死にたがりと寂しんぼ

灰雪あられ

第1話 はじめましてを屋上で

柵に立つ鳥が鳴く。


「一緒に飛ぼうよ」


君が飛んだら僕も飛ぶから、はやく。

はやく、飛ぼう。


「ねぇ、死んだらどこに行くか知ってる?」

「ヒッ…」


鳥が騒々しく羽ばたいて、僕の尻はコンクリートの床に落ちた。

これで僕はまたひとり。


「驚かしちゃった?ごめんね。」


まっすぐ立つ彼女から伸びた影から逃げるように後ずさる。

なんだコイツは。

耳鳴りのように聞こえる鼓動が叫ぶ。

敵だ。

コイツは敵だ。


「それでね、聞きたいことがあるんだ。」


止めに来たのか?

嗤いに来たのか?

知り合い…じゃないはず。


「死んだらどこに行くか知ってる?」


死んだらどこに行くか知ってる?

は?


「あれ、聞こえなかった?じゃあもっかい…」


「っバカにしてんのか‼︎どこも何もないだろ!なんなんだよアンタ⁈」


怒り。

恥ずかしさ。

後ろめたさ。

コイツは分かってる。

僕がこれからすることを。

それでバカにしてるんだ。

嗤ってるんだ。見下してんだよ。


「…どうしてみんな怒るのかな?やっぱ知らないからかなぁ〜?」

「どっか行けよ!からかって楽しいかよ⁈」


瞬きを繰り返した彼女は、僕の顔をジッと見つめた。

目が逸らせない。


「なんで?からかってないよ。」

「本気。本気で、探してるの。」


一瞬で理解した。

狂ってる。

目が、目に、吸い込まれてしまいそうで恐ろしくて息すらできなかった。

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