第2話 得体の知れない

瞬きもせず息もせず、ただ、彼女を見つめる。

すると、ふわっと彼女の顔が笑った。

パフォーマンス、僕にはそう感じた。


「分かってくれた?よかったぁ。」


「わかんねぇよ!」心の底から叫んだ言葉は口から出なかった。

喉になにか詰まってるみたいで痛く苦しい。


「それじゃあ、もう一回。死んだらどこに行くか知ってる?」


「知らない」


声が震える。

そんなことは気にもせず、彼女は耳の後ろを掻いた。


「そっかぁ。じゃあなんで死のうと思ったの?」


容赦がない。

でも、嘲笑もなく、ただ自然に聞かれただけなのに、体が震え始めた。

僕の勘はあたってた。

彼女の言葉には確かなトゲがある。

逃げたいと思うのに、引っかかったみたいに足が動かなかった。


「ごめんね。怖かった?じゃあ最後。」


解放される。やっと。もうすぐ。

風がザッと吹いた時、彼女は言った。


「なんでビルから飛び降りることを選んだの?」


死ぬ。

目の前が真っ白になって、頭がくらつく。

死にたかったはずなのに、恐ろしくてたまらない。

そうして、初めて僕は死に様を選びたいと考えた。

嗚呼、早く死にたい。

満たされて。

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