第二章 魔術学園編

第25話 新たな舞台

波乱の選別試験を終え、翌日の早朝。


俺とターリアはこれから馬車に乗り、学園へと出発する。これから6年の間は学園の寮での生活となる。


「ターリア、カインのことよろしくね」


「はい、お任せ下さい。奥様」


母とターリアの会話は俺の話題で持ち切りだった。両親共々、差別意識の無い人間で本当に助かった。そんなことを思っていると父、レインが俺の前へとやってくる。


「カイン、我が息子ながらお前は優秀だ。特に心配はしていない。好きなようにやりなさい」


「はい父上、今までのご指導ありがとうございました」


この数年の感謝を伝え、頭を下げる。俺にとっては2人目の父だが、この人には色々と教わった。感謝してもしきれない。


「たまの休みはこっちに帰ってきて母さんに顔を見せてやれ」


「はい、もちろんです」


顔を合わせて、お互いに少し微笑む。この人とは言葉は少ないが色々と通じ合っている気がする。


「あぁ、カイン。とうとう行ってしまうのですね」


そう言って、俺に抱き着いてくる母タリヤ。この歳になって母親に抱き着かれるのは少し恥ずかしい。


「母上、今生の別れではないのですから…。休みには顔を出しますので」


「そうですね、折角の息子の門出ですからしっかりお祝いをしませんとね」


そう、ニッコリと笑う母に少し安堵する。この人からは数え切れないほどの愛情を貰った。願わくばこの人には悲しい思いをさせたくは無いがそれも無理だろう。だったらせめて迷惑を掛けないようにしないと。


「では、そろそろ行きます。お二人ともお元気で」


「あぁ」

「行ってらっしゃいカイン」


そう別れの挨拶を交わし、馬車へと乗り込む。そして、馬車はゆっくりと学園へと出発した。


「いよいよですね、カイン様」


馬車が出発するとターリアがそう俺に声を掛ける。


「あぁ、ここからは自由な時間も増える。本格的に俺の目標への計画も立てないとな。お前の力、あてにしてるぞターリア」


「お任せ下さい。全身全霊をもってカイン様にお仕えさせていただきます」


「なんとも頼もしいな」


学園に行けば本格的な教育と六年という膨大な時間が手に入る。この期間で俺の野望への準備を整え、実行に移す。それがこれからの目標となる。


これから始まる学園生活とラスボスになるため為の準備期間に胸を高鳴らせながら俺とターリアは学園へと向かうのだった。



「改めてみると無駄に広い学園だな」


「全学生の寮と中等部、高等部の学び舎が一つの敷地に入っているのですから広いのは当然でしょう」


学園に着き、その広さに改めて驚いているとターリアがそう言う。

ターリアが言った通り、この学園には寮と学び舎。そして、巨大な図書館や中等部と高等部両方の講堂など様々な施設が学園の敷地内に存在している。そのどれもが歴史があり、だがどれも決してボロいという訳でもなく、ちょっとした観光名所みたいになっている。


ちなみにターリアは入学生ではないが貴族は一人付き人を学園に連れてくることが出来るという制度がある。大半の人間はそこまで信用している従者がいないのかこの制度を使ってはいないがこのおかげでターリアも学園への出入りが可能となっているのでとても助かった。


「あ〜、カイン!!」


そう考えていると聞き馴染んだ声が後ろから聞こえてくる。


「シエル、来たか」


少し遅れて到着したシエルが後ろから駆け寄って来る。


「流石はカイン早いね。ターリアもおはよ!」


「おはようございますシエル様」


手を振るシエルにお辞儀で返すターリア。この光景も見慣れたものだ。


「じゃあ、早速行こ!今日は講堂で入学式をやってからクラスに移動よ!私とカインなら同じ選抜クラスに選ばれるわ!」


今日の入学式ではクラス分けも発表される。先日行われた試験を元に決められるが試験の手応えの感じでは俺とシエルは問題無く選抜クラスに選ばれるだろう。


「じゃあ、二人共行こ!今日から楽しい学園生活よ!」


そう言って、俺とターリアの手を取り走り出すシエル。彼女の明るさに振り回されながら俺たち三人は入学式が行われる講堂へと移動するのだった。



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