第2話 私のこと好きなの?

 その後のデートは順調だった。というか普通に遊んだ。

 ショッピングではお互いにふざけた服を着させ合ったり、プリクラではめちゃめちゃ盛った写真を撮ったりした。

 そんなこんなで今はカフェで休憩中だ。はー疲れた。

「いや、遊んだー」

「ねー」

「ダーリンのコスプレ似合ってたよ。外でも着れば?」

「私をそんなに辱めたいか? ん?」

 無理やり着せたからか不機嫌そうに真希が言う。待ってマジ怖い。

 だって仕返しだったし。それに魔法少女のコスプレは実際かわいかったしって思うけど、これ以上は怖いのでやめとく。

「それに私がコスプレするなら、朱莉もコスプレだからね? 悪の組織とかのほうが、露出度高そうだし、それで今度出かけよっか」

「マジすいませんでした」

 私は思いっきり頭を下げる。よっぽどお気に召さなかったらしい。

 それに今の真希ならほんとにやりそうな圧を感じる。マジ怖い。

 って、立場がいつの間に逆転している。よくない。非常によくない。

「そうそう。話変わるけど」

「こういうへそ出しとかよくない?」

「もうその会話終わってるから!」

 いちいちスマホでみせてくるんだじゃない。てかこんな服、実際着たらポロリしちゃうだろ。際どすぎるわ!

 ここはなんか反撃のことを考えないと! こいつにこれ以上言われないようなことを――。


「マジ、反省してるから許してください」

 そして考えた結果の行動がこれだった。……私は敗北者です。

「はー。ほんとある程度は我慢するけど、あんな恰好もう嫌だからね?」

「かわいかったのに……」

「なんか言った?」

「なんでもないです」

 あの服は真希にとっては地雷だったらしい。朱莉は一つ賢くなった。

 この話はもう絶対しないと心に決めて話を切り替える。

「で、真希。このあとどうする?」

「水族館もう行っちゃう? イルカショーは見たいよね?」

 そうだった。満足感が高かったけどまだ一番のメインディッシュが残っていたわ。

「何時からだっけ?」

「16時から」

「……じゃあ、あと1時間かー」

 微妙―。まだ回っていないところ行こうと思っても時間が足りないし。水族館に行ってもあまり魚を見る時間もない。微妙すぎる。

 私はコーヒーを飲みながら、うーんって考える。

「だったら、水族館行きながら面白そうなとこ入ろうよ。そっちのほうがいいでしょ」

「……確かに」

 真希の提案してくれて、それに乗る。

 水族館は行きたいんだし、とりあえず行きたかったところも行った。

 なら他のところはまた行けばいっか。また来るでしょ。


 じゃあ、方針も決まったし。もうこのコーヒー飲んじゃおうと思うと今朝のことを思い出した。

「今朝コーヒーもらったし、いる? 間接キスだけど?」

 真希も言われて思い出したのか、少し顔が赤くなる。

 さっき謝りまくったからね。こっからは私の番。

「からかわないでよ」

「いやいや、ダーリンに貸りっぱなしはやだなーって思っただけだよ?」

「それが、からかってるんだっての」

 眉をひそめながら言う真希に私もテンションが上がっていく。

 そうそう。そういう顔。

「ほら、真希の顔。CMあの子みたいに真っ赤だよ? もしかして私のこと好きなの?」

 目についた青春系のCMを指さして、にやにやししながら言う。

 これで恥ずかしがってもらったら、さっきのはチャラだ。

 そんなことを思っていたけど……でも真希の反応は違っていて。

「え? なんでそんな顔赤くなってんの?」

 りんごみたいに顔を赤くしている真希に私は普通に問いかける。

 えっどうした? え?

 そんな風に困惑していたけど、真っ赤に染まった真希の顔がCMの恋している顔と重なって思わず口にしてしまう。

「……真希ってマジで私のこと好きなの?」


 私の言葉を聞いた瞬間に目は見開いて、口を手で押さえる。

 そのしぐさは、もう答えだった。


 …………嘘。

 だって、私は真希のことを友達としてしか見てなかったし、それに女同士だなんて。

 そんなことをよぎったのも一瞬。

 考える前に口が動いてしまう。

「ごめん。無理……」

 私がそう口にすると、真希は店を飛び出した。


「どこ行ったのよ、あいつ」

 真希が飛び出して以降、私は彼女を探し続けている。

 てか、マジどこいんのよ? 会計も私持ちだったし、文句の一つも言わないと気が済まない。

 そう思って探しているけど、ショッピングモールも馬鹿広いし。

 しかもスマホも電源を切っているらしく、連絡をしようにも繋がらない。詰んでいる……。

 とりあえず、そこにあったベンチに腰を掛ける。


 でも見つけたって、なんて答えればいいんだろう……。

 私は頭を抱えながら、呻く。

「どうしよう……」

 ホントに考えなきゃいけないのはそこだ。

 というか真希、私のこと好きなの? 漫画とかだったら何回も見た展開だけど、まさか自分がその立場になるなんて夢にも思わなかった。

 それも親友のように接ししていた女の子だし、正直なんて答えたらいいかわかんない……。

 もちろん真希のことは好きだけど、それは友達としてだ。

 やっぱり付き合うなんて考えられそうにない。


「はー」

 思わずため息が出る。

 探すのに時間かかりそうだし、行っても気まずい。

 状況的に終わってない? 私。


 てか、なんか腹が立ってきた。

 なんで真希が勝手にどっかに行ったのにに、私が探しに行かないといけないの?

 しかも、探しに行ったところで結局私も傷つくんでしょ? 私傷つきにわざわざ行かないといけないの?

 なんかどんどんイライラしてくる。

「……てか、真希も悪いんじゃん! あんなわかりやすかったらさ!! そりゃ察しちゃうって!」

 地団太を踏みながら、思わず大声で叫ぶ。

「しかも、勝手にいなくなってさ! なんで私が悪いことしたみたいな気持ちになんないといけないの!? 全部真希のせいでしょ!」


 ……でも、私もあんな風に行っちゃったのも悪い。

 真希を責めれば責めるほど、私もやってしまったことが罪悪感のように積み上がっていく。

「はあ……はあ……」

 落ち着いてきて私も悪かったと受け入れる。ほんとは嫌だけど。でも友達としての謝罪は大事だと思うから。

「……文句の前に謝んないと」

 まず見つけないと、なんにも言えない。


 私は立ち上がって、マップを見ある

 イルカショーをとりあえず約束していたし、水族館? でもそんなとこ行くか? まあ、服屋とかは行かれてたらどこかなんてわかんないし。行くしかない。

 よし! っと両手で頬を叩く。

「とりあえず、水族館に! いなかったら家に行ってやる!」

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