ。」

――昔から長名のことを推しているようだったが……これは、もしや本気で恋愛的なやつではないのか!親友―幼馴染ルートが開発されるやつか!

「そうか、そうか!それなら協力しないとな!何か知りたいことはあるか?幼稚園の頃から好きなものとか、幼い頃の恥ずかしいエピソードとかか?」

「それも知りたいけど、今は単純に好みのタイプとか基本的なことからだな。」

「好みのタイプかぁ、昔聞いた時は男らしくて頼れる人って言ってた気がするけど…」

 そこに丁度女性陣が戻ってきた。

「何を男2人でイチャイチャしてんのよ。別に人の好みにあれこれ言う気はないけど、公共の場では控えなさいよ。栄一君も本当に只男なんかでいいの?」

「勝手にBL設定作るのやめて。しかも、なんで俺はいっつもけなされてんの?いやいや、そんなことより丁度良かった。二人の好みは何かある?」

「私はイケメンでお金持ちで…ってなると年上かなぁ。それに包容力があってピンチになったらさっと助けてくれるようなタイプ。」

「あっそう。」

「自分から聞いといて何よ、その反応!」

「高い理想もいいけど、現実も見ようね。長名は?」

「私も…包容力っていうか、男らしくて頼り甲斐がある人がいいな。あと、面白い人。」

「あーたしかに!面白いっていうのも得点高いよね。私もそれ入れよう。でも、何でいきなり好きなタイプ?」

「ううん、何となくそんな話になっただけ。次の店行こうか。」

 栄一が本気で恋愛をしようというなら全力でサポートしようと心に誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る