第10話 魔の神殿

「なんだ…ここは?」


洞窟の暗闇を抜けた先は明らかに人工物であろう神殿みたいな場所に出た。


何故か壁にある燭台には火が灯っており、奥に続く廊下を照らしていた。

そして、一番目を引いたのは壁に描かれた壁画であったその縁には文章が書いてあったがこれは現代で使われている文字ではなかった。


「これは古代文字だ」


思わず声が漏れる。


原初の時代の文字、俺も悪魔について調べていなかったら解読はできなかったであろう。


廊下を進みながら壁画を見て文章を読み解く、そこには俺が拾った本には書かれていなかった悪魔の全てが書かれていた。


はるか昔、まだ神達がまだこの世界に存在し、守護していた時代まで時は遡る。

どういった原理かは分からないが魔力が突如として集束し、意志を持った。

魔力はこの世界の根幹、不可能を可能にする力。


集まった魔力は様々な形に姿を変えた。


それこそが『悪魔』と呼ばれるもの達だ。つまり、悪魔とは巨大な魔力の集合体ということになる。様々な悪魔が生まれていく中で彼らはこう考えるようになった。


『自分達こそがこの世界の支配者だ』と。


神などと言う、不完全なものよりもこの世界の力から生まれい出た我々の方が支配者に相応しいと。

しかし、神達は自分達を支配者などとは考えなかった。神とは世界と人を創り、世界を守護する存在だと。

ならば人類の脅威となり得るものは消し去ればなるぬと神達は考えた。

こうして、神と悪魔との争いが始まった。

両者の戦いは苛烈を極め、世界に甚大な被害をもたらした。


『このままでは世界が滅ぶ』


そう考えた神達は悪魔を滅ぼすのではなく、この世界から隔離することにした。神の力を合わせ新たな世界を創りだし、悪魔達をそこへと追いやったのだ。

その世界は草木一つ生えぬ死の世界。

その世界へと閉じ込められる時、悪魔達は誓った必ずやこの世界を手に入れてみせると。

その思いは別世界に封じられた後もこの世界へ『呪い』や『瘴気』として滲み出た。


数多の呪いを消し去るために力を使い果たし神はこの世界から姿を消した。

しかし、世界には瘴気が残っていた。この瘴気を生物が過剰に浴びると化け物へと姿を変える、それこそが『魔物』だ。

そして、魔物達は長い年月を経て、独自の進化を遂げて現代に至る。

これが壁画に書かれていたこと全てだ。


そして、壁画の終わりには巨大な扉がそびえ立っていた。

その扉に手をかけ、力を込める。すると重々しい音と共にゆっくりと開いて行く。


ここは魔の神殿。

悪魔達がいずれこの世界に復活し、支配するために悪魔を信仰する者達や悪魔の眷属である魔物達に作られせた負の遺産。

ならば、この先にあるものも何となく察しがつく。


その部屋はとてつもなく広々と作られていた。天井の高さは巨人が入りそうな程高く、部屋自体の広さも走って端に辿り着くには何分も掛かるほど巨大だった。

そして、広い床を全て使うように描かれた丸い円、これには見覚えがある。あの本に書かれたていた原初の召喚魔法。あちらの世界から悪魔を呼び寄せる現代最悪の魔術…。


「悪魔の召喚陣」


ドス黒い悪意や怨念が俺を包むような、そんな感じがした。


この部屋には全ての邪悪が詰まっている。


この召喚陣に足りないものはあと一つ、召喚者の血液のみ。

一滴でもコレに垂らせば儀式は完成する。


俺はこんな状態だが、恐怖よりも嬉しさの方が勝っていた。


ようやく…ようやくだ。俺の欲しかった力が今、目の前にある。負ければ全てを失う。勝てば神にも匹敵する力が手に入るハイリスクハイリターン。

なんとも馬鹿げたことだ。恐らく俺の勝率は五分もないだろう。

だが、夢を諦めてこのまま、のうのうと生きるなら全てを賭けて力を得る。俺が憧れたラスボス像はそういったものだ。


俺が負けたらこの世界に悪魔が復活して、暴れ回るのだろう。つまりはソイツがこの世界のラスボスになるということだ。


冗談じゃないっ!!


この世界のラスボスは俺だ!誰にも譲らないっ!誰にも渡さないっ!


「さぁ、やるぞ悪魔!俺とアンタとのを!」


俺は指を噛み、血を召喚陣へと垂らす。


直後、この部屋を炎が包み、人間ではないが恐らく生物であろう声が響き渡る。


結果はどうにしろ今日でカイン=ダーベルと言う人間はこの世から消える。

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