第13話 魔人血戦 2
絶え間なく飛んで来る火球を捌きながら、俺は一つの考えを巡らせていた。
奴ら悪魔は魔力の集合体、攻撃をして傷を負わせたとしても一瞬のうちに回復してしまう。
何かしらの致命傷を与えないと一生勝負が終わらない。
その致命傷とは何か?
俺は一つの仮説を立てた。
魔力はどれだけ集まったとしても意志を持つことはない。
でなければ大昔に生まれた奴らが別の世界に追いやられてから現代に至るまで新しい悪魔が生まれて来なかった理由が分からない。
つまりはその“理由”こそが悪魔の弱点。
「なにやら随分と思考を巡らせているようだな」
攻撃を一旦辞め、剣を地面に突き刺してブレイズが俺へと語り掛ける。
「まぁな、自慢じゃないが悪魔については色々と調べてるつもりでね、それでも分からないこともある」
「我らが、
考えて事を言い当てられ少し驚く。ブレイズは俺の表情の機微を見逃さなかった。
「図星か?なんとも分かりやすいな人間」
「俺が知る限り、過去に魔力が一箇所に集中したことは多々あった。だが、どの事象においても悪魔が生まれることはなかった。つまり、お前達が生まれたのは何かしらの理由がある筈だ」
「なるほど、我らについてよく調べている様だな。確かに魔力とは膨大な力だが、一つの生命体を生み出すのは不可能だ。だからこそ、我ら悪魔は至高なる存在なのだ。“不可能”から生まれた出でのだからな」
「その不可能を可能にした“なにか”があるって事だろ?だったら話は早い。それをこの戦いで突き止めればいいだけのことだ」
「ふふ、出来ると思っているのか?人間ごときに?」
「やるしかないんだよ。お前を呼んだその時点でな」
お互いに再び剣を構える。
「なら、見つかるといいな…死ぬ前に!」
そう言ってブレイズは剣を地面に突き刺し、魔力を流し込んだ。
その直後、奴の周りの地面が隆起し始める。その地面はブレイズの魔力を流されたことによって炎を纏い、溶岩のようになりこちらへと雪崩の様に迫って来た。
俺は足を魔力で強化し、後ろへ跳躍して壁へと跳ぶ。
「予測済みだ」
ブレイズが手をこちらへと向けると俺の周りに火球が数発出てきた。
「効かねぇよ!」
俺は魔力を込めた剣で振り払う。
しかし、火球に俺の剣が触れ少し亀裂が走った瞬間。
「っ!?」
火球は大爆発を起こした。
爆発の衝撃で俺は地面へと叩き付けられた。爆発の瞬間、咄嗟に魔力で自身の体を強化していなかったらバラバラになっていたところだった。
「フン、察しが良い奴だな貴様は」
俺が肩で息をしているのブレイズが笑みを浮かべながら語り掛ける。
「あの火球、打ち消せなかった。どんな仕組みだ?」
「教えて欲しいのか?」
「いや、大方予想がつく」
恐らく、あの火球は二層構造になっている。俺の消失魔法が外殼に当たり、消えた瞬間に内側にあった火炎が外気に触れて爆発を起こしたのだろう。
「素晴らしい、大した洞察力だ」
俺の考えを聞いてブレイズは拍手をしている。
「嫌な戦い方をする奴だな、お前は」
「悪魔は人が嫌がることをするものだろう?」
「そうだな、だから嫌われるんだよ。お前ら」
剣を構えて、ブレイズへと足に魔力を込めて突進する。
「もとより好かれるつもりも無いわっ!」
それを見てブレイズも俺へと向かってくる。互いの刃が合わさり周りに剣風が巻き起こる。
俺が剣を振れば奴がそれを捌き、奴が剣を振れば俺がそれを捌く。
時間にして一分にも満たない間で俺たちは数十回の剣戟を繰り広げた。
剣戟を終え、離れた俺たちはお互いにかすり傷を負っていた。
「人間にここまで手傷を負わされたのは始めだ」
ブレイズの傷は瞬く間に炎と共に再生する。やはり、致命傷にはなってはいない。
「それは光栄だね」
「だが、貴様も随分と手傷を負ったな。そのまま死ななければいいが…」
「心配はいらねぇよ」
傷口に魔力を集中する。斬られた所の細胞を魔力で活性化させて傷の治りを強制する魔法だ。
その光景を見たブレイズは驚きの声を上げてた。
「これは驚いた、まさかその歳で治癒魔法すら使えるとは貴様…本当に人間か?」
「人間だよ、少なくとも今はな」
奴が言った治癒魔法は基礎魔法に分類されるが、習得は個性魔法より困難とされている。
まず傷を治せる程、細胞の一つ一つに魔力を流し、操る精密な技術が求められる上に膨大な魔力も必要となる。普通の人間なら自分の傷を治した時点で魔力切れで倒れてしまうことある。
「少し、貴様の評価が改める必要があるな。お前は中々に面白い人間だ」
「それでもまだ人間呼びなんだな。悪いがこっちも余裕がないんだ。さっさと終わらせるぞ」
「そう、焦るな。勝負はこれからだろう?」
奴が剣を構える前に俺は魔力を集中させる。
「魔弾球!」
作り上げた魔力の球を五発、ブレイズ目掛けて発射する。その直後、足に力を込めて奴の横へと周り込む。
「こんな物で我を撃てるとでも!」
奴は剣に炎を纏わせ薙ぎ払う、すると奴の正面は火に包まれて俺の魔弾球は跡形も無く消滅した。
しかし、俺は奴の左斜め後方へと移動した。その場で魔力を込めて奴に向かい、走り込む。
「そこかぁぁ!!」
俺の気配に気付いたブレイズが炎をこちらへと向かわせる。だが、奴と俺との距離はすぐそこまで迫っていた俺は消失魔法を使い、炎を打ち消す。
そして、刃を奴の胸へと突き立てた。人間であれば心臓の位置。
だか、刃は奴の胸を貫くことはなかった。
「なにっ?!」
「くっ、離れろ!人間がぁ!」
奴が剣を振り払う前に跳躍して距離をとる。確かに刃は奴の心臓を捉えていた。だが、剣は届かなった。いや、見えない何かに弾かれたと言った方が正しいか。
そして、何よりブレイズのあの今まで見せたことがなかったあの表情。疑念が確証に変わる確かな手応えを感じた。
「なるほど、お前の泣き所はそこか!」
剣を奴の心臓の位置へと向ける。
「皮肉なもんだな、人間を見下すお前ら悪魔の弱点が人間と同じ位置にあるなんてな」
「全くもって、忌々しい人間だ貴様は。いいだろう…見せてやろう我らの根源をな!」
そう言うとブレイズの胸からまるで太陽のような丸い球体が姿を現す。遠目から見てもソレは膨大は魔力の塊だった。
「光栄に思え!人間如きがこれを拝めるのだからな!これこそが、我らを我らたらしめる“究極の物資”。『
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