【03 永久凍土】
【03 永久凍土】
当然私には着服も横領も記憶にない
ここで働きはじめてからずっと勤務態度だけは真面目に働いてきた
なのにひどく鼓動が高鳴る
もしも私の部屋のどこかに、横領した金があったらどうしよう
消灯されていく蛍光灯より速く商店街を駆け抜ける
手に提げた惣菜が音を立てるが今日ばかりは気にしていられない
階段を息せき切らして上がり、白波と書かれたネームプレートが嵌め込まれたドアを開ける
靴を踵で蹴飛ばして、部屋の押し入れや収納を開ける
服のや書類の間の隠せそうな場所を一つづつひっくり返す
その度指先が凍りそうな不安が襲う
見つからないと安堵をするのに、息着く暇なくまた不安と好奇心に掻き立てられて探す手を止められない
ない、ない、あるわけない、絶対にある、あったらどうしよう、ドキドキする
私の部屋は古く、濃紺のカーペットが敷かれている
私は、私の記憶にあるかぎりこのカーペットを捲ったことがない
「うっ重…」
埃と脂を吸って重たいそれをハウスダストを巻き上げながら、力の限り持ち上げる
カビた茶色のフローリングには床下収納の扉があった
金属製の扉は、舞い落ちる埃の中私を見据える
今、この部屋だけ世界から切り離されて独自に秒針を刻んでいるようだ
私は固唾を飲んで扉にてを伸ばす
その時ドアが激しく叩かれた
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