第31話 素顔
「降りるぞ捕まってろ」
「え、えぇ」
棘の間を狙い、ブレイズを抜いて地面へ落ちる。
そして、棘が間近に迫ってた瞬間にブレイズに炎を込めて周囲を薙ぎ払った。棘は熱と斬撃の衝撃に耐えられずに粉々に砕け散った。
地面へと着地して抱えていたアリサを下ろすとアリサはそそくさと俺から距離を取り、俺を睨みつける。
「貴方…本当に何者なの?」
「ただの学生さ…。少し変わったな」
俺はそう言ってブレイズを消滅させる。この状況でただの学生は無理があるな。
しかし、それより気になることが一つ。
「お前はなんでフードなんか被ってるんだ?」
アリサがずっとフードを被ってる理由を尋ねてみる。
「なに?藪から棒に」
「いや、そんなに可愛い顔なのに隠すのはもったないと思ってな」
そう言って俺は人差し指で自分の顔をちょんちょんと指さす。
そう落下の際に下から吹いた風によってアリサのフードは後ろへと下がっていたのだ。フードの下の顔は何故隠しているのか不思議な程に美しいものだった。
雪のように白い髪にそれに負けないほどに染みのない陶器の様な肌。通り過ぎた男がたじろぐ程の整った顔立ち。そして、何より特徴的だったのは両目揃った透明な瞳。クリスタルのような透き通った瞳だった。
「っ!?」
俺の指摘を聞き、雪のように白い肌を真っ赤に染めてアリサは急いでフードを被り直す。
そして、フードの下から鋭い眼光を覗かせながら俺に言う。
「記憶から抹消しなさいっ!」
「いや、無理だろ」
「だったら私が消してあげるわ!」
ジリジリと距離を詰めてくるアリサ。
「なんでそんなに怒るんだよ。客観的に見てもお前は美人だろ?」
「び?!」
アリサが驚く。どうやら俺が美人と言ったことが相当衝撃だったらしい。いや、主観を抜きにしても綺麗な方だと思うんだが変なこと言ったかな?
「本気で言ってるの?」
「嘘ついてどうすんだよ」
俺の表情を見て、嘘では無いことを悟ったアリサから先程までの殺気が消えて行く。どうやら助かったみたいだ。
「本当に貴方は変わってるわね」
「それはお互い様だろ?」
「…そうね」
アリサはいつもの冷静さを取り戻したようだ。
「さて、道はどうやら行き止まりという訳でもないみたいだし、先に進むか」
俺の目線の先には通路があり、その先には暗闇が広がっていた。この通路の先に何があるかは分からないがここで待っていてもしょうがない。
「分かったわ。行きましょう」
アリサはそう言って俺の隣に立つ。これは少しは信用してくれたっということで認識していいのだろうか?本人に聞くとまた厄介なことになりそうなので聞きはしないが…。
そうして、俺とアリサは奥へと続く通路を進み始めた。
★
通路をひたすらに進み、体感では数十分経っていたが未だに通路の終わりは見えずにいた。
「しっかし、長い通路だな。誰がなんの目的で作ったのかね。どう思う?」
「さぁ…」
アリサはいつもの調子に戻ってしまいこちらの問い掛けにも素っ気ない態度で返すようになってしまった。
「まだ先は長そうだな。ここいらで休憩しとくか」
「な…随分と呑気なものね」
俺の言葉に少し驚いたアリサ。
「休める時に休んでおかないと後に響くぞ」
「私は平気よ。休むなら貴方一人で休めば」
そう言って俺の横を通り過ぎようとするアリサ。
しかし
─────キュルルルル
そんな可愛い音がアリサのお腹の辺りから聞こえてきた。アリサはゆっくりと首をこちらへと向ける。その顔はフードの下からでも分かるほどに赤く染まっていた。
「ぶっ!あはははははは!!」
「ちょ!笑うなっ!!」
思わず吹き出してしまった俺に対して抗議するアリサ。
「いやぁ、悪い。別にバカにしたわけじゃないんだよ。むしろ可愛いところもあるんだなって」
「それバカにしてるでしょ…!」
アリサが今にも襲いかかって来そうなので無理やり話を進める。
「とにかく休もうぜ。軽食を持ってきてるから一緒に食おう」
そう言って俺は壁を背もたれに座る。
「分かったわっ!」
アリサもそう言って俺の隣に腰を下ろす。こうして何とも言えない場所と何とも言えない雰囲気の中で俺たちは食事をするのだった。
英雄には興味ないのでラスボスを目指します! 焦がしチョコ @tomasaku
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