第27話 最初の授業

アリサの一件を終えて部屋へと到着した俺とターリアは今後について話していた。


「にしてもあの騎士長様といい、アリサといい、なんで俺の正体が分かったんだ?何か俺に感じるか?ターリア」


そうターリアに聞いても彼女は首を横に振る。


「いえ、私には何もカイン様は普通の人間にしか見えません」


彼女には俺が悪魔の力を手に入れたことを話している。その彼女ですら俺が普通の人間に見えるらしい。


「だとしたら、アイツらが何か特別な力を持っているとしか考えられないな」


「やはり彼女は危険です。密告でもされる前に手を打った方がよろしいかと…」


「まだ彼女の真意が分からないんだ。話を聞いてからでも遅くはないさ。最悪の場合は俺が動けば良いだけだ」


この世界で俺は伝説上の悪魔と融合した正真正銘の化物だ。


言うなれば『魔人』


彼女…アリサが俺にどっち?と聞いてきたのは俺が人間か悪魔かまだ確証が持てていないと考えていいだろう。なら、彼女が俺をどうするのか、それを聞いてからでも行動は遅くない筈だ。


問題は彼女が俺の話を聞いてくれるかということだが…。


「はぁ〜〜、入学早々難儀なものだ」


椅子に体重を預け天井をみながら言葉を吐く。


「心中お察ししますカイン様。私に出来ることなら何なりとご命令下さい」


「ありがとうなターリア。その気遣いが身に染みるよ」


「お任せください」


ターリアはフンスと聞こえてきそうな気合いの入れ方をする。本人には悪いが仕草が可愛いな。


「さて、そろそろ明日に備えるとしよう」


「かしこまりました。ではお食事の準備をします」


「いや、たまには外に食べに行こう。ターリアも一緒に食べようぜ」


「しかし…」


ターリアは少し戸惑っているが俺はターリアが押しに弱いのは知っているので構わずグイグイと行く。


「なら命令だ。俺と一緒に夕飯を食べろ」


「命令なら仕方ないですね」


そう言う彼女の表示は満更でもなさそうだ。


「じゃあ、行くか」


「はい」


そう言って俺達は街へと繰り出したのだった。




翌日の自室にて俺は支給された制服に袖を通していた。


黒のクラックスに白いワイシャツに学年毎に色の違うネクタイ、俺達の学年は青色だ。

そして、特進クラスに所属していることを示す白を基調としたブレザー。なんとも派手な色なことで。


「とても良くお似合いですカイン様」


「そうか?馬子にも衣装ってやつじゃないか?」


「まご?」


「あぁ、いや、こっちの話だ」


ターリアが首を傾げる。流石に前世のことわざは分からないよな。


「じゃあ、行くか」


「はい」


そう言って二人で部屋を出て教室へと向かい歩き出す。

その途中でよく知ってる顔がいつもの笑顔でこちらを待っていた。


「カイン、おはよ。制服似合ってるね!」


俺と同じく白を基調とした制服に身を包んだシエルがそこにいた。


「そっちもな、シエル」


「そう?ありがと!」


俺の前でクルっと一回転するシエル。うん、可愛い。


「教室に行くか。最初の授業から遅刻は勘弁だしな」


「そうね!」


そう言ってシエルは俺の隣、ターリアは俺達の一歩後ろといういつもの構図で教室へと向かった。


教室に着くと既にほとんどの生徒が席に着いており、相変わらず黒いフードを着ているアリサの姿も確認できた。

俺とシエルが席に着くとターリアが他には聞こえない声で耳打ちしてきた。


「私はあの女の動向を探りますので」


「あぁ、くれぐれも無茶はするなよ」


「はい、カイン様も」


そう言ってターリアは教室の後ろへと去って行った。そのタイミングで担任であるアラウス先生が教室へと入ってきた。


「みんなおはよう。さて、早速だが今日の授業は“実習”だ!」


どうやら特進クラスは最初の授業からストレートを打ちに行く方針のようだ。

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