第14話 魔人血戦3

心核コア?聞いたことないな」


「それもそうだろう…この存在は我らと神しか知らん。そして、これが何なのかもな」


そう言って、ブレイズは心核を自分の胸の中へとしまう。


「一つ昔話をしてやろう。神々が人を生み出し、年月が過ぎた後…」


ブレイズの話はこの星の嘆きだった。

人は自らの欲望の満たすためにこの星の緑を切り、生物を殺した。そして、それだけでは飽きたらず遂には人間同士で殺し合いを始めた。多くの血が大地に流れこの星は血に染って行った。

そして、星は思った。人間などという身勝手で傲慢な生き物を決して許しはしないと。そして、それを創り出した神すらもこの世から消し去ってやると。


そうして、星は心核コアを生み出し世界各地へと放った。そして、心核自身が魔力を吸収し、形を為したものこそが後に“悪魔”と呼ばれるようになったと。


「馬鹿げていると思うか?だが、事実だ」


俺が言葉を失っているとブレイズが俺にそう言った。


「神は我らが世界を穢した挙句、この星の意志とも呼べる我らを悪魔と呼び、この世界から追いやった!許せるものか、許してなるものかぁ!」


ブレイズの声が怒号へと変わっていく。この果てしない憎しみを作り上げるのには一体何年の月日が必要になるのだろうか。


そして、ブレイズが俺へと指を向ける。


「貴様らもだ人間!醜く、愚かで、傲慢で、奪い合って殺し合う!貴様らが踏んでいる大地を穢して!何様のつもりなんだ貴様らはぁ!」


「確かにお前の言うように人間は愚かだよ」


確かに、俺の前世でもクズな人間はいた。俺の親父は他所に女を作って消えた。そんな境遇を知ってか俺はよくイジメを受けた。

それでも俺が腐らずにいれたのは母親の存在が大きかったのだろう、あの人はひたすらに優しかった。だからこそ俺は人のいい面も悪い面も知っている。


「でもな、悪い人間もいれば良い人間もいる。その人間を見ようとせず、ひたすらに滅ぼすっていうやり方は傲慢だと思うぞ」


「貴様…!」


「俺はお前らの気持ちなんて分からねぇよ。俺はただの人間だしな。そしてなりより、お前ら悪魔は今の人間を知らねぇだろ。お前らの時代の人間がどんなだったが知らねぇが、人は進歩する生き物だ。破壊だけじゃなく新しいものを創り出す力もある。ただ破壊だけしようとするお前達とは根本的違うんだよ」


とまぁ、色々と語ったがこれからラスボスになろうとしている奴が言うセリフではないなこれは。なんとも滑稽で少し笑えてくる。


「そこまで言うのなら証明してみせろ!人と言う生き物がどこまでの力を持っているかを!」


ブレイズの体から大量の炎が放出されるその炎は瞬く間に部屋全体を包み込んだ。


「児戯は終わりだ、貴様に魔術の深奥を見せてやろう!」


ブレイズが剣を地面へと突き刺しす。


終極魔術しゅうきょくまじゅつ


その言葉と同時に辺りの炎は一瞬で消え去った。


そして、辺りには無数の火の粉が舞い始めた。


劫炎の火粒ブレイズグレイン


部屋の温度が急激に上がっていく、炎ではないこの舞っている火の粉自体がとてつもない熱と炎を内包している。


『終極魔術』

個性魔法を極めた者だけが使えるという魔術の極地。この魔術を発現させたものは歴史上でも数少なく、その力は一発で戦局を大きく変え、勝敗を決するほどである。


「人間如きにこの技を見せることになるとはな。だが、これは貴様への褒美だ。さぁ、しかとその身で味わうがいい!」


ブレイズがその手をこちらへと向けると俺の周りを舞っている火の粉の一つがパチっと弾けたその瞬間、俺の眼前は火柱と爆煙に包まれた。


「ぐあぁ!!」


魔力での防御が間に合うずに爆発をモロに受け、吹き飛ばされる。

すぐさま体制を立て直したがすぐに俺の脳が強烈な痛みを自覚する。


「ぐっ!」


左手の人差し指と中指が爆発で引き飛び、腕全体が激しい火傷を負っていた。


「最初の一撃で殺してやるつもりだったが。察しの良い奴だな。咄嗟に身をよじってかわしたか」


奴の言う通り、咄嗟に避けていなかったら今頃一瞬でバラバラにされた後、炎で灰になっていたところだ。


そして、何より


「消失魔法が効かなかった」


「当たり前だ、この終極魔術は魔術の頂点。いかに貴様の魔力が優れていようとも同じ舞台に立てていない以上、いかなる魔法も無力よ」


痛みで意識が朦朧とする。


これが悪魔、そして魔術の境地。次元が違う強さだ。


「もうよい、諦めろ。そうすれば一撃で楽にしてやる」


諦める?


「この火の粉には我の魔力が大量に込められている。一つ一つが人間など意図も容易く消し炭に出来るほどにな」


俺では奴には敵わない。だから、諦める?


「それを広範囲に散布し、我の意識で自由に爆発させられる。もちろん貴様が攻撃しても同様にな」


違うだろ…


「聞いてるのか?それとも彼我の力量の差に絶望でもしているのか?」


違う、そんなんじゃない。


「いや、覚悟を決めただけだよ」


そうだ、やるべき事は最初から決まっている。


「覚悟?それが何だと?」

「俺は命を賭けてお前に勝つ」


魔力を限界まで練って放出しろ。


ここが俺の分岐点!

命を賭けて何かを為すための力を今!

俺の自身の手で掴むんだっ!


「終極魔術っ!!」

「なにっ?!」


俺の声と共に魔力が部屋全体を包む、現れたのは無の空間。これこそが俺の魔術の到達点!


「『虚魔空間ゼロ・フィールド』」


俺とお前どちらかの命が今、ここで終わる。


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