【13 エバーライトグリーン】
青い空の下、ドアの無い車を走らせて進んでいく
風は青い匂いをさせながら、どこまでも続く道へと誘う
助手席に座る少年は、疲れているのかうつらうつらしている
「眠っててもいいよ、商店街に戻るまでもうちょっとかかると思うから」
そう声をかけると少年は瞼をこすり
「いや、もうちょっと頑張る
今寝たらたぶん全部忘れちゃってると思うから」
少年は改めて私に向き直る
「僕は、大事な友達を喪った最中に君に出会った
だからその痛みを忘れてしまった僕が君のことを、今と同じように思えるか分からない」
「白波きみのことを大事だって思っていたいよ」
私は想像をする、隣の少年に「あなたは誰ですか?」と告げられる瞬間を
「私が覚えておくよあなたが私のことを大好きだってこと」
「ちゃんと教えてよ」
「うん、だから安心してもう寝なよ
私より大きくなるんでしょ」
もちろんといったように少年は手足を伸ばす
「あ、そういえば僕の名前決めなきゃいけないね
…起きて一番最初の話題はそれがいいな」
「分かった」
少年は私を見て、涙を一筋こぼした後深呼吸をして眠りについた
その姿を見てから、ハンドルをしっかり握って前を見る
彼は13歳、私は24歳だ
25歳だった彼とは同じようにはきっとなれないだろう
白波綾香と、私と、影の男と彼の物語はみんな別々の道を進みとうとう終わりを告げた
「ちょと切ないってこういう気持ちか…」
長かった梅雨は分厚い雲と共に去っていき、さんさんと照太陽が夏をつれてくる
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